教育情報化最前線
校務用スマホがもたらす校務DXの促進大阪府大東市教育委員会

端末内に撮影データを残さない、
教職員も子どもも安心できる環境へ 1人1台校務用スマホと『SKYMENU Mobile』を導入

大阪府大東市教育委員会は2025年9月、小・中学校の全教職員680名を対象に1人1台の校務用スマートフォン(以下、校務用スマホ)の運用を始められました。教職員の従来の働き方を見直し、子どもと向き合う時間をより確保するための環境づくりの一環として整備。校務スマート化支援アプリ『SKYMENU Mobile』を導入し、先生が安心して使える体制を整えられています。運用を通じて見えてきた効果や課題、今後の展望について、ICT教育戦略課の山本 和人 課長参事、同市立氷野小学校の山口 美里 首席に伺いました。

山本 和人

大東市教育委員会事務局
ICT教育戦略課 課長参事

山口 美里

大東市立氷野小学校 首席
(前:大東市教育委員会事務局ICT教育戦略課 指導主事)

先生方が、1秒でも長く子どもと向き合える環境をめざして

大東市は、大阪府東部に位置する人口約12万人の自然豊かな街です。本年度、市制施行70周年を迎えました。小学校12校、中学校8校があり、計約7,500名の児童生徒が学んでいます。

教育委員会として力を入れているのが、先生方が働きやすい職場環境の整備です。少子化で全国の労働人口が減るとともに、教職員の労働環境の実態が世間に広まったことで、なり手不足は深刻化しています。文部科学省が公表した「令和7年度公立学校教員採用選考試験」の採用倍率は2.9倍と、過去最低でした。本市の採用試験も、以前のような高い倍率にはなりません。このままでは、今働いている先生方に新たな課題が積み上がるばかりです。だからこそ今、先生方が少しでも余裕を持ち、子どもと向き合う時間を1秒でも長く持てるような環境づくりに努めています。

業務効率化を加速させる、Windows端末の更新と校務用スマホの整備

実際に行った整備内容について詳しくご紹介します。本市ではこれまで、教職員端末としてメインメモリ4GB、Core i3搭載のWindows端末を使用していました。ただ、複数のアプリを立ち上げての並行処理が当たり前の現場にとってはスペックが不足していました。そこで令和7年度の機器更新を機に、快適に業務を行える十分なCPUとメモリを備えた端末に切り替えました。また、1人1台の業務用ディスプレイも整備しました。

さらに、以前は禁止されていたWindows端末の学校外への持ち出しを可能にし、他校での会議や研修時にも使えるようにしました。そして、シンクライアントシステム『SKYDIV Desktop Client』を新たに導入。自宅などで手元のPCから職場のPCをリモート操作できる環境を整えました。コロナ禍の経験も踏まえ、緊急時にリモートアクセスできるようにすることで、先生方の利便性を高められると考えたためです。

そして、同じタイミングで導入したのが校務用スマホです。予備機20台を含むAndroidスマートフォン700台を整備し、教職員680名に1台ずつ配備しました。

大東市の校務用スマホの詳細と運用ルール
対象者

全教職員(680名)、予備機20台

端末

Androidスマートフォン(1人1台)SIMなし

運用
  • 『SKYMENU Mobile』をインストール済み
  • 『SKYSEA Client View』のMDM機能を導入
外観
  • 全員が同じ色のストラップをつけて使用
  • 本体ケースに管理番号のラベルを添付

私は昨年度まで山本参事と同じICT教育戦略課で勤務しており、課に配属された頃はちょうど予算獲得のために動いている状況でした。整備の詳細を知り、「早く学校で使いたい」という思いが強まったのを覚えています。

各校は今、働き方改革のために工夫を凝らしており、氷野小学校でも交換授業の実施や会議時間の短縮に取り組んでいます。ただ、これらを実現するためには、十分なスペックのPCやリモートアクセス、そして校務用スマホが必要です。現場に戻った今、働きやすい環境を整えてくれているからこそ、融通が利く場面が多くあることを日々実感しています。写真1

写真1高スペックのPCと業務用ディスプレイ、校務用スマホなどを整備し、教職員が働きやすい環境を整えた

校務用スマホ整備の予算化を実現させ、教員が安心して連絡、撮影できる環境へ

校務用スマホについては、3年ほど前から導入を検討していました。2025年夏に教育現場での私物スマートフォン(以下、私物スマホ)の不適切な利用に関する報道が相次ぐよりも前のことです。きっかけは、2つの課題を解決したいと考えたからでした。

一つは、「連絡手段」の課題です。本市の学校には内線電話やインターホンが整備されておらず、教室から職員室への連絡手段がありませんでした。何かトラブルがあった際、先生は現場で対応しなければならないので、職員室へ応援を呼びに行けません。高学年なら「先生を呼んできて」と頼めるかもしれませんが、低学年の場合は難しい。こうした環境下で、やむを得ず教職員が私物スマホを使って連絡する行為が常態化していました。

そしてもう一つが、「撮影」の課題です。当時は学校所有のデジタルカメラを使うケースが多かったのですが、SDカードやデジタルカメラそのものの紛失があり得ます。どうにかデータを安全に保管し、活用できる方法を見つけ、先生の心配の種を一つ減らしたいと思っていました。

実際、校務用スマホ導入前に全20校の教職員を対象に行ったアンケートでは、約75%の教職員が「週に3日以上、私物スマホを使用している」と答えました。その用途として多く挙がったのが、教職員間の情報共有や撮影です。また、半分以上の教職員が校内での情報連携に不安や不便さを感じていたことも明らかになりました。

ただ、すぐにスマホを整備するのは現実的ではなかったため、応急処置として市の情報セキュリティポリシーを見直し、私物スマホの業務利用を認める内容に変更しました。届け出を必須化し、認められた教職員に対してのみ、私物スマホから市のMicrosoft Teamsにアクセスできる仕組みを整えました。

また同時に、先生方が仕事をしている様子を見るなかで、PCよりも持ち運びやすく扱いやすい携帯型端末の必要性は感じていました。そして令和7年度、教職員用PC更新の際に、周囲の理解もあって、携帯型端末として校務用スマホを導入することができました。

教育委員会で働く前に市内の小学校で担任をしていたとき、「何かあったときの連絡手段がない」という不安は感じていました。導入が決まり、教職員専用のスマホでスムーズに連絡が取れるようになれば安心できるかもしれないと、期待が高まりました。

安全な撮影の仕組みをつくるために『SKYMENU Mobile』[セーフカメラ]を導入

ただ、校務用スマホそのものを導入しただけでは不十分です。先生方に安心してしっかりと活用してもらうために、すべての校務用スマホに『SKYMENU Mobile』をインストールしました。『SKYMENU Mobile』の[Wi-Fi通話]を使えば、校内LANを使って通話でき、「連絡手段」として使えます。そして、「撮影」の課題を解決するためには、データがスマホ本体に残らず、クラウド上に保存される[セーフカメラ]の仕組みが必要不可欠でした。

[セーフカメラ]は、撮影した写真や動画が指定した共有フォルダに自動で保存されるので、校内でデータを簡単に共有できて大変便利です。私は本校のWebサイト担当のため、各クラスを回って子どもの写真を撮る機会が多いのですが、私が撮影した写真をほかの先生方が学級通信などに使ってくれています。作業しなくても自動でアップロードされるのでとても楽です。自動で共有されるからこそ安心して撮れるという面もあり、以前よりも撮る量が増えたという先生が多くいると聞きます。私も授業の際は毎回、子どもたちの様子を[セーフカメラ]で撮影しています写真2

写真2[セーフカメラ]で授業中の子どもたちを撮影する山口先生

ただ、[セーフカメラ]を活用すればすべて解決するというものでもありません。本市では、『SKYSEA Client View』のモバイル機器管理(MDM)機能を使い、標準搭載されているカメラアプリをはじめとする撮影機能を備えたアプリの利用制限も合わせて行っています。また、それぞれの校務用スマホからは新規にアプリをインストールできないようにし、教職員独自の判断でスマホ本体に撮影データが残らない環境をつくっています。もちろん、必要なアプリは、カメラ機能の有無を確認の上、MDM機能を使って一斉配布するようにしています。

こうした土台を作った上で、すべての学校で私物スマホによる撮影を一切禁止し、児童生徒に関する写真・動画はすべて[セーフカメラ]で撮影するルールをスタートさせました。そして、使用する際は教育委員会から配布した共通のストラップを使い、ケースに管理番号のラベルを貼って使うことも併せてお願いしました。全員が統一したものを使うことで、子どもたちや保護者に見えるかたちで安心感を与えたかったからです。

こうした取り組みのかいあってか、校務用スマホのカメラを向けると、子どもたちは喜んで笑顔でポーズを取ってくれます。その姿を見て、この同じ色のストラップとこのスマホの形、このラベルが安心材料になっているのだと感じます。

これからは、校外学習などで撮影に使うために校務用スマホを持って出る機会があるかもしれません。『SKYSEA Client View』のMDM機能は紛失・盗難時の遠隔ロック・遠隔データ消去ができるので、万が一校外で紛失したとしてもすぐ対処することで、データの漏えいを防げます。こうした面でも、先生方に安心感を与えられているのではないかと感じています。

そして何より、保護者の皆さんにも安心していただくために、教育委員会からは「大東市立小・中学校での写真撮影について」と題し、児童生徒の撮影は校務用スマホでのみ行っていること、撮影したデータは教育委員会が管理するクラウドへ自動保存され、スマホ本体にはデータが残らないことを文書で伝えました。

教育現場での私物スマホの不適切な利用についての報道が相次いだとき、「大東市の学校はどうなのか」という問い合わせもありました。保護者の皆さんは学校のことを信じてくれていますが、それでも不安になるのは当たり前です。だからこそ「大東市の学校は大丈夫です」と、はっきりと言える状態をつくりたいと思いました。校務用スマホの導入後、参観日や入学式、運動会などの行事の際、先生方が同じスマホを掲げて撮影している姿を直接見て、安心してもらえているという実感があります。

Wi-Fiを強化し、教職員が校内どこからでも通信できるように

日々現場で活用するなかで、『SKYMENU Mobile』[Wi-Fi通話]の利便性も感じています。例えば学年ごとに行う内科検診の際、これまでは保健の先生が児童生徒や補助の先生に「○年○組を呼んできてください」と頼んでいました。離れた教室だと、伝えるのだけで一苦労です。しかし今は、校務用スマホを使って次の学年の先生に1本電話するだけで済みます。また、教室から急に出てしまった児童生徒を複数人の教職員で探しに行くときも、連携しやすくなりました。校内を走り回って直接伝える必要がなくなり、業務効率化につながっていると思います。

一方、運用を通じて感じた課題もあります。SIMなしのスマホのため、校内Wi-Fiが届く場所でしか使えず、また、119番、110番といった緊急連絡はできません。

各校を回って現場の先生方の声を聞き、あらためてSIMの必要性を感じているところです。現在、校内LANの見直しを検討しています。まずはWi-Fiの強化に向けて、廊下にもアクセスポイントを置き、移動中でもつながりやすくしたいと考えています。加えて、緊急連絡用の安価なSIMの導入も視野に入れています。今回のWi-Fiモデルの整備を一つのステップと捉え、最終的なビジョンを妥協せず、より良い環境整備をめざしていきたいです。

出欠確認や校務処理、さらには授業での活用へ、校務用スマホの広がりに期待

これから、校務用スマホをもっと効果的に活用していきたいと考えています。『SKYMENU Mobile』では出欠状態を確認できる機能など、校務支援システムの連携を進めていると聞きました。今は教室で出欠確認をした後、保護者と連絡する時はPCを持って職員室に戻り、PCで情報を見ながら保護者と電話しています。校務用スマホ上で確認できれば身軽に動けてとても便利になると思うので、期待しています。

また、さらに先のステップにはなりますが、校務用スマホを使って子どもたちの課題提出状況を確認したり画面を投影して見せたりといったように、授業にもうまく活用することで、より効率化していけるのではないかとも感じています。

これから働き方改革を進めるにあたっては、今山口先生が言ってくれたような「現場の声」が一番大事だと思います。実現できないこともあるかもしれませんが、まず声を上げてほしい。そのリアルな声を基に整備を進め、「大東市の学校は働き方を選べる」「子どもに向き合える環境が整っている」と伝えていきたい。そしてその姿を見て、教員をめざす若者が増える未来を創っていけたらと思います。

(2026年8月掲載)