情報活用能力を基盤に、自走・自律して学ぶ児童を育む
『SKYMENU Cloud』で児童を見取り、支援の充実に生かす千葉県松戸市立上本郷第二小学校は、自走・自律できる生きる力を持った児童の育成をめざし、情報活用能力の育成を基盤とした授業研究に取り組まれています。さらに2025年度は、文部科学省「リーディングDXスクール事業」の指定を受け、『SKYMENU Cloud』などのICTを活用しながら全校一丸となって授業改善を進められています。同校の取り組みについて、生島 剛 校長、西田 敏基 教諭、廣瀬 真実 教諭、山下 穂乃佳 教諭に伺いました。
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情報を正確に理解し、自分の考えを適切に表現する力を育む
生島 剛校長
生島校長 本校は、通常学級12クラス、特別支援学級4クラスの児童365名が学ぶ中規模校です。学校教育目標「知・徳・体のバランスのとれた生きる力を身に付けた児童の育成 ~自走・自律できる生きる力をもった『かみにの子』の育成~」の下、市中心部に位置しながらも自然豊かな環境で、子どもたちはのびのびと育っています。
本校の研究主題は「情報を正確に理解し、自分の考えを適切に表現する力の育成」です。2023年度に全国学力・学習状況調査を分析し、児童の実態把握を進めたところ、複数の情報を整理・活用する段階でのつまずきがその先の表現活動に影響していることが見えてきました。そこで2024年度から前述の研究主題を設定し、主に「情報収集」について研究。2025年度は、情報の「整理・分析」に注目し、情報の扱い方に関する指導の改善・充実を進めています。
また、市から2025年度の「リーディングDXスクール事業」に指定校として参加するお話をいただきました。これまでの本校の研究活動に加え、ICTの活用により個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させ、主体的・対話的で深い学びの実現をめざすことで、児童の学びの質や先生方の授業力をさらに向上させられるのではないかと期待し、二つ返事でお答えしました。
必要なときに、必要なだけ――「秒速2メートルの支援」を
授業改善を学校全体で進めるに当たり、私は先生方に「秒速2メートルの支援」を意識してほしいと伝えました。なぜ「秒速2メートル」なのか。陸上競技の100m走では、追い風が秒速2.0m以内であれば正式記録として認められますが、2.0mを超えると“風の力”と判断され、参考記録になってしまうのです。
児童が自分の力で歩めているときにはそっと見守り、道を外れそうなときだけ必要な後押しをする――。こうした「秒速2メートルの支援」は『SKYMENU Cloud』のようなICTを活用することで、よりスムーズに、効果的に実現できると思います。ICTは子どもたち一人ひとりの状況を細かく把握し、必要なときに必要なだけ支援することを後押しするからです。この考えの下、西田先生や廣瀬先生、山下先生をはじめとした本校の先生方と一丸となって、授業研究に取り組んできました。
全教員で試行錯誤し、それぞれの学級の最適解を探す
西田 敏基教諭(教務主任)
廣瀬 真実教諭(研究主任)
西田先生 校長先生からリーディングDXスクール事業の指定を受けたと聞いたとき、まずは本校の「研究主題とどう関わらせていくか」という共通課題を持ちました。これを考えるベースとなったのは、廣瀬先生が中心となって作ってくれた、学年別に情報活用能力やめざす子ども像、具体的な手だてをまとめた資料です。
これらを軸とし、具体的な指導方法については、以前から『SKYMENU Cloud』などのICTを積極的に活用していた教員の授業を参観し、その成果や課題を話し合って全体に共有する――というサイクルを繰り返し行いました。
廣瀬先生 研究主任として、正解の型を示せないのがとても苦しかったです。誰も正解が分からない状態だったため、何度も先進校へ視察に行って指導方法を学び、さまざまな知見を得ましたが、それがそのまま本校の先生方にとって正解になるわけではありません。そのため、みんなで試行錯誤し、教員それぞれが自分のクラスの最適解を見つけていきました。
県内の特色ある地域 児童が意思決定し、対話から得た情報を整理・分析
廣瀬先生 中学年の指導において特に意識しているのは、一斉指導の割合を可能な限り減らし、児童が意思決定したり、選択したりする場面が多くなるような授業を行うことです。私は一人ひとりの状況を理解し、児童同士の「つなぎ役」として動くようにしています。
例えば、4年社会「県内の特色ある地域」では、全17時のうち一斉で行うのは課題についての説明と単元のまとめの計6回だけ。それ以外は個別協働の時間とし、課題に対してさまざまな情報を集め、整理・分析するという流れを繰り返すことで、教科のねらいに迫りつつ、情報活用能力の育成をめざしました。この時間では、教科書やWebサイトで情報を得て[発表ノート]に1人でまとめている子もいれば、紙のノートや[発表ノート]を見ながら友達と一緒に考えを共有している子など、さまざまな活動をする様子が見られました。
「聞き方」をレベルアップさせ、児童同士の対話を充実させる
個別最適な学びや協働的な学びを広げていくと、当然ながら「教師が語る割合」は少なくなります。その分鍵を握るのは、児童同士でつくる学びの時間です。友達とのやりとりの中で互いに気付きを生み出し、学びを深めていく姿をめざしています。
そこで必要となるのが言語活用能力や情報活用能力です。伝える力・聞く力が十分でないと、表現が曖昧になったり、聞き手が適切に返答できなかったりして、どうしても対話が浅くなってしまいます。深い学びを生むためには、最低限の“言語の武器”が必要だと、強く実感しました。
そこで1学期は、対話のための立ち歩きを推奨する雰囲気づくりに重点を置きました。「友達にアドバイスをもらいに行ってみて」「成果を見に行っておいで」。こうした声かけを積極的に行い、教室内で立ち歩きながら学び合う文化を育てていきました。すると徐々に、立ち歩いて話す姿が日常的に見られるようになっていきました。
2学期になると、対話の“量”が増えてきました。しかし、聞き手がほとんどリアクションを返さない、話しても「字の色がきれい」「写真が多い」といった[発表ノート]の見た目に関するコメントが中心で、交流というより発表のような状態でした。
そこで、「どんな反応を返せば会話が深まるか」「どんな聞き返しや質問が望ましいか」を「聞き方のレベルアップ」として具体的に指導。チェックシートと併用してポイント制にすることで、徐々に課題そのものへの対話が生まれるようになっていきました。
データを使って生活を見なおそう 問題解決の方法を友達と話し合い、多面的、多角的に考える
山下 穂乃佳教諭(副研究主任)
学級全体で[グループワーク]、相互参照と教員の見取りに生かす
山下先生 高学年では、「目的や意図に応じて多面的・多角的に情報を扱うことで、自分の考えを適切に表現できる児童」をめざしています。これを踏まえ、6年の算数では単元の最後に、問題解決の方法について友達と話し合い、考えを深めるための「ディスカッションタイム」を設定しています。
例えば、「データを使って生活を見なおそう」の第5時では、教科書のデータを基にディスカッションタイムの課題を設定。このとき、課題と一緒に評価基準も伝えました。
その後、[グループワーク]でクラス全員を同じグループに参加させました。[グループワーク]は友達の[発表ノート]にも書き込めるのでスムーズに議論できる上、画面横にクラス全員の[発表ノート]がずらりと並ぶので、必要な情報を選択する練習にもなります。参考にしたいと思った友達の[発表ノート]から必要な素材をもらい、貼りつけることも可能です。また、過去の先輩や隣のクラスの[発表ノート]を持ち込み、紹介できる点も便利です。このように、子どもたちが簡単につながれることが[グループワーク]をはじめとした『SKYMENU Cloud』の最大のメリットだと感じます。
ディスカッションタイムの導入に当たり、新年度の最初に「学ぶための時間」であることをしっかり確認しました。また、話し合いに必要な「聞く」スキルの向上のために、「相手の考えに、簡単に納得しないで」「『なんで?』とたくさん聞けるようになろうね」ということも、繰り返し伝えました。
だからこそ先ほどご紹介した授業でも、友達と真剣に、かつ楽しく議論する姿が見られました。ディスカッションタイムをゴールに見据え、長い間一生懸命準備をしてきたので、「成果物を見てもらいたい」という思いが強まっていたのだと思います。自作したアンケートのURLを[気づきメモ]で共有し、「答えてください!」とクラスのみんなに声をかける子も複数いました。また、普段は発展問題までたどり着けない子が自作のアンケートを活用して課題に取り組み、授業終わりに「(評価)Sまでいけた」と話していた姿も見られ、とてもうれしく思いました。
教師の見取りと支援で、「自走・自律」の学びを支える
「振り返りシート」や[ライブ公開提出箱]で見取り、児童同士をつなぐ
廣瀬先生 個別協働の時間を増やすとその分、子どもたちが「今何に取り組んでいるか」を把握するのが難しくなります。そこで、しっかりと見取るために授業前には必ず、めあてと振り返りを書かせているMicrosoft Excelのシートを共有化した「振り返りシート」を見て、一人ひとりの進捗状況やテーマをできるだけ把握するようにしています。授業中は、教室を歩いたり[ライブ公開提出箱]を使ったりして見取り、「何してる?」「何目的で立ち歩いてる?」などと、一人ひとりに積極的な声かけをしています。
例えば、黙々と[発表ノート]をまとめていた児童に声をかけると、課題に対する答えが少しずれていたことがありました。その際、「その考え方、〇〇くんも考えていたから、聞きに行ってみたら?」と助言。しばらくたって再度尋ねると、今度は、ずれることなく、むしろ友達の考えを吸収したことが分かる良い答えが返ってきました。私が答えを教えなくても、児童自ら答えにたどり着けるのだと感じられた瞬間でした。このようにICTを活用してリアルタイムで見取り、児童の意思を聞いてほかの子とつなげることも、教員の重要な「支援」の一つだと思います。
[気づきメモ]で個々の進捗を発信。
アンケートへの協力を呼びかける児童も
山下先生 私も、できるだけ一人ひとりと関わることを意識し、物理的に動き回るよう心がけています。端末で[発表ノート]や「振り返りシート」を確認し、気になったら声をかける――授業中はこの繰り返しです。
ただ、ディスカッションタイムは特に自由度が高いので、子どもたちの活動を把握し切れない場面が生まれてしまいます。そこで、「今、何してる?」と口頭で問いかける時間を意図的につくっています。「データを使って生活を見なおそう」の第5時では、子どもたちに[気づきメモ]へ今の自分の進捗を記入してもらいました。[気づきメモ]でほかの友達の進捗を知ることで、「この子も交流する相手を探しているんだ」というふうに、子どもたち自身が周囲を見るきっかけにしてほしい。そして、学習の目的に立ち返る機会にしたいという思いから、意識的に取り入れています。
廣瀬先生 授業改善を通じ、「把握されているし、把握できている」状態を生み出せるのが、『SKYMENU Cloud』やICTの強みだと感じるようになりました。もし、「教員が把握できていないのに、好きな場所へ行って好きに学べる」状態だったなら、子どもたちはきっと仲の良い子と話し合うなど楽な方を選んでしまい、学びを深められないでしょう。
[ライブ公開提出箱]などによって生まれる「自分の進捗を把握されている」という状態が、ある意味「規律を持たなければいけない」という意識を生み出してくれている。なおかつ、自分の成果物を見てもらえるツールでもあり、子どもたちのモチベーションにつながっていると思います。
みぶりでつたえる [ポジショニング][手書き文字認識]で自分の考えを表出する
西田先生 ここまで、中学年・高学年の授業についてお話ししてきましたが、低学年は少々異なります。高学年で「自走・自律できる子ども」というゴールを達成するための下準備を行うのが、低学年です。「自走・自律だから」といきなりすべてを任せてしまっては、何も身に付かないままになる恐れがあります。まずは学習の進め方やルールなどのベースをしっかり教え、そこから育てていくことが必要だと考えています。
情報活用能力も同じです。1年生の段階で「情報を正確に理解して、自分の考えを適切に表現する」といっても難しい。そのため、「低学年なりに、何ができれば情報を正確に理解できるということになるのか」についてかみ砕いて捉え、実践してきました。例えば生活科の授業では、見つけたものや写真から分かることを考えさせたり、多くの絵や写真、文章から読み取れることをピックアップさせたりしました。
こうした学習を進める上で、操作がシンプルな『SKYMENU Cloud』が役立っています。例えば、1年国語「みぶりでつたえる」では、「みぶりが効果的かどうか」を[ポジショニング]で問いました。マーカを直感的に動かせるので、考えの言語化は難しくても、自分の考えに基づいてなんとなくの位置を選べます。「授業に参加できている」感覚を持たせてあげられるのは、とても大切なことです。
また、選んだ身ぶりを隣の席の友達と動画で撮影し合い、それを[発表ノート]に貼りつけさせました。動画の貼りつけは初めてでしたが、予想以上にスムーズに行えていました。紙のノートだとうまく字が書けなかったり、レイアウトが難しかったりしますが、[発表ノート]なら簡単に文字を打ち直したり、配置を変えたりできます。[手書き文字認識]があるおかげで、ローマ字をまだ習っていない低学年でも、スムーズに自分の考えを表出できます。
今回ご紹介した授業のように、低学年であってもしっかりと端末を使えます。今まで、「1年生だから」と自分の中で制限をかけてしまっていた部分があったことに、あらためて気付かされました。
一斉指導が減っても、教師の支援で児童は学びを深められる
廣瀬先生 この1年で授業スタイルを大きく変えましたが、児童の学力について、自分の感覚ではまだ変化は感じられていません。しかしこの結果から、「一斉指導や教師が全体に対して指示する機会が減っても、子どもたち自身が自力で学びを深められる」という気付きを得ることができました。
山下先生 私も、児童の学力が伸びたかどうかは分かりません。ただ、年度初めに行ったアンケートで「算数が好き」と答えた児童が2人だったのに対して、今やほとんどの子が「算数が好き」と言ってくれるようになりました。嫌いだった勉強を好きになれた――これは、すごく大きな成果だと感じています。
たまに一斉指導をすると、「先生、今日すごいしゃべるね……」と言われます。今の授業スタイルの方が、子どもたちが楽しいと思ってくれている。その実感があるから、これからもこのスタイルを続けていきたいと思っています。
西田先生 子どもたちからも、「自分のペースで進められる」「分からないことがあっても、先生や友達に教えてもらいやすい」といった声が上がっています。
今の研究主題は来年で3年目を迎えますが、今後はさらに「整理・分析」の質を高め、研究主題の達成に近づけるよう頑張りたいです。実践を通じて新しい発見や手応えを得て次に試す、というサイクルを続けることで、子どもたちの学びをさらに深めたいと考えています。
生島校長 この1年で私を含め、本校の教員の意識は大きく変わりました。以前はあえて端末を使っているような雰囲気だったのが、今はもう普段着のようなかたちで端末を使えています。「今、あの子はどんな状況か」「次の授業ではどんな学びがあるか」「どんな準備をすればよいか」――これらを考えた上で、目の前の授業だけで完結するのではなく、単元計画全体を見通せるようになってきています。年間を通じて授業研究を続けてくれた教員の努力には、頭が下がる思いです。
そして、児童の表情や目にも輝きが増しました。教科書で情報収集したり、ノートに向かっていたり、端末を操作していたり……主体的に取り組む様子が見られるようになりました。そして何より、他校の児童と一緒に活動した際、自分のクラスの授業を自慢する児童も現れたのです。今後も教員自身が学び続けることで子どもたちのニーズに応え、自走・自律できる生きる力をもった「かみにの子」を育てていきたいと思います。
(2026年2月取材 / 2026年4月掲載)