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Close-up 端末活用の推進と運用課題沖縄県石垣市教育委員会 GIGAステッカー / 学級でルールづくり / 子どもが年度末に端末点検 端末を大切に扱う意識の醸成に取り組む

沖縄県石垣市では、児童生徒が1人1台端末を日常的に活用する姿が広がっています。同市の活用状況や運用課題について、同市教育委員会 学校教育課 情報教育推進係の村山 信太郎 係長、比嘉 幸宏 主任、西垣 春香 ICT支援員、王滝 将史 ICT支援員に伺いました。(2024年2月取材)

沖縄県石垣市教育委員会 学校教育課 情報教育推進係

村山 信太郎係長

比嘉 幸宏主任

西垣 春香ICT支援員

王滝 将史ICT支援員

学年や教科を問わず、毎日端末を活用

当市は八重山諸島の石垣島と尖閣諸島を市域とする沖縄県の市です。

ICT活用基本方針「石垣市GIGAスクール構想『I-プラン』」の基、1人1台端末の効果的な活用を推進。「個別最適な学び」「協働的な学び」の一体的な充実や「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を通して、自律した児童生徒の育成をめざしています。児童生徒が端末を活用する上で、端末の破損や故障による修理は避けられないと考え、充実した保証内容を備えた端末「Sky安心GIGAタブレット」を採用しました。

1人1台端末の運用から3年。これまで学校の先生方、ICT支援員が連携を密にして活用を推進してきたことで、今ではほぼ毎日、学年や教科を問わず端末が活用されている状態です。児童生徒が写真や動画を撮影して記録したり、プレゼンをしたりする姿が当たり前になっています。

さらに端末はオンラインでもオフラインでも使えるので、校内外を問わず活用が進むほか、毎日持ち帰りする学校も増えています。

▲ すべての学年で、県平均より高い端末活用率
青が石垣市の値、オレンジが沖縄県の平均値を表す。石垣市の小学4年から中学3年までのすべての学年で沖縄県の平均を超えている

活用の高まりに比例し、端末の破損や故障が増加

活用の高まりと比例して、端末の破損や故障による修理の数も増えています。2023年度は端末本体が約500台、キーボードは2,000台弱が壊れています。キーボードの修理が多いのは、タイピングによってキートップが外れることが原因です。

こうした修理は保証で対応できるものの、保証会社に修理端末を引き取ってもらってから児童の手元に戻ってくるまで2~3週間ほど時間がかかる場合があります。今、端末はあって当たり前の道具ですから、修理の間、児童生徒の学習が止まってしまうことが課題でした。保護者から「今すぐ直せないか」と相談がくるほどでした。

このような状況から、2022年度に200台の予備機を追加購入し、できるだけ早く児童生徒に代替端末を渡せるように改善しています。

とはいえ、安定的な運用には破損や故障の件数を少なくすることが理想ですし、児童生徒の「モノ(端末)を大切に扱う」意識の醸成は必要です。端末活用が十分に浸透してきた今だからこそ、学校の先生方、ICT支援員と連携して取り組みを進めています。

年度末、児童生徒が端末を点検

端末の破損や故障を減らすための仕組みづくりや啓発は、運用当初から進めていました。その一つが、児童生徒による顛末書の作成と提出です。修理を依頼する場合、児童生徒自身が顛末書を作成して学校に提出するのです。端末が壊れるのは仕方のないことですので、壊れた後に「なぜ壊れたのか」を振り返らせています。継続することで大切にする意識が高まりますし、顛末書の内容を集計して故障や破損を防ぐための対策づくりに役立てています。例えば、端末を持ち帰る際に、ランドセルに一緒に入れていた水筒から水が漏れ、端末が水没するケースが多数見られたので、速やかに対策を周知しました。

端末のパスワード管理やアップデートも、児童生徒が行います。アップデートは、通知から1週間以内に行うこととし、もしできていなければ、販売業者の協力を得て一斉にアップデートをかけます。

加えて年度末には、児童生徒が自分の端末や保護ケース、充電器、キーボードなどに不具合や破損がないかなどを確認する「GIGA端末たな卸し」の時間を設けています。それを経て、春休みには自宅に端末を持ち帰ってもらい、そのまま進級、進学をします。例えば小学6年の児童は、端末を持ち帰り、そのまま中学校に進学するのです。

「GIGAステッカー」で端末を大切に扱う意識を高める

▲ GIGAステッカー
学校の校章(上)や沖縄県の県章(左下)、石垣市の市章(右下)でデザインされている。端末やキーボードに貼り付けている

このほかにも学校独自の取り組みも広がっています。例えば、年度初めのオリエンテーションでは、端末が沖縄県や国の補助金で整備されていることや「借りもの」であることを児童生徒にしっかりと伝えています。ある学校ではその意識を継続してもってもらおうと、独自に「GIGAステッカー」を作成。生徒の端末に貼り付けています。

学級で端末活用、運用のルールづくり

各教室で端末活用のルールをつくる取り組みも広がっています。教育委員会や学校で、必要最低限の端末活用ルールや運用の方向性は示していますが、その上で学級のルールをつくっています。ルールに対する児童生徒の当事者意識が高まり、効果的です。学期末には、自分たちの活用を振り返って反省をしている学級もありました。

また「GIGA端末持ち帰りルール」や低学年の児童や保護者に向けて、端末の扱い方を分かりやすく説明する資料も作成。保護者説明会や授業参観で配付しています。「両手で端末を持つ」「直射日光に当てない」「食卓に置かない」といった基本的なことをしっかりと伝えています。

▲ 低学年の児童と保護者向けに作成、配付された資料の一部
資料は9ページで構成されている。基本的な端末の扱い方や持ち帰る際の注意点、安全な使い方、故障したときの方法などを分かりやすく紹介している

継続した取り組みが重要

このような取り組みを継続したかいがあって、特に低学年の児童を中心に端末を適切に、大切に扱おうとする意識が高まっています。今後も児童生徒が安心して学習できる環境を実現するために、学校や販売業者との連携を図り、取り組んでいきたいと思います。

(2024年4月掲載)