授業でのICT活用

学び合い、高め合う子どもの姿をめざして

人見 守之  那須塩原市立豊浦小学校教頭那須塩原市立豊浦小学校は、那須塩原市教育委員会の「ICTを活用した新たな学びの推進事業」の研究指定校です。平成26年度からタブレット端末などのICTを活用した授業研究に取り組まれ、タブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』を活用されています。同校の取り組みを、教頭 人見 守之 先生に伺いました。

平成26年度に全教員と5年生にタブレット端末1人1台配付

本校は、平成26年度から那須塩原市教育委員会が2年計画で実施する「ICTを活用した新たな学びの推進事業」の研究指定を受け、昨年度8月にWindowsのタブレット端末が96台配備されました。5年生全員と全ての教員にタブレット端末が配付されています。学年によって環境は異なりますが、プロジェクタや教材提示装置、電子黒板、大型ディスプレイなども併せて整備され、全普通教室でICTを活用した授業を行える環境が整っています。

教員1人ひとりに配付されたタブレット端末は、職員室で管理し、昨年度5年生に配付されたタブレット端末は、6年生が継続して利用しています。

ミドルリーダーがICT活用を牽引、若手にモデルを示す

本校にタブレット端末が整備されたのは、昨年の夏休み期間中です。夏休みが終わり、子どもたちが登校してくれば、先生方はじっくりと機器に触れて、操作に慣れる時間はありません。休み明け早々からの活用スタートに向けて、タブレット端末の基本操作をはじめ、授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』の使い方などの校内研修を集中的に実施しました。授業が始まってからは常駐のICT支援員と連携して数名の先生方を集めたICT活用の勉強会「ミニ研修」を何度も行いました。

本校のICT活用促進には、常駐のICT支援員のサポートに加え、ミドルリーダーの先生方の活躍が光りました。本校の教員は平均年齢が低いため、ミドルリーダーの先生方には若手の先生を育成しようという雰囲気があり、普段からお互いの授業を積極的に見せ合って、実践交流しています。豊富な指導経験をもつミドルリーダーの先生方が率先してICT活用のモデルとなるような授業をたくさん示してくれたことが、活用イメージがもてない若手の先生方の背中を押すことにつながり、普及を促進してくれたと思います。

各教科で進む『SKYMENU Class』の活用

全体の進捗を把握し、適切な指導を行う

理科「流れる水のはたらき」の単元で、タブレット端末などを活用して、子どもたちが主体的・協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を意識して授業に取り組みました。子どもたちがタブレット端末で実験の様子を撮影し、その映像を何度も見返しながら発見したことをグループで話し合いました。

実験の授業ではグループでの活動が複数同時に進行するので、すべてのグループの状況を机間指導で把握し、それぞれに適切なタイミングで指導することが難しいものです。この授業では『SKYMENU Class』の[学習者機画面一覧表示]機能で、大型ディスプレイに全グループの画面を一覧表示し、進捗を確認しています。つまずいているグループや、本時のねらいと違う方向に進んでいるグループは、画面からおおよそ把握できます。個々に指導に入るべきところを確認して、ポイントを絞って効果的な指導が行えるようになりました。

子どもが主体となり課題解決に向かっていく

タブレット端末を活用した授業を重ねるうちに、大型ディスプレイに投影されている学習者機画面の一覧表示を子どもたちが見に来るようになりました。教員と同じように各グループの状況を見て、自ら情報を取りに行っているのです。そして、「どのように自分たちの実験結果を伝えれば良いのか」と、子どもが主体となって学習のねらいを確認し、思考する姿も見られるようになりました。このような姿は理科にとどまらず、さまざまな教科で見られます。

先生から言われた通りに実験するのではなく、与えられた課題に対して工夫するように取り組ませ、その工夫を見た子どもがさらに工夫を重ねて課題解決に向かっていくなど、主体的に学習課題に取り組み、学び合い、高め合う姿が生まれています。

教科・単元における効果的な活用場面を明らかに

各教科・単元におけるICTの効果的な活用場面を明らかにし、今後整備されていく市内小中学校の活用促進に寄与することが、研究指定校である本校に期待されている役割の一つです。

そのため本校では、授業でICTを活用した記録を蓄積しています。どの教科・単元の、どの場面で、どのような効果があったのか、週の実施記録にICT活用に関するシートを1枚追加して記録します。忙しい先生方が記録しやすいように、シートは可能な限り簡素化し、良かったことだけでなく、課題になったことも記録しています。このほかにも、外国語活動での効果的なICT活用や、授業前や授業後における家庭へのタブレット端末の持ち帰り学習などの研究にも取り組んでいます。

もっとも大事な役割は、来年度以降大きく変化する市内小中学校のICT環境の積極的な活用に向けて、ICT活用の裾野を広げることにあります。そのために、市内のより多くの先生方にICT活用授業を見ていただけるよう、年に2回の授業公開・ICT研修会を行っています。この研修には各学校から1名ずつ参加いただき、ICT活用授業のイメージを共有しています。今後も教育委員会と連携して当市のICT活用の推進に努めていきます。

コンピュータ教室も利用し、情報活用の実践力を育む

当市の整備計画では、小学校5年生から中学3年生の児童生徒に1人1台のタブレット端末が貸与されます。低・中学年では、主にコンピュータ教室の環境を利用して、マウス操作やキーボード入力といった基本的なスキルを身に付けさせるとともに、グループワーク用タブレット端末の積極的な活用を図っています。ICT活用のベースとなる力を十分に身に付けさせ、コンピュータ教室での学びを教室での協働学習にも活かせるようにしています。

さまざまな教科でICT活用授業が進む

理科では、単元のまとめとして、学習したことをコンピュータ教室でプレゼン資料にまとめさせています。学習したことを自分の頭の中だけに置いておくのではなく、単元の終末などで情報を再構築して他者に伝えることで、理解がより深まり、知識が定着します。学び合いの中にICTを積極的に取り入れ、知識・技能の定着を図るとともに、子どもの発達の段階に併せて情報活用の実践力を積み上げていきたいと思います。

マット運動「側方倒立回転

◆ 動画の活用で客観的に動きを把握

3年生では、体育のマット運動でタブレット端末を積極的に活用しています。本時は発展的な内容である「側方倒立回転」に取り組み、グループで1台のタブレット端末と『SKYMENU Class』を活用しました。

子どもたちが自分で想像している演技と、実際の演技はまったく違うことが多いものです。タブレット端末で演技を撮影して、それを見ることで自分の演技の課題を客観的に確認させました。さらにお手本の動画を大型ディスプレイで常時提示しておくことで、子どもたちはそれを参考にしながら練習していました。

撮影した自分の演技とお手本動画を見比べ、違いを話し合う

◆ 授業を効率化し、運動量を確保

練習の途中で、教員機画面に側方倒立回転のポイントとなる4つの動きを「比較表示」で並べて表示させ、その画面を全グループの児童に送信して説明しました。わざわざ集合させなくても効率的に指示ができ、子どもたちの運動量を十分に確保できました。

また、映像で自らの演技を客観的・視覚的に捉えられたことで、子どもたちは課題となるポイントを正しく理解した上で練習に臨めました。従来の授業と比べ、子どもの技能が格段に向上したと思います。こうした授業づくりは、経験豊富なICT支援員と協力して行っています。

「どうすればより上手くできるのか」と子どもが主体となって課題に取り組み、学び合い、高め合う。そのような授業をさまざまな教科・単元で実現したいと思います。

教員機画面を学習者機画面に送信して説明。集合しなくても指示できる。 大型ディスプレイに投影されている学習者機画面の一覧を見に来る子ども

(2015年12月掲載)