全校で自由進度学習に取り組み、“自ら考え、学ぶ力”を育む
教師の見取る力と学習環境を支える『SKYMENU Cloud』東京都国分寺市立第四小学校では、「個別最適な学び」「誰一人取り残さない学び」を実現するため、2025年度の研究主題を「自ら考え、学ぶ力を高める」と設定。全校での自由進度学習の取り組みのなかで、子どもたち一人ひとりの見取りを充実させるため『SKYMENU Cloud』を活用しています。同校の取り組みと現時点の成果について、大島 晃 校長、澤 祐一郎 主任教諭、道法 和徳 主任教諭、牧嶋 彩 主任教諭にお話を伺いました。
東京都国分寺市立第四小学校
大島 晃校長
東京都国分寺市立第四小学校
澤 祐一郎 主任教諭(研究主任)
東京都国分寺市立第四小学校
道法 和徳 主任教諭
東京都国分寺市立第四小学校
牧嶋 彩 主任教諭
自由進度学習を新しい手法の一つとして取り入れ、授業改善に生かす
貴校の概要やICT活用状況をお聞かせください。
大島校長
本校は、創立74年目を迎えた小学校ですが、2004年にオープンスペースを特色とした現校舎に移転しました。都立武蔵国分寺公園に隣接しており、歴史や豊かな自然が息づく国分寺市の中でも、緑が豊かな地域にあります。2025年度は、特別支援学級を含めた合計39学級で、916名の児童が学んでいます。私が本校に赴任したのは2022年で、GIGAスクール構想(第1期)の環境整備が一段落した頃ですが、今では、ICTの日常使いがすべての学年で定着しているといってよいと思っています。
澤先生
大島校長が赴任されてきた当初は、週案の中でタブレット端末を使用する場面に「タ」と明記するなど、意識的に活用を促進していました。しかし、現在は使うことが当たり前になっていて、むしろ記入する必要がないほどです。各学年4~5クラスあり、学年に一人はICTに詳しい先生がいて、日常的な学び合いが定着していることも大きいですね。
自由進度学習の取り組みも、同じように進められたのでしょうか?
大島校長
自由進度学習は、昨年度に市教育研究会の情報部で自由進度学習とICT活用について話題となり、本校においても澤先生や道法先生をはじめとする一部の先生が取り組み始めました。
それを踏まえて、次期学習指導要領に向けて、これまで以上に個別最適な学びを充実させ、誰一人取り残さない学びを実現する新たな学び方の一つとして、自由進度学習を試みることを学校経営方針に盛り込みました。
澤先生
校内研究として自由進度学習に取り組むと聞いて、最初は本当に驚きました。そこで、年度末に校長先生に全教員との懇談の場を設けてもらいました。校長先生が目指しているイメージや取り組みの意図を聞き、思い浮かんだ疑問点を質問させていただきました。
大島校長
私が教員になったばかりの頃の話です。当時は採用倍率が高く、最初は理科の専科教員でした。あるとき職員室で「3組は良かったが、4組はダメだった」と愚痴をこぼしたのですが、それを耳にした先輩から「それは、あなたの授業が3組には合っていて、4組には合わなかったんだね」と指摘されたことがありました。つまり、子どもたちの個性や認知特性に、教員である自分が合わせられなかっただけだと。
それを個人に置き換えて考えれば「Aさんは良いが、Bさんはダメ」ではなく、「Bさんには合っていない」と捉えるべきだということです。しかし当時は、子ども一人ひとりに合わせ、個に応じた指導を実践するのは本当に大変でした。今はICTという学習環境が整い、可能性が大きく広がっているからこそ、挑戦するタイミングなんだと思います。
澤先生
校長先生のお話から「個別最適な学び」や「誰一人取り残さない学び」に真剣に取り組むんだと、多くの教員が理解してくれたと思います。また、自由進度学習は絶対的な手法ではなく、今までの学び方を否定するものではないと分かったことで、安心された方もいたのではないかと感じています。研究主題にも「自由進度学習」という文言を入れる必要はないということで、現在の教育情勢や目指したい子どもの姿などを話し合うなかで、共通項として挙がった「自ら考え、学ぶ力を高める」を研究主題として設定しました。
「自分は分かっていない」と自覚する、それが大きな成長に
具体的には、どのように推進されたのでしょうか?
澤先生
新年度が始まったばかりの4月に「校内研キックオフ」を行い、1学期は「まずはやってみよう!」と銘打って、研究に使える時間を確保し、日常的に小さな対話を重ねて教員の目線を合わせることや、お互いの授業を見合う機会をつくることから始めました。ただ、正直に申し上げると、当初は1年間を通じて1単元に取り入れてもらえればいいくらいに考えていました。しかし、9月下旬に開催した中間報告会のレベルの高さに、私の方が驚かされました。
牧嶋先生
すぐに軌道に乗れたのは、澤先生がOJT研修や話し合う機会をたくさん用意してくれたことが大きいと思います。特に、6月に5年生の5クラスが提案授業をしてくれたことで、私のような初めて自由進度学習に取り組む教員にも、具体的なイメージをつかめたことが転機になったと感じています。一つのゴールイメージを共有し、この姿を目指すなら2年生の段階では何ができるようにするとよいかと、考えることができました。
澤先生
5年生の実践は、一つの基準になったと感じています。
自由進度学習といいますが、自由なのは進度だけではありません。学び方も、学ぶ相手も、課題も自由です。ですから、どこまで子どもたちに委ねるかをよく考え、「自立した学習者」という意識を持つことが必要だと5年生の授業を通して思いました。
大島校長
教員がティーチャーではなく、コーディネーターやファシリテーターとならなければいけないのですが、5年生の授業を見てそのイメージが共有されたことが、各教員の理解につながったのだと思います。どんなに新しい手法を取り入れようとも、教員が前向きにならないと子どもたちにいい影響は与えられませんので、教員が興味関心を持ち、納得の上で取り組むことが大切です。
初めて自由進度学習を実践し、どんな手応えを感じていますか?
牧嶋先生
さまざまな変化を実感していますが、子どもたちが「分かっていない」ことを自覚できたというのが一番です。一斉授業では私や友達が答えを示してしまうので、板書を写すだけで分かった気になります。自由進度学習の場合は、自分が分かっていないと何も進められないので、子ども自身が「分かっていない」ことを自覚します。自分の苦手なところに気づけることが、何よりも大きな成長だったと思います。
大島校長
主体的に学んでいる証だと思います。実際のところ、一斉授業の方が子どもたちの「困った顔」を見なくて済みます。自由進度学習では、困ったり、迷ったり、悩んだりする。私はそれこそが本当の学びの姿だと思います。子どもたちが困っていれば、教員は必ず動いて手を打ちます。そこで生まれる工夫こそが、全員の学力を上げるために効果を発揮するのです。
牧嶋先生
困っている子が見えなければ、手を差し伸べられないですが、それが見取れれば声を掛けて指導することができます。すべての授業で自由進度学習をするわけではないですが「自分で学ぶ」という意識が身につけば、一斉授業にも必ず生きてくると感じました。
大島校長
今回の成果の一つとして、教員の見取りの精度は格段に上がったと感じています。習熟段階をA・B・Cとした場合、A評価の子は自分で学びを進められる。B評価の子も協働すれば進められる。そしてC評価の子への支援が充実する。誰一人取り残さない学びの実現に具体的に近づきます。
牧嶋先生
A評価の子たちも生き生きと取り組んでいます。これまでは、活動が早く済んだ子に先生役をしてもらうこともありましたが、毎回教えるばかりでは学習意欲が続きません。自主的に応用問題に取り組むなどして、A評価の子どもたちが伸びているのは大きな変化の一つだと思います。
見取りのポイント [ポジショニング]なら、その場で理解度をつかみ支援できる
これまでの実践を通じて、感じていることをお聞かせください。
道法先生
単元構成を意識した授業づくりがますます重要になると思っています。自由進度学習の場合、単元で使用する[発表ノート]をすべて最初の授業で配付するため、単元の見通しを明確にして、ゴールに向かって構成するデザイン力が研ぎ澄まされたと感じています。
子どもたちとも、単元の初めに目標を共有し、自分がどこに向かって何を学習するのかを意識できるようにしています。また、学習資料も[発表ノート]に含めていますので、先にそれを見て探ろうとする子もいます。例えば、歴史上の人物についてなら「この人、聞いたことある」「どんな人なんだろう」といったところから「この単元では何を学ぶのか」と立ち戻ることもできるので、見通しは持ちやすくなったと思います。
単元だけではなく1単位時間の中でも、45分後の姿を思い浮かべて目標を立て、主体的に取り組めるようにすることで、一人ひとりの見取りが具体的になっていきます。
大島校長
学力を定着させ、習熟させるには見取りが最も重要です。自由進度学習では見取りの重要性がさらに増します。その点、ICTが一人ひとりの見取りをサポートしてくれます。先ほども話に挙がったように、困っている子がいれば、教員は必ず手を打ちます。それが、誰一人取り残さない学びにつながっていることを、多くの教員が実感できています。
道法先生
私は、理解度を確認するときに[ポジショニング]を活用しています。しかし「分かった」「分からない」の数直線ではなく、あえて「なんとなく分かった」という中間の選択肢を加えた3択にしています。実は、「なんとなく」と回答した子がキーパーソンになることが多いのです。その回答の裏を返せば「どこかにつまずきがある」ということなので、話を聞けばポイントが明確になります。こうした理解度の確認は、表計算ソフトウェアなどの表に記入させるという方法もあります。しかし、私は[ポジショニング]のように、子どもたちがパッと答えられて、教員がその場で把握できる仕組みをお勧めします。なるべく、最も熱が保たれている授業中に話を聞きたいからです。つまずいたポイントが明確になると、放課後残って復習したいと意欲を示す子も少なくありません。きっと、自分のつまずきを先生に知ってもらえた安心感なのだと思います。
学習環境づくり 非同期の学びに、いつでも他者参照できる[ライブ公開提出箱]が有効
そのほかにも『SKYMENU Cloud』が役立つ場面はありますか?
澤先生
『SKYMENU Cloud』は、他者参照に特に強い学習者支援ツールだと感じています。[ライブ公開提出箱]は、公開状態にしておけば自宅に帰ってからでも友達の[発表ノート]が見られます。私は非同期の学びも大切にしたいと思っているので、[ライブ公開提出箱]のように、離れた場所にいても考えが共有できる仕組みは、本当に役に立ちます。
例えば今回は、国語の授業で宮沢賢治の「やまなし」に取り組みました。この作品は、筆者の考えについて十人十色の捉え方があります。実践では少し時間をかけて考えをまとめるようにしました。自宅に持ち帰り、他者参照をしながら自分なりの工夫をする子もいると考えたからです。これは、ICTがあるから広がる世界だと思います。
そのほかに、道法先生と同じく[ポジショニング]もよく使いますが、今回は進捗確認に活用しました。1学期からの様子を見ていて、活動の進み具合を調整することに難しさを感じている子もいたからです。自分では遅れていることに気付けない子もいるので、他者のマーカも見られるようにしておき、集団の中で自分がどこに位置しているのかを意識できるようにしています。こうした意識のあり方は、机間指導だけではなかなか把握しきれないので、見取りに活用できるツールはありがたいです。子どもたちの今まで見えていなかったことが分かるようになったと実感しています。
学習環境づくり 子どもたちが自由に参照できる学習環境として[電子連絡板]を活用
低学年では、どのように自由進度学習に取り組んでいますか?
牧嶋先生
自由進度学習で能動的に学ぶといっても、受動的に見て学ぶことも必要なので、活動時に子どもたちが好きなタイミングで参照できるよう[電子連絡板]でリンク集を作っています。インターネットにつながっているといっても、2年生が自分で検索して必要な情報にたどり着くのは難しいため、こうした学習環境を用意しています。特に、算数などの積み上げが大切になる教科では、本時の内容だけではなく、これまでの学びを復習できるコンテンツにアクセスしやすい環境がとても大切だと思います。そのほか、解説動画や問題集などもひとまとめにしているので、休み時間に活用して学んでいる子もいます。また、こうした環境を学年で1つ作っておけば、ほかのクラスでも活用できる便利さもあります。
大島校長
先生が自作した提示用の教材などを共有するケースがありますが、実際にはあまり活用されないのが実情ではないでしょうか。正直なところ、私はあまり活用できずにいました。それは、自分が受け持つ子どもたちに合わせて作られたものではないからなのだと思います。しかし、牧嶋先生の[電子連絡板]のような子どもたちが活用する学習環境であれば、子どもたちが自分で判断して使うものなので、ほかの先生方も活用しやすいと思います。
牧嶋先生
そのほか、2年生としては[発表ノート]が使いやすくて便利です。まだ、文字の入力がおぼつかない子どももいますが、算数で計算問題を作るという活動でも、あらかじめ1~9のカードを用意しておけば、子どもたちはカードをコピーして配置するだけで問題づくりができます。その上、間違えれば何度でもやり直しができるという点は、やはりデジタルの良さだと感じます。さらに[グループワーク]でノートを統合すれば、それぞれが作成した問題を全体で共有することも、すぐにできます。こうした手軽さを考えれば、2年生としては[発表ノート]と[電子連絡板]の組み合わせがちょうどいいと感じています。
目的観を明確に持ち「流行を追いながら、不易を確かめる」
先生方としては、どんな変化がありましたでしょうか?
澤先生
初めはどうなるのかと驚きや不安もありましたが、子どもたちに時間や方法を委ねるからこそ、子どもたちの豊富なアイデアが出てきたと実感する場面をたくさん経験しました。教員としても、全体的に子どもたちを見取る時間が増えたと思います。また、ICTを活用して一人ひとりの状況が把握しやすくなったことで、個に応じた指導がしやすくなり、個々の疑問や質問にも答えやすくなりました。
道法先生
単元を見通す力や構成力は、圧倒的に意識が変わったと感じています。自由進度学習では、できる子はどんどん先に進むので、教員が見通せていないと逆に支援の手が遅れてしまうこともあります。また、つまずいている子がいれば「Aさんのノートを見てごらん」とアドバイスできる。それは私自身が、以前よりも全員の状況をつかめているから、上手につなげるようになってきたのかなと思っています。今後は、さらに見取りを充実させることをテーマとして研究していきたいと考えています。
牧嶋先生
私は、提出する資料の文言一つをとっても子どもたちの目線で「これでいいか」と自問するようになりました。授業づくり全体が子どもたち主体で考えられるようになってきたのだと思います。また、子どもたちが「自分は分かっていない」ということを表現できるようになったとお話ししましたが、もしかすると以前は、分かっていない子を探すのも仕事の一つだったような気がします。これからは自由進度学習で子どもたちが協働的に学ぶなかで苦手なことを克服していくことも考えられます。人間関係なども意識しながら、授業づくりを考えていきたいと思っています。
大島校長
3年生を対象にアンケートを採った結果、一斉授業より自由進度学習の方がいいという子が大半を占めました。やらされている感じがしないことや、友達や教員から適宜支援が受けられるので安心して学べる点が大きいのだと思います。また、3人が話しているとおり、教員も自分の成長・変化を感じています。
教育分野ではよく「不易と流行」という言葉が使われますが、本来これらは二項対立する関係ではありません。私は「流行を追いながら、不易を確かめる」と意識しています。流行(時代の変化とともに変えていく必要があるもの)は理由があって取り組まれるものです。自由進度学習もICT活用も、もともと大事にされてきた「個に応じた指導」をより良くするためにあり、「誰一人取り残さない学び」を現実にするために活用されるべきものです。そうやって目的観を明確に持って取り組めば、子どもたちはもちろん、教師ももっと力をつけられるはずです。私どもは、一つひとつの実践を大切にし、これからの時代において、自信と誇りを持って授業ができる教師を育てていきたいと思っています。
(2025年9月取材 / 2025年12月掲載)