授業でのICT活用
実践レポート

小学校6年 道徳児童1人1台の活用 タブレット端末 × SKYMENU Class あなたはどっち?ポジショニングで議論を深める 単元名:友情について考えよう

清水 匠 教諭

茨城県土浦市立土浦第五中学校
(実践時:茨城大学教育学部附属小学校)

単元計画(全1時間)
第1時

サプライズ(本時)

本時のねらい

親友を思って考えたサプライズのお祝いについて、本人に伝えるかどうか話し合う活動をとおして、互いに高め合い、信頼し合える友情関係を築いていこうとする態度を育てる。

授業の実際

本時では、思考を可視化することをねらい、[ポジショニング]機能を活用した。教材には、自作の読み物教材「サプライズ」を使用した。

教材は、5人の仲良しグループのお話。「かなこ」を喜ばせようと、「わたし」を含めた4人は彼女の誕生日にサプライズプレゼントとしてメッセージアルバム作りを計画する。しかし、事情を知らずに、休み時間にひとりぼっちになってさみしそうにしている「かなこ」。様子を見かねた「わたし」が、サプライズを伝えるかどうかを迷うというストーリーだ。

読み物教材を読んで議論する場面では、誰がどのような意見を持っているのか「ポジション(立場)」をタブレット端末で一覧表示し、異なる考えを共有できるようにした。子どもたちは、友達の考えにじっくりと耳を傾けながら、多様な側面から友情を捉え、自分の考えに取り入れていった。また、教員用端末に、各自のポジションの変化や軌跡を表示し、考えの揺れ動きを可視化できるようにした。それによって、議論の流れを変えたいときや、取り上げたい意見を持っている子どもを瞬時に捉えることができ、意図的な指名によって議論をより活発にすることができた。また、議論後の振り返りの場面では、自分の考えの変化を自分自身で確認できる機能を活用することで、子ども自身が考えの深化を意識化し、より深く自己と対話しながら自分の生活について振り返っていく姿が見られた。

本時の展開

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)
導入

1.本時の課題をつかむ。
(1)教材「サプライズ」の第1部を読む。
(2)本時の課題をつかむ。
サプライズのことを、かなこに伝えるべきか。

1[ポジショニング]機能で、自分の立ち位置を数直線上にマーカーで配置し、簡単なコメントを入力することで、考えを可視化し、瞬時に共有。

議論1

2.グループや学級全体で議論する。

  • サプライズが成功すれば、数日間のことも分かってくれるはず。
  • せっかくお祝いしたいのに、相手が悲しくなってしまっては意味がない。
  • 考えが変わったらその都度マーカー位置やコメントを変更。友達の意見を聞いて自分の考えを練り直す大切さを価値づけたり、自分の考えの変化を意識化。
議論2

3.教材「サプライズ」の第2部を読み、再度、議論する。

  • こんなにかなこが心を痛めているなら、もう伝えたほうがいいのではないか。
  • あと1日の辛抱で、かなこのとっても喜ぶ顔が見られる。

2教員用端末で、子どもたちのマーカー位置の変化をリアルタイムに捉え、多面的・多角的な意見を意図的に取り上げることで、子どもたちの考えを揺さぶり、深く考えていけるようにしていく。

終末

4.本時の学習を振り返り、自分にとっての友情とは何か、どのように行動したいかを考える。

  • 本当の友情とは、相手の気持ちを誰よりも考えてあげることだと思う。

3[ワードランキング]機能を使い、コメントでよく使われていた言葉をピックアップ。みんなの考えを浮き彫りにし、本時の振り返りにつなげていく。

4[変化の軌跡]機能を使い、自分の考えの変化を可視化して、振り返る時間を設けた。

[ポジショニング]機能

子どもたちがマーカーで自身の考えを配置(ポジショニング)したり、コメントを入力することができます。子どもたちの回答はリアルタイムで確認・共有でき、すべての子どもの回答を一覧で表示したり、マーカーを重ねて表示して、クラスの傾向を把握したりできます。重ねて表示した状態から任意のグループ分けも行えるので、異なる考えのグループとディスカッションを行ったり、同じ考えを子ども同士で共有できます。後から変容の過程を分析したり、変化の軌跡を振り返ったりすることも可能です。

タブレット端末活用のポイント (効果と児童生徒の反応)

1自分の立ち位置を可視化して友達と共有

重ねて表示

読み物資料を読み終えた後、[ポジショニング]機能を立ち上げ、サプライズを「伝える」「伝えない」を軸にしたシートを配付し、各自の考えによってマーカーを置き、コメントを入力させた。入力が済んだ段階で、子どもの画面にも全員のマーカーが映るように設定すると、「伝えない」側の考えがクラスの大半の中、「伝える」側にいる友達の考えを聞きたいという子どもが多く見られた。友達のマーカーをクリックしてコメントを読み、異なる意見に興味を持ったり、多様な価値観で判断しようとする姿があった。

2子どもの変容を瞬時に分析して議論に返す

変化の大きさ、変化の軌跡

グループで考えを伝え合い、全体で考えを共有。議論しながら考えを練り直し、何度もマーカーを動かしたり、コメントを修正する様子が見られた。教員用端末では、子どもがマーカーを変更するたびに、瞬時に子どもの変化を見取ることができた。教員用端末で、子どもたちの思考の揺れの大きさを円の大きさで可視化する機能を活用し、議論の流れに相反する意見を持つ子どもを意図的に指名したりすることで、再度子どもたちの考えにゆらぎが生じた。

3議題の移り変わりを確認して全体のまとめへ

ワードランキング

教員用端末で、任意の時点での子どものコメントを分析し、どんな単語が多く使われていたかをランキング表示する機能を活用。議論の始めは、「サプライズ」「伝えない」という言葉が多く、終わりでは、「かなこ(主人公の名前)」という言葉が多くあった。サプライズを成功させたいという自分側の視点から、最後には伝えるべきかどうかの判断基準が「かなこの思い」になっていった。本時では、相手の思いを想像したり、察知したりしながら、相手が喜ぶことをしていくことが友情であるとまとめた。

4考えの変容を時間軸で振り返って学びを実感

変化の軌跡

これから自分はどうしていくのか、ワークシートに考えを記入。本時における自分の考えの変容を意識化できるように、変化の軌跡を確認できる機能を活用した。これは、時間軸に沿ってゲージを動かすと、そのときの自分のマーカーやコメントが表示される機能である。子どもたちは、自分がどのように考えを練り上げてきたか、どのように考えが深まってきたのか、自分自身で見返しながら、ワークシートにまとめることで客観的に捉え、これからの生活に生かそうとする姿が見られた。

5授業後に、自分の授業を振り返る

変化の軌跡

[変化の軌跡]機能は、教員が自分の授業を振り返ったり、子ども1人ひとりの変容を見取ることにも活用できる。思考の軌跡を確認することで、授業後に教員が、子ども1人ひとりの学びを立体的に捉えることができ、評価につなげていくことができる。

ワークシートに書かれた子どものまとめを一部抜粋
  • 私は初め伝えない側だったけれど、伝える側に変えた。主人公が寂しい思いをしているのは、準備している側も嫌だと思うから。これからは、相手の立場になって考えることが大切だと思った。すれ違ってしまうと、どちらも悲しい思いをしてしまうかもしれないので、気をつけたい。

  • 仲間を思いやる大切さについて学んだ。最初は、サプライズをして友達が喜ぶ顔だけを考えていたけれど、みんなとの話し合いをとおして、先のことだけでなく、サプライズをされる友達の「今」の気持ちを考えていくようになった。これからの生活では、相手の今の気持ちを一番に考え、その気持ちを尊重してあげたい。

  • どちらの場合も、相手のためという気持ちで同じ考えだけれど、どれを実行するかは、やり方が違うだけだということに気づいた。相手のことも自分のことも、両方考えて生活していきたい。

  • 友情とは、楽しく過ごして何でも言い合える仲だと思うので、少しでも嫌な思いはさせたくない。これからは、自分がよいと思っていることが、友達からすると嫌な気持ちになっているということもあるかもしれないので、まずは友達の立場になって、相手のことを考えていきたい。

このように、自分がどのように考えを深めてきたのか、客観的に捉えて、これからの生活に生かそうとする姿が見られた。

こんな場面でも使える!実践を振り返って

道徳科における見方・考え方をはたらかせた、
主体的・対話的で深い学びに寄与する

このようなモラルジレンマ的な教材を実施する場合、これまでは、ネームプレートを黒板に貼って考えを共有することが多かったが、多くの場合、教員が指定したタイミングでしかネームプレートを貼り替えられず、子どもも教員もやりづらさを感じるものだった。また、ポジションは示せても、具体的な考えまでは共有することができず、積極的に挙手する子どもの考えが多く取り上げられる傾向があり、子ども1人ひとりの考えを生かしていくことが難しかった。また、各自のワークシートにポジションとコメントを、1回目・2回目と何度も書かせる方法も行われていたが、これは友達との共有や教員による把握が難しい。その点、[ポジショニング]機能の場合、子どもたちは自分の手元にあるタブレット端末で、考えが変わったタイミングで、すぐに、気軽に、具体的に、考えを表現することができる。さらには、それを友達や教員とその場で共有することができ、議論がより多面的・多角的に行われるようになる。[ポジショニング]機能は、道徳科における見方・考え方をはたらかせた、主体的・対話的で深い学びに寄与するといえる。

(2020年09月掲載)