授業でのICT活用

「ことばの力」の育成とタブレット端末の活用

タブレット端末の活用が言語力の育成に大きく寄与している。中でも「映像とともにことばで伝える」「容易にブラッシュアップできる」「思考を可視化する」の3点においてタブレット端末の活用効果が明らかになった。

1、はじめに

亀岡市立南つつじヶ丘小学校は、平成20年度より、教育の情報化に係る研究を進めてきた。これまで、ICTは児童の理解を深めるために活用され、特に教員が活用する場面が多くみられた。研究を進める中で、活用の主体が児童に移り、児童が思考を深め表現することにも効果的であることが確かめられた。

言語活動を充実させるためにも、ICTを効果的に活用し、思考力・表現力を育成し伝え合う力(コミュニケーション能力)を高めることに努めている。

本稿では、そのICT活用効果の中で、タブレット端末の活用が言語力の育成に寄与している特徴的な次の3点について、事例をもとに解説していきたい。

  • 「映像とともに『ことば』で伝える」
  • 「容易にブラッシュアップできる」
  • 「思考を可視化する」

2、映像とともに「ことば」で伝える

国語科はもとより、様々な教科・領域の学習で、児童が映像とともに、「ことば」で伝える活動が多く行われている。その際、タブレット端末に取り込んだ映像に、書き込みをしたり拡大したりし、伝えるために効果的な映像を焦点化し、話すことができる。

実践例:4年生 社会科 「見学したことを伝えよう」

クリーンセンター見学で記録した、画像や動画を、タブレット端末で閲覧することで見学の体験を想起し、ワークシートに身近な文章にまとめた。

その後、その文章をもととなった映像とともに、同じ班のメンバーに伝え合う活動をおこなった。児童は、映像を、拡大縮小したり、書き込みをしたりしながら、映像と「ことば」を対応させながら、伝えていた。

その後の話し合いも、映像をもとに質問をしたり、同じ映像から違う観点で意見を言ったりと、映像があることで話し合いが活性化した。

実践例:4年生 理科 「秋の自然」

記録した写真から気づきを話し合っている様子グループで植物を観察し、様子をタブレット端末で撮影した。春と夏にも同じ場所の観察をしており、その写真と比較しながら、その場で季節ごとの生き物の変容を話し合った。また、撮った映像を拡大移動して映し、焦点化することで、話し合いがスムーズに進んだ。

この後、教室に帰り、電子黒板に撮影した写真を投影し、観察したことをクラスで共有した。

3、容易にブラッシュアップできる

文章で表現したり、新聞やリーフレットにまとめたりする「書く」活動は、言語活動の充実には欠かせない。その際、完成したものを相互評価し、ブラッシュアップすることをよく行う。一度紙に書いたりレイアウトしたりしたものを、修正することは、容易ではない。しかしICTを活用して制作したものは修正が容易にできる。それにより何度も納得いくまで修正する姿が見られるようになる。

実践例:5年生 理科「情報を生かすわたしたち」

自分たちの作った作品を再検討している様子様々なメディアの特性を学習したのち、情報を主体的に扱うためにどのように工夫していけばよいかの提案を、プレゼンテーションソフトでまとめた。3人1組のグループで作成していく途中で、「画像と『ことば』があっているか」「発信者の意図が伝わるか」「情報を発信するときに気をつけることが守られているか」の観点で、プレゼンテーションの見直しを行った。

社会科の学習で習得した知識を、言語化し、それをもとに話し合いが進んだ。

実践例:委員会活動「音楽発表ニュース」

話し合いながら映像を編集している様子委員会活動の放送委員会では、大きな学校行事ごとにニュース番組を制作している。タブレット端末1台で、撮影、編集、公開までを行うことができる。

仮編集の後、「自分たちが伝えたいことが伝わっているか」「より効果的に伝えるにはどうすればよいか」「低学年にも分かりやすい番組になっているか」の観点で、話し合いながら本編集を行った。

映像の長さをかえたり、テロップをいれたりと試行錯誤をしながら編集をすることで、話し合いが活発になり、言語活動が充実した。また言語活動が充実することで、より伝わりやすいニュース番組を作ることができた。

4、思考を可視化する

グループで課題に沿って話し合いをするときに、タブレット端末に資料を映し、相互に書き込みをしながら話すことを行っている。「ことば」だけでなく資料の一部を拡大したり、書き込みをしたりすることで考えの「見える化」につながり、話し合いが活性化した。

実践例:6年生 国語科 「この絵 私はこう見る」

絵を見て感じたことや想像したことをグループで交流タブレット端末に取り込まれた映像を見て自分なりの絵の見方を話し合う。その際自分の見方の根拠となる部分を拡大したり、視線や配置を図示したりして、自分の考えを可視化し表現することを行った。「ことば」だけでは伝わりにくい考えを共有することに大きく役立った。

5、まとめ

本稿で紹介した5つの事例は、どれもタブレット端末を活用した協働学習になっている。これからも、協働学習において、タブレット端末を媒介としてコミュニケーションが生まれるように授業をデザインし、言語活動を充実させていきたいと考えている。

京都府では「ことばの力」について以下のように定義付けています。
「ことば」を運用するのに必要な能力

  1. ①言語をとおして知識や技能を理解する力
  2. ②言語によって論理的に考える力
  3. ③言語を使って表現する力

(学習情報研究2013年5月号から一部編集して掲載)
(2013年11月掲載)