授業でのICT活用

ICT活用研究】“アウトプットの力”を重視し、世界で活躍するリーダーを育む 学校法人江戸川学園 江戸川学園取手小学校

学校法人江戸川学園 江戸川学園取手小学校では、平成26年から4年生以上の児童がWindows OSのタブレット端末を購入し、児童1人1台の環境で日々の学習活動を展開されています。同校の国語科において、タブレット端末を活用した授業を積極的に推進されている 小仲井 健太 教諭にお話を伺いました。

タブレット端末が当たり前の学習の道具に

本校は、平成26年4月に茨城県初の小・中・高等学校12年間の一貫教育校として開校しました。「心豊かなリーダーの育成」を教育目標に掲げ、スティーブン・R・コーヴィー著の「7つの習慣」をさまざまな学習に取り入れ、将来、国際社会で活躍できるリーダーの育成をめざしています。

本校の特徴として、国語教育、とりわけ読書教育に力を入れている点が挙げられます。1年生から6年生まで、さまざまな書籍や教材に触れさせ、読む力を高めています。また、ICT教育を重点施策の一つに掲げており、4年生以上の児童が1人1台タブレット端末を購入し、学校に持参して日々の学習活動で活用しています。タブレット端末は常に彼らの手元にありますから、「教科書」「ノート」「筆箱」に加え「タブレット端末」が、当たり前の学習の道具になっています。

「インプットする力」と「アウトプットする力」

本校の児童が将来、国際社会でリーダーとして活躍するためには、情報をインプットするだけでなく、その情報を適切な形で相手に伝える力、つまり「アウトプット」する力が必要です。そしてアウトプットするためには、日本語で思考し、日本語を操って表現しなければなりません。日本語の力、国語の力は彼らに欠かすことのできない力です。

そのような考えから、国語科では、状況に応じて情報を読み取る「インプットの力」と読み取った情報を適切な形で相手に伝える「アウトプットの力」の2つの力に注目して指導を展開しています。

それらに加えて、自分の考えを他者に効果的に伝えるために、英語やICTを「手段」として使いこなす力も必要です。授業の中に、ICTで自分の考えをまとめてアウトプットする場面を積極的に取り入れています。

[発表ノート]で編集可能なデジタル教科書を作成

本校で使用するすべてのタブレット端末に『SKYMENU Class』がインストールされています。『SKYMENU Class』の[発表ノート]は、教師も児童もよく使用する機能の一つです。国語科では、主に教師が画像化した教材文を[発表ノート]に貼りつけ、自作のデジタル教科書として利用しています。大型提示装置に投影すれば、教師と児童が、同じ視点を共有しながら授業を行えますから、わかりやすく、効率的な授業が行えます。[発表ノート]で作成しているので、教師が意図する形に自由に加工・編集できる点も魅力です。

言語知識の分野では、【図1】のように[発表ノート]で文字や熟語、部首を自由に動かして考えられる「パズル」のような教材を自作しています。タブレット端末上で動かして考えられるので、児童たちは積極的に取り組んでくれます。

このような教材作りには、児童が「動かせる部分」と「動かせない部分」を簡単に設定できる[背景化]機能が役立っています。デジタル教材の作成には多少の手間はかかりますが、一度作ってしまえば、何度でも繰り返して使えるのが魅力です。今後も手を変え、品を変えて、さまざまな題材の教材を作成したいと考えています。

[マッピング]で物語文を深く読み解く

6年生「カレーライス」の単元で、発表ノートの[マッピング]機能を活用しました。彼らには「物語文を読んで不思議に思ったことから問題を作ろう」という学習課題を与えました。問題を作るという視点をもって物語文を読み、さらに[マッピング]で気づきを入力することで、文をより深く読み取らせたいと考えました。

【図2】は、授業で実際に児童が作成したマップです。文章ではなく、短いキーワードを入力できるため、抵抗感なくどんどん入力していました。入力すればするほど、思考が可視化されますから、日頃書くことを苦手としている児童も積極的に取り組めていました。

学級全体の考えを共有できる[グループワーク]

個人で[マッピング]した後に、学級の友だちと交流しました。このとき、友だちが考えた問題やその答えを見て、気に入ったものがあれば、自分の[マッピング]に取り入れてもよいことにしました。ここで役立ったのが[グループワーク]機能です。問題や答えを交換したいと思った友だちとグループになり、ノート内の問いや答えをコピーして交換しました。自分の考えが友だちの役に立つので、児童の学習意欲も高まりました。

まとめの場面では、学級全員でグループを作りました。全員分のノートを共有し、新規作成した白紙ノートに全員の問題や答えを集約。問題のカテゴリ分けや、「どの問いが主題にせまるのか」といったことを話し合うことができました。

[マッピング]で“心情曲線”を

「カレーライス」では、さらに心情曲線で「ぼく」と「お父さん」の気持ちの変化も考えました。ここでも[マッピング]機能を使ったのですが、少し特殊な使い方をしました。

まず教員機で、[マッピング]の黄色のカードに「いきなりゲームを切られた」「子ども扱いをされる」「お母さんもお父さんの味方につく」といった各段落の代表的な出来事を入力し、それを横一列に並べて教材を作成しました。その教材を学習者機に一斉配付し、黄色のカードを縦軸の「好き」「いやだ・怒る」に沿って上下させて、【図3】のように「ぼく」と「お父さん」の心情の変化を表現させました。カードの中身を読み、上下に移動するだけで自分の考えを表現できるので、心情曲線が苦手な児童も積極的に取り組んでくれました。赤色のカードは、判断した理由を入力するように指示し、本文から読み取らせるように工夫をしています。

これは一般的な[マッピング]機能の使い方ではありませんが、教師のアイデアや工夫次第でさまざまな使い道があると感じました。

ICTは、理想とする授業の実現に欠かせない

「教師が課題を与え、子どもがその課題を解決するために協働し、考えを形成し、アウトプットする。その学習過程のなかで、彼らに必要な能力が自然と身についていく」、それが、私が理想とする授業の姿です。タブレット端末や『SKYMENU Class』は、限られた時間のなかで、そのような一連の学習活動を行う上で、欠かすことのできないツールになっています。とはいえ、まだまだ個人の作業が多く、協働の場面が少ないと思っています。今後は、協働作業による新聞づくりなどを取り入れ、子ども同士で協力して課題解決に向かうような学習活動をさらに充実させたいと考えています。

(2018年10月取材/2019年3月掲載)