授業でのICT活用

思考判断、表現技能、知識理解に高い効果

タブレットPCは、画面に直接触れて簡単に操作できるなどのメリットがあり、学校現場に普及し始めています。熊本県教育委員会は、平成25年度から学力向上に向けたタブレットPCの可能性について調査研究を開始しました。この調査研究は、「ICTを活用した『未来の学校』創造プロジェクト」という名称で、学力向上につながるICT活用の教育効果について調査研究を行いました。本プロジェクトは、ICT活用の先進的な事例や研究成果を広く公表し、熊本県内の教育の情報化をより一層推進することで、確かな学力の向上に役立てることを目的としています。

4月11日、本プロジェクト調査結果の速報として、タブレットPCを活用した実証授業によって、客観テストや意識調査の結果が向上し、タブレットPCの教育効果を明らかにしました。

図1同調査は、タブレットPC等を活用した実証授業による学力向上を検証するため、タブレットPCを整備している熊本県内の公立小中学校8校で実証授業を実施しました。その際、実証授業において、タブレットPCを活用した授業と活用していない授業を実施し、活用の有無によって、児童生徒のアンケート調査や客観テストの結果が異なるかを分析しました(図1)。

小学校では国語、社会、算数、理科の4教科、中学校では国語、社会、数学、理科、英語の5教科を対象とし、単元を前半と後半に分け、1学級を対象とした場合、前半はタブレットPCを活用しない、後半は活用した授業を実施し、それぞれ実施後に客観テストと意識調査を実施しました。複数の学級を対象とする場合、ある組が前半に活用、後半に未活用、別の組が前半は未活用、後半は活用するなど、前半後半で活用の有無を入れ替えて実施しました。

図2昨年9月から今年2月にかけて、8校で110件の授業を行い、タブレットPCを活用した児童生徒延べ881人と未活用の同846人のテスト正答率を分析しました(図2)。その結果、客観テストの正答率を比較すると、「全体合計」で8.5点、「思考判断」で6.2点、「表現技能」で8点、「知識理解」で6.5点、タブレットPCを活用した授業が活用しなかった授業よりも有意に高い結果となりました。

児童生徒向けの意識調査の結果を比較した場合、「楽しく学習することができている」「授業に進んで参加している」「授業に集中して取り組んでいる」「学習したことをもっと調べてみたい」「自分にあった方法やスピードで進める」など8項目で活用した授業が有意に高い結果でした。

このように、タブレットPCを活用することによって、自分の必要な情報や動画を閲覧して、学習に興味を持ちやすくなり、画面操作を試行錯誤しながら繰り返し学習するなどして、学習への理解が深まったのではないかと考えられます。

本プロジェクトでは、教員のICT活用指導力の向上についても、経年的に分析しています。研究推進校の教員93人を対象として、ICTを活用した指導力が向上するかを、プロジェクトの実施前後で調査しました。文部科学省が作成した「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」について、平成25年4月と平成26年2月に回答してもらい、その結果を比較分析しました(図3)。

図3

その結果、研究推進校の教員のICT活用指導力は、5つのカテゴリ全てにおいて、実施前と比較して実施後が有意に高いことがわかりました。全国平均や県平均と比較しても、飛躍的に向上していることがわかります。

このように、児童生徒にとっても、教員にとっても、タブレットPCが学力向上に有効なツールだと裏付けられました。

今後は、研究推進校をさらに増やし、何の授業で、どのような使い方をするのがより効果的なのか、タブレットPCを活用したことで、授業がどう変わったかなど、授業実践の質的な分析を進めていく予定です。また、有効なデジタル教材をどのように整備・準備するか、校内研修に密着した支援体制の構築についても研究を深めていく予定です。

(2014年6月掲載)