授業でのICT活用

【講演レポート】生徒1人1台タブレット端末の運用と今後の展望 学校法人大阪初芝学園 初芝富田林中学校・高等学校 道簱 宏悦 教諭

平成29年度の入学生からタブレット端末1人1台へ

本校は、昭和59年に開校し、平成30年度で創立35年を迎える大阪の私立中高一貫教育校です。現在1,200名を超える生徒が通っています。

【写真1】は、現在の本校の教室の様子です。すべての教室の黒板の上部にプロジェクタ型の電子黒板が設置され、無線LANを利用できます。さらに、平成29年度から順次、教員と生徒が授業でタブレット端末を活用する取り組みをスタートさせています。

【図1】

このような本校のICT環境整備は、平成28年秋に前校長からの「平成29年度の入学生から、生徒1人1台のタブレット端末活用を実現したい」という指示から始まりました。

しかし、当時の本校にはタブレット端末が1台もありませんでした。そこで、先生方がタブレット端末に慣れること、そして授業のイメージを持つことを目的に、平成28年度に教員用タブレット端末60台と生徒用タブレット端末13台を先行的に導入しました。

その後、平成29年度に入学した中学校1年生、高等学校1年生の約400名から、生徒1人1台タブレット端末活用をスタートさせました。2年目を迎える今年度(平成30年度)で、さらに400台増えて合計800台。来年度(平成31年度)は、すべての生徒がタブレット端末を持ち、合計約1,200台もの端末が稼働する予定です。

2in1のWindowsの端末を選定、将来の仕事やCBT対策を考慮

今はこのような姿ですが、前校長から導入の指示を受けた平成28年度秋当初は、タブレット端末の導入に向けて一体何を検討すべきなのか、見当もつかない状況でした。私は、整備担当者として「まずい」と思いました。そこで、まずはICT準備委員会で校内の先生たちと情報交換したり、ICT環境整備を先進的に取り組んでいる他校の公開授業に参加したりして情報を集めました。いくつかの業者にもアドバイスを求め、それらをもとに選定事項をまとめ、一つずつ検討していきました。

まず取り掛かったのは、OS選定です。iOS、Windows、Androidを比較しました。

Androidは、デジタル教科書や電子黒板のアプリケーションが対応していなかったため、検討の初期段階で対象から外れました。従って、iOSかWindows OS、つまりiPadかWindows搭載端末に絞られました。当時、先進的な私立学校で導入されていたのはiPadばかりだったので、私たちもiPadの整備を漠然と想定していました。

しかし、私たちが出した結論はWindows搭載端末の整備でした。選定の理由の一つは、単純に本校の先生方がWindows OSやMicrosoft Officeに慣れていることにありました。そして、これまで先生方が電子黒板用に作成、蓄積してきたオリジナルの教材は、Microsoft Officeで作成されているため、それらをそのまま再利用できることも決めての一つになりました。

そして何より、生徒たちが将来社会に出て働くことを考えれば、広く仕事で使われているWindows搭載端末やMicrosoft Officeを当たり前のツールとして使いこなせるようになってほしいという私たちの願いもありました。

タブレット端末は、物理キーボードを備えた2in1タイプのものを選定しました。今後、大学入試ではCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)の実施が検討されているので、生徒のキーボード入力スキルの向上のためにも、物理キーボードは欠かせないと考えています。

中1、高1入学時に保護者負担で端末購入へ

タブレット端末の調達については、当初生徒が自由に端末を選び、それを授業に持参して使うことを想定していました。けれども、1人ひとり異なる機種、異なる設定のタブレット端末を使用する生徒たちを相手に授業を進行することは、困難であろうと感じました。

そこで、入学時に本校が指定するタブレット端末を、保護者負担で購入してもらうことにしました。生徒が端末を落下させるなどして破損させてしまうことも想定し、端末の購入に併せて保険にも加入してもらいました。

それから本校は6年間の中高一貫教育校ですので、もう1つ検討すべき課題がありました。それは「中学1年で購入してもらった端末を、何年間使用してもらうのか」ということです。保護者の負担に直結しますから、あらかじめ方針を提示しておく必要がありました。検討を重ねた結果、中学1年で購入した生徒には、高等学校入学時に新たにタブレット端末を購入してもらうこととしました。保護者には、入学時の説明会で方針をお伝えし、理解をいただくようにしています。

教員、児童生徒の全端末に『SKYMENU Class』を導入

Microsoft Officeについては、1年目は「Microsoft Office Mobile」を導入しました。無料で利用できるのですが、クラウドに都度アクセスしてファイルを読み出したり、保存したりする仕組みや、通常のMicrosoft Officeと比べて使用できる機能が限られていたことから、1年間でシステムを切り替えました。2年目(平成30年度)からは、インストール版のMicrosoft Officeを採用しています。

そのほか、すべての教員、生徒のタブレット端末に学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』や、クラウドサービスで、生徒・保護者との連絡に役立つコミュニケーションツールなども導入しています。

『SKYSEA Client View』で、1,200台の運用管理

タブレット端末は、保護者負担で購入したものですが、学校側でそれらを授業で使えるように運用管理をしていく必要があります。導入初年度は、MDM(モバイルデバイス管理)のツールを使って運用管理していました。しかし、より細かな設定が必要と考え、2年目からは、企業・団体向けクライアント運用管理ソフトウェア『SKYSEA Client View』に切り替えました。

Windows ストアアプリなどの禁止やトラブル時の遠隔操作、また、何か問題が起こった際の備えとして、タブレット端末の操作ログの収集に活用しています。教員や生徒の利用規定も作成しています。生徒には【図1】のような規定を作成し、年度当初に配布しています。

端末本体が重いと、生徒は持ち帰って充電してくれない

生徒1人1台端末の運用を開始しておおよそ2年。端末が重いと生徒は自宅に持って帰ってくれません。つまり、充電してきてくれません。また、安価な端末を選定したため、スペックが低く、動きの鈍さから、生徒たちは使いづらさを感じているようです。こうした反省を踏まえ来年度の新入生からは、価格は高くなりますが、よりスペックの高い端末を選定する予定です。そして生徒のタブレット端末は壊れることもあります。例えば画面割れは、平成30年度中に中学校で11件、高等学校で13件発生しました。修理費用がかかりますから、保険に入っていて本当に正解でした。

今、本校では各教室の電子黒板の活用が定着してきています。タブレット端末の活用については、教科特性や教員個人の力量の問題でばらつきが生まれているのが実際のところです。来年度からはいよいよ全学年がタブレット端末を持ちます。電子黒板とタブレット端末を組み合わせた、より効果的な授業の普及にむけて、研修を重ねていきたいと考えています。

パートナーとして信頼できる業者の選定を

タブレット端末の導入は、とにかくお金が必要です。そして先生方には、タブレット端末に慣れるための時間が必要です。これから整備を検討される学校は、まずは先生方にタブレット端末を渡し、練習してもらうことから始めてもらえればと思います。

そして、情報担当者の負担は必ず増えます。「タブレット端末が突然動かなくなった」「ユーザIDとパスワードを忘れてしまった」このような相談は教員、生徒からひっきりなしに来るようになります。

しかし、このようなトラブルは、私たち教員で対応できる内容ですので、大きな問題ではありません。本当に大変なのは、教員では対処できないトラブルが発生したときです。例えば、導入初年度は教員も生徒も無線LANにつながりにくく、とても困りました。専門的な知識がないため、私たち教員では何が問題なのかが見当もつかないのです。導入業者に何度もお願いし、無線LANの設定を調整してもらってようやく解決できました。信頼ができて、お願いをしたら素早く対応してくれる業者。つまり「パートナー」として一緒に歩んでいける業者を選ぶことが本当に大切なことだと考えます。

タブレット端末の導入は、一歩足を踏み入れると後には戻れません。これから整備される学校の管理職の先生はもちろん、担当の先生は、本当に覚悟を決めて取り組んでほしいと思います。

(2019年 学校とICTフォーラム(大阪会場)講演より / 2019年5月掲載)