授業でのICT活用

ICT活用が前提ではなく、アナログの手法を大事にしながら教科学習の中で「情報活用の実践力」を育む

京都市立一橋小学校は、平成23年から3年間にわたり、課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力、「情報活用の実践力」の育成に焦点を当て、実践研究に取り組まれています。

今年度からは、教科学習の中でタブレット端末の活用にも取り組まれ、「情報活用の実践力」のさらなる育成に臨まれています。同校の研究主任である木村 明憲 教諭にお話を伺いました。

情報を主体的に集め、論理的に思考する力の育成

本校は、平成23年度から情報活用能力、特に「情報活用の実践力」の育成に焦点を当てて校内研究に取り組んでいます。昨年度は「情報活用の実践力」の中でも、「情報を伝える力」に焦点を絞り、すべての教科において情報を効果的に伝える学習活動がどこに、どのようにあるのかということに注目しながら研究を進めました。

今年度は、研究主題を「自らの力で進んで課題を解決する子~情報を主体的に集め、論理的に思考する力の育成を目指して~」と設定。児童の実態を加味しながら、研究教科を「国語」と「算数」に集中するとともに、情報活用の実践力を育成する上で、「情報を集める力」に焦点を絞って研究に取り組みました。

また、「情報を集める力」を「情報を集める手段を適切に選択して情報を集める力」「集めた情報から必要な情報を取り出す(選択する)力」「必要な情報を分類・比較し情報を整理する力」の3つに分けて検討していくこととし、これらの力を育成しやすいと考えられる単元を重点指導単元に設定しました。 

すべての教科・領域で育む「情報活用の実践力」

研究にあたっては、 ①教師が情報活用の実践力を意識して単元・授業を設計・実施すること。②児童が情報活用の実践力を意識して学習したり家庭学習に取り組んだりすること。の2点に重点を置いて研究を進めてきました。 ①教師が情報活用の実践力を意識することについては、「情報教育スタンダード(京都市版)」の情報活用の実践力の規準表を基に、教科・領域を横断して情報活用の実践力を育成するための指導を行ってきました。②児童が情報活用の実践力を意識することについては、情報活用の実践力が児童にわかる言葉でまとめられた「学習支援カード(パワーチェックカード)」を作成・配付し、授業や家庭学習での自主学習の際に活用することにしました。このような「教師も児童も情報活用の実践力を意識する」という研究の取り組みが、児童の情報活用の実践力を高めることにつながっていると実感しています。

「情報教育スタンダード」で系統的に力をつける

「情報教育スタンダード(京都市版)」は、私が京都市委員会に所属しているときに作成し、現行の学習指導要領の全面実施となった平成23年に京都市教育委員会から公開されたものです。

現行の学習指導要領では、教科等の指導を通して「情報活用能力」を育成することが重視されています。「情報教育スタンダード」は、学習指導要領をはじめ、さまざまな実践研究や当市で使用している教科書を根拠に、各学年で育成できる情報活用の実践力を系統的に示しました。前回の学習指導要領の改訂で、これまで中学校の技術・家庭科の情報に関する指導事項として挙げられていた「コンピュータの基本的な操作」を、小学校で扱うことになりました。「情報教育スタンダード」では、各学年で身につけさせたい情報手段の基本的な操作スキルや情報手段を適切に活用して、学習を進めていく力を育成できると考えられる教科・単元を関連表にまとめ、整理しています。

http://www.edu.city.kyoto.jp/sogokyoiku/curri_c/fromkyoto/19_ict_std/index.html
(京都市総合教育センター研究課 情報教育スタンダード 参照)

「学習支援カード」で児童に意識付け

「情報教育スタンダード」を基に作成した学習支援カード「パワーチェックカード」を下敷きとして児童に配付し、授業及び家庭での自主学習で活用しています。カードには、学年ごとに身につけたい情報活用の実践力をわかりやすい言葉とイラストで記しています。

教師は、単元導入時に何を学習するのかをチェックカードを使って確認し、情報教育としてどのような点を意識して学習していくのかを明確にします。学習支援カードは、「ICT活用」「情報を集める」「情報をまとめる」「情報を伝える」の4つの『領域』に分類され、『領域』ごとに情報活用の実践力を具体的な言葉で『項目』として記しています。カードを配付することで、児童が発表する際には「聞いている人の顔を見ながら話をする」などの項目を意識しながら、児童同士で「ここでは聞いている人の顔を見ながら話すことができていてよかったよ」「でも、ここでは下を向いて話していることが多かったから、もう少しここを練習した方がいいね」などと指摘し合っていました。このように、学習支援カードを使って、発表の練習をしたり、情報の集め方を決めたり、ノートをまとめ方の参考にしたりする姿が見られるようになってきました。

パワーチェックシート

http://www.pef.or.jp/01_jissen/07_katudou/download/ikkyou_PCC.pdf
(公益財団法人 パナソニック教育財団 参照)

タブレット1台で行える、「集める」「まとめる」「伝える」の活動

タブレット端末を活用した情報活用の実践力の育成も進めています。

社会科「商店のはたらき」では、単元を通してタブレット端末と授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』を利用しました。この単元は商店街や身近な地域にあるお店(スーパーマーケット)がどのような工夫をしてお客さんを集めているのかを学ぶ単元で、3年生の社会科で単元を貫く問題解決学習が本格的に始まる単元でもあります。今回の学習では、スーパーマーケットに見学に行き、そこで行われているさまざまな工夫を見つけました。児童は発見したスーパーマーケットの工夫をタブレット端末で静止画に記録して情報を集めていきました。また、見学後の学習では、撮影した静止画をもとに見学で発見したスーパーマーケットが行っている工夫をほかの児童に伝えるために、プレゼンテーション資料にまとめました。そして、単元の最後には、まとめた資料を基にスーパーマーケットが行っている工夫を交流し合い、学習を深めました。このような単元の流れでは、情報活用の実践力を高められる学習活動が多く、情報教育を効果的に行えます。タブレット端末を活用する以前は、児童がデジタルカメラに撮った写真データを1台ずつコンピュータに移動させたり、あるいは撮影してきた写真データを印刷して必要な写真を選ばせたりしていました。そして、それらの写真を画用紙などに貼り付けまとめて発表させる、といった単元構想で進めていました。

今回は、グループに1台のタブレット端末と『SKYMENU Class』を活用することで、「集める」「まとめる」「伝える」という問題解決的な学習をスムーズに行うことができました。具体的には、『SKYMENU Class』の[カメラ]機能で、見学で見つけたこと、気づいたことを撮影しました。撮影した静止画は、タブレット端末ではなくユーザ1人ひとりに割り当てられるサーバ上の「個人フォルダ」に保存されます。そのため、静止画のデータをコンピュータに移すといった作業は必要ありません。

タブレット端末上で時系列に表示されている静止画は、学習のねらいに合わせて分類・整理したり、[デジタルワークシート]で簡単なプレゼンテーション資料を作成して、発表したりすることができました。

3年の児童にとって、デジタルカメラからコンピュータへデータを移動することは意外に難しい操作であり、多くの時間を要します。撮影する機器・ソフトウェア、編集する機器・ソフトウェア、発表で大型のデジタルテレビに映し出すのはさらに違うソフトウェア…と機器やソフトウェアが変わってしまうと、教科のねらいを達成するための指導とは直接関係しない、コンピュータなどの操作に関する指導の割合が大きくなります。そうなると、本来大切にすべき教科・単元でねらう目標を、単元の配当時間内で終えることが難しくなってしまうのです。その点、1つのソフトウェアの中で、一連の学習活動を行えたことで、本単元の配当時間内で教科の目標を達成するとともに、情報活用の実践力を育成する指導も充実させることができたと思います。

話し合いながら撮影できるのが利点

「写真を撮る」という行為は、その場面を切り取るということであり、児童の記憶に鮮明に残ります。デジタルカメラと比べ、タブレット端末の画面は大きいため、グループで話し合いながら撮影できることが利点です。まとめの作業に入る前に、各グループで撮影してきた写真を紹介しあう活動を行ったのですが、『SKYMENU Class』の[学習者機画面送信]機能で、大型デジタルテレビにさっと写真を映し出して交流することができました。非常に効率よく学習を進めることができ、タブレット端末のインタラクティブな部分が学びの深まりにつながったと思います。

情報をまとめ、発表に利用した「デジタルワークシート」は、簡単な操作性で自由に文字の色を変えたり、印を付けたりして手軽に活用していました。ICTで資料を編集することは、社会科の教科のねらいから少し離れる部分もあるかもしれません。しかし、伝えたいことを明確にし、そのことを聞き手に伝えるためにどうすれば伝わりやすいのかということを考えて情報をまとめ、発表した力は、今後さまざまな教科で生きてくると考えています。今後もさまざまな単元で、どんどん経験を重ねさせたいと考えています。

「情報活用の実践力」はますます大事に

今後、学校にタブレット端末が導入されていくことで、情報手段の基本的な操作と適切な活用と、情報の「収集」「判断」「表現」「処理」「創造」「発信」「伝達」といった「情報活用の実践力」の視点がますます重要になると感じています。タブレット端末が導入されることで、児童の学びが今まで以上に充実することは間違いありません。しかし、タブレット端末を活用すれば、それだけで児童の学びが充実するというものではありません。教科の目標を達成する上で、「どの活動で、どのような目的で活用させるのか」。また、「児童が活用する際に、どのような効果があるのか」。さらに、「活用する上でどのようなつまずきが生じ、そのつまずきを乗り越えるためにどのような支援が必要なのか」ということを考えてタブレット端末を授業に導入していくことが重要だと考えます。

また、タブレット端末を導入することで、児童が情報手段(タブレット端末)を学習活動に合わせて適切に活用していく力を身につける必要があります。情報手段(タブレット端末)を適切に活用する力が身についていないと、タブレット端末を使って情報を集めたり、まとめたりする活動を行う際に、適切な情報を集めることができなかったり、まとめる際に余計な時間がかかったりしてしまいます。そのような点から、情報手段を適切に活用していく情報活用の実践力を児童に育成することが、ますます重要になっていくわけです。

児童が、タブレット端末を適切に活用することができると、その力と情報を「集める」「まとめる」「伝える」力が結合し、教科の学びをより主体的、そして効率よく充実させていくことができると思います。情報活用の実践力を系統立ててしっかりと育成し定着させていくことが、教科の学びの深まりに大きく影響するのです。

教科指導とICTを組み合わせる力を身につけるために

教師がICTの特性を知り、教科指導とICTをうまく組み合わせる「授業力」を身につけるためには、タブレット端末をはじめとするさまざまなICTを積極的に授業に取り入れ、それらのICTを現在の黒板や指棒などの教具と同じように、一つの教具(ツール)として使いこなす力を身につける必要があると思います。はじめは、ハードウェアやソフトウェアの機能と学習活動を結び付けていくことが困難です。しかし、積極的に活用していくことで「この機能をこの場面でこんなふうに使ってみたい」と機器の機能と学習活動の展開がつながってきます。そのときに、やりたいことを相談できたり、わからないことをサポートしてくれる企業などの支援があれば、授業の新しい発想がどんどん広がり、教師も楽しみながらICTを活用した授業に挑戦することができると思います。

まだまだ多くの先生方にとって、タブレット端末の活用は負担が大きく、むしろ、使わない方が児童の実態に合った授業ができるかもしれません。しかし、さまざまな教師が実践を重ね、研究することで、タブレット端末や授業支援ソフトウェアなどもどんどん良くなっていくものと期待しています。そういった積み重ねを経て、将来的には今の黒板や指棒、筆記用具やノートと同じように「あってあたりまえ」の教具(ツール)になっていくと思っています。

学校紹介
京都市立一橋小学校

京都市立一橋小学校

明治2年10月21日に「下京第31番組小学校」として開校、今年度で創立144年目を迎える。周辺には、三十三間堂や泉涌寺などが佇み、伝統文化が息づいている。今年度に閉校し、平成26年4月より同校と近隣の小学校2校、中学校1校が統合して5・4制の小中一貫校「京都市立東山泉小中学校」として新たにスタートする。東山泉小中学校の開校に向け、同校では、教科学習の中で情報活用の実践力を系統的に育成するための小中一貫カリキュラムの開発に取り組まれている。

http://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=108805

参考サイト

  1. http://www.pef.or.jp/01_jissen/07_katudou/a07_report_h24_2.html
  2. http://www.pef.or.jp/20_diary/2014/pdf/ikkyo_140110_01.pdf

(2014年2月掲載)