教育情報化最前線

大阪府豊中市立刀根山小学校 連絡帳の電子化 / 発表ノートの教材づくり / 教材の共有 教員の負担軽減を意識した「無理なく」「楽しい」ICT活用へ

大阪府豊中市立刀根山小学校は1人1台端末の整備以降、「無理せず」を合言葉に学校全体で活用を推進してこられました。2023年度には、大阪府教育庁「スクール・エンパワーメント推進事業」のスマートスクール実現モデル校に指定。先生方が主体的に、さまざまな『SKYMENU Cloud』の活用を生み出されています。その取り組みについて、山地 輝宜 校長、梅川 尚彦 教諭に伺いました。(2023年10月取材)

合言葉は「無理せず」。
ICTで、先生たちが元気に働ける職場に

山地 輝宜校長

大阪府豊中市立刀根山小学校

スマートスクール実現モデル校の指定前から、働き方改革を推進

本年(2023年)度に創立54年目を迎えた本校は、全校児童731名、教職員55名という大規模校です。私は2020年度、コロナ禍の中で本校に赴任しました。手探りながら、職員会議を減らしてオンラインに切り替えたり、校務支援システムを活用して情報共有したりといった教職員のICT活用を進めていたなかで、1人1台端末が整備されました。

ゆくゆくは子どもたちが1人1台端末を文房具のように活用できるようになる必要がありますが、そのためにまずは、すべての教職員がICTを活用できなければなりません。しかし、すでに子どもたちのために精いっぱい頑張っている先生方に、ICT活用をさらなる負担にしたくありませんでした。

というのも、私は教育委員会で教員の人員配置などを担当する教職員課に在籍した経験から「先生方が元気に働ける職場にしたい」という思いを持って本校に赴任し、こうした思いを先生方にも都度、共有してきました。ですから、本校での合言葉は「無理せず」です。

そこで、無理せずICT活用を進めるため、2022年度に校務分掌の見直しを行いました。1人1台端末を授業で活用するのならば、教科研究とICT活用を一緒に行っていく必要があると考え、「ICT・教科研究推進委員会」を立ち上げました。そして1人の教員がたくさんの役割を担うことを辞め、基本的に一人一役に専念する仕組みを作りました。

ICT・教科研究推進委員会をつくり、教科とICT活用の研究を一体で行う

「無理せず」と併せて、何事も「チームで取り組んでほしい」という思いも伝えてきました。担任だけが抱えるのではなく、何か問題があれば同じ学年の担任同士で相談して進めることも、校内に浸透してきていると思います。

ICT・教科研究推進委員会においても、ICT教育推進担当である梅川先生を中心に、各学年から1名ずつ参加する体制になっています。担当者は学年の中で挙がってきた課題を推進委員会で共有して話し合ったり、推進委員会での情報を持ち帰って共有したり、学年ごとにチームとなって進めることができています。

また本校は、ICTに強い先生が突出して活用するのではなく、苦手な先生も含めて学校全体で活用を進めようという考えです図1。推進委員会という場をつくったことで、一丸となって取り組めていると思います。

こうした取り組みを進めるなかで本年度、大阪府教育庁「スクール・エンパワーメント推進事業」スマートスクール実現モデル校に指定されました。指定によって教員の加配を受けられ、本年度から梅川先生にはICT教育推進担当に専念してもらっています。

図1教職員がチームでアイデアを出しながらICT活用を推進する「創出型」をめざす

学校公開・基調提案資料より

管理職の役割は、教員が子どもに関わる業務に専念できる環境をつくること

2023年度2学期の大阪府・市の端末活用に関する児童用アンケートでは、すべての項目で、肯定的な回答が85~96%という結果になりました。これは、日ごろの教室での活用とともに、職員室でのICTに関する会話や教え合いの成果だと思います。そして、先生方の創意工夫によって、ICTならではの学びや、主体的・対話的で深い学びも少しずつ生まれてきており、今後はそれをさらに、広げていきたいと思います。ですが、あくまでも「無理せず」というスタンスを変えるつもりはありません。私の役割は、先生方が子どもに関わる業務に専念できるように、しっかりサポートしていくことです。

先生方は大変前向きにICT活用に取り組んでくれています。このモチベーションを保ちながら、新たに着任された先生も巻き込みながら、さらなる活用推進に取り組んでいきたいと思います。

先生が「主体性」「創造性」を発揮し、
楽しみながら授業をつくれるように

梅川 尚彦教諭(ICT教育推進担当)

大阪府豊中市立刀根山小学校

推進担当の役割は、先生がICTで実現したいことをサポートすること

校長の話にあるように、本校はみんながアイデアを出し合い、学校全体でICT活用を進めていく考えです。ですから、ICT教育推進担当として、私が前に出てICT活用を進めていくのではありません。先生方1人ひとりが「ICTを使って何がしたいか」を考え、その実現に向けて共に取り組んでいく役割だと考えています。

ICT活用のスキルアップに向けて、校内で定期的にミニ研修会を開催しており、その内容についても先生方に、自ら活用を考えてもらえるよう工夫しています。例えば先日の研修会では、『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]を取り上げました。まずは、簡単なゲームをして[気づきメモ]の機能に触れた上で、「どんな使い方ができそうですか?」と投げかけて先生方に考えてもらいました。「このように使ってください」ではなく、先生方に「ああしたい」「こうしたい」と、発想を膨らませてもらえるような研修をめざしています。そして、先生が興味のあるツールがあれば、挑戦できるようしっかりサポートし、先生の「やりたい」という思いを大切にしています。

「コスト(時間)を意識して楽に楽しく」のマインドにぴったりな『SKYMENU Cloud』

先生方の挑戦をサポートしていますが、日々の活用にはまず、『SKYMENU Cloud』を使うようお願いしています。本校では無理せずICT活用を進めるために、「コストを意識して楽に楽しくICT活用」というマインドを掲げています。『SKYMENU Cloud』は、操作が分かりやすく手軽に使うことができ、このマインドにぴったりなツールだからです。

私どもは学校における“コスト”を、時間だと捉えています。多くの時間をかけてICTを活用した良い授業をしたとしても、それで燃え尽きて「もうICTを使いたくない」となってしまっては元も子もありません。短時間でツールの活用を習得し、授業に生かせると次も使ってみようという気持ちになると思います。本校がめざしているのは、低コストでありながら、十分に満足を感じられる、持続可能な活用です。

手軽にICT活用できた成功体験から、さらなる活用を自ら探究する

校内のミニ研修会は1回30分と、“低コスト”を意識した設定です。そして、同じ内容で複数回行い、無理せず参加できる環境をつくっています。

また、ICT活用は“コスト削減”にもつながっています。例えば、端末の持ち帰りを機に、すべての学級で[電子連絡板]を連絡帳として活用し始め、子どもたちに連絡帳を書かせる時間を削減できました。そして日々の連絡に加え、学級通信も[電子連絡板]で確認できるようにするなど、創意工夫する先生も出てきています図2

図2すべてのクラスが[電子連絡板]を連絡帳として活用

そのほかにも、『SKYMENU Cloud』の[発表ノート][ポジショニング]を活用すれば、手軽に考えを表現したり、共有したりすることができます。授業をスムーズに進められ、プリントや教材などの準備にかかる時間も削減できました。

これまで日々の授業準備に多くの時間をかけていた先生も、ツールについて理解し、操作を習得しさえすれば、業務負荷の軽減につながることを実感しています。そして、手軽にICTを授業に活用できたという成功体験により、活用が楽しくなり「このツールを使って何ができるだろう」と、さらなる活用を主体的に探究していく良い循環ができています。

さらに現在、進めているのが教材の共有です。「Microsoft Teams」に学習ファイルの格納場所を設定しているほか、『SKYMENU Cloud』でも受け渡し形式で教材を保存するなど、学校全体で共有、さらなる“コスト”削減につなげています図3

図3[発表ノート]の教材を受け渡し形式で保存し、[グループフォルダ]で共有

研究テーマや観点は発想を広げるきっかけ。教員の主体性や創造性こそ重要

本校のスマートスクール実現モデル校としての研究テーマは「わかる・できる・つながる1人1台端末をSMARTに活用した対話的・協働的な授業づくり」です。テーマをあえて幅広く設定しているのは、先ほどからお話ししている、先生方に主体的に考えてほしいという思いの表れです。

ですから、ICT活用の「観点」として、「SMART」というキーワードを提示しました。先生方はこの観点から発想を広げて、授業づくりを行っています。

ICT活用の観点を示すキーワード「SMART」

Specific[明確に] 1人1台端末を活用することで学習者にとって学びが具体的で分かりやすくなる
Measurable[測定可能] 学習者1人ひとりの学びの達成状況が分かる
Achievable[達成可能] 学習者が1人1台端末を活用して学習目標を達成する
Relationship[関係性] 学習者同士が関係性の中で学ぶ
Timely[適時に] 学習者が1人1台端末を必要性があるときに使っている

「SMART」の中で、もっとも大切にした観点が「Timely」です。ICTを活用推進していくと、何にでも1人1台端末を使い、「端末を使うこと」が目的になってしまうことがあります。ですが大切なのは、先生も子どもも、「この学習で何を実現したいか」というねらいに向けて、端末やノート、プリント、さらに端末を使う場合にはどのツールを使うかといったことを選択できるようになることです。ですから先生方には、子どもたちに複数の学び方を提供することを意識してもらっています。

物事の本質を理解して適切に対処できる「汎用的な力」を育みたい

そのためにはツールの本質を理解することが大切だと考えています。「このツールは『共有』に便利」「こちらは『配付・提出』」というように本質を捉えていれば、実現したい学びに向けて、ツールを組み合わせて活用してみようといった発想が広がっていくのだと思います。先生方にも子どもたちにも、さまざまなツールを汎用的に使える力を身に付けてほしいと思っていますが、それは一足飛びで実現できるものではありません。

そこで、役立っているのが『 SKYMENU Cloud』なのです。[発表ノート]は、個人でまとめるだけでなく、1つのノートを共有して協働学習にも活用できるなど、さまざまなアレンジが可能で、発想を広げやすい機能だと思います。そのほかにも、体育の授業などで撮影した動画をスムーズにアップロードしたり、提出が簡単にできたり、先生も子どもも使いやすいツールだと感じています。

今後も、『SKYMENU Cloud』を使って「楽に楽しくICT活用」を体現しながら、徐々に汎用的に使える力を身に付け、1人1台端末の活用を日常の景色にしていきたいです。

▲5年算数:[発表ノート]で台形面積の求め方を考え、共有
▲4年社会:[発表ノート]の思考テンプレートで情報を整理
豊中市立刀根山小学校のICT教育に関わる取り組みは、
以下のWebページで紹介されています。

▼「スマートスクール」特設ページ
https://www.toyonaka-osa.ed.jp/cms/toneyama/index.cfm/1,0,44,html

(2024年2月掲載)