教育情報化最前線

茨城県緑桜学園 那珂市立芳野小学校 1人1台活用の壁「持ち帰り」「家庭学習」 「連絡帳のデジタル化」で持ち帰りを常態化

茨城県の緑桜学園 那珂市立芳野小学校は、2021年5月から児童1人1台端末の活用をスタート。同年の夏休みから早速家庭への端末持ち帰りを始め、9月からは新型コロナウイルスの感染拡大に伴うオンライン授業を経験。以降、児童の端末の持ち帰りを継続しています。同校の家庭学習や長期休業期間中の1人1台端末活用について、仲田 祐也 教諭にお話を伺いました。

仲田 祐也教諭

緑桜学園 那珂市立芳野小学校

オンライン授業をきっかけに[電子連絡板]による情報共有が定着

昨年の8月以降、本校ではすべての児童が1人1台端末を家庭に持ち帰っています。活用状況や活用方法は、学年、学級によって異なりますが、[電子連絡板]で学校、児童、保護者との連絡事項を共有するという使い方は共通しています。自宅に端末を持ち帰り、児童が自ら[電子連絡板]に書かれた連絡事項を確認したり、保護者と一緒に確認したりすることが当たり前になっています。

[電子連絡板]を活用するきっかけになったのは、昨年度に茨城県が一斉に実施したオンライン授業でした。児童が学校に登校しないため、従来の紙の連絡帳を使った連絡ができなくなりました。そこで代行手段として用いられたのが[電子連絡板]でした。この経験により、本校の多くの教員はデジタルによる情報共有にメリットを感じ、オンライン授業の期間が終わってからも継続して活用しています。

低学年や特別支援学級では、保護者も情報を確認することを想定し、連絡事項だけでなく保護者へのメッセージを含めて発信しています。高学年では、児童が自ら情報を確認することを想定して週や日の予定、時間割などを詳細に発信しています図1

6年生の[電子連絡板]。週や日の予定、時間割などが掲示されている
図16年生の[電子連絡板]。週や日の予定、時間割などが掲示されている

[電子連絡板]は、低学年を担当する教員からの評価が特に高く、業務効率化につながったと言います。例えば、低学年の学級では、以前は教員がまとめた連絡事項のメモを人数分印刷し、それを1人ひとりの連絡帳に貼り付けていたそうです。1クラス35人程度の児童がいますから、貼り付ける作業に給食時間や休み時間を費やさざるを得なかったそうです。

ランドセルの中身を見直す ルールに沿った「置き勉」OK

[電子連絡板]の活用効果は、業務効率化にとどまりません。保護者からも「連絡事項が分かりやすい」「大切なことが正確に伝わる」と好意的な反応が返ってきています。ちなみに、紙の連絡帳は廃止していません。学校と保護者間で直接連絡が必要な場合に活用しています。

なお[電子連絡板]の活用を日常化するにあたっては、児童が毎日端末を持ち帰れるように、ランドセルの中身も見直しています。児童が毎日家に持ち帰るのは、タブレット端末とオンライン授業になった際に必ず実施する国語と算数の教科書、そして宿題や家庭学習に使用するもののみとしています。それ以外のものは学校に置いて帰ってもよい、つまり「置き勉」をしても構わないというルールです。

家庭における端末活用ルール、児童と保護者で決め、守る

[電子連絡板]の確認は、家庭での端末活用としては最低限であり、学習のためであれば端末を自由に使って良いことにしています。とはいえ、何でも自由にできるというわけではありません。例えば、オンライン授業の期間以外はフィルタリングソフトウェアで、YouTubeなどのWebサイトを閲覧できないようにしています。どうしても閲覧が必要なWebサイトがあれば、本校では情報担当の教員や私が市教委に依頼し、ホワイトリストに追加してもらっています。

端末を使用する上での注意事項や最低限のルールは、端末を児童に渡す際に各家庭に配付しています。それらに加えて家庭ごとに、家で端末を利用する際のルールを決めてもらっています。家では1時間しか使わない児童や夜7時以降は使わないという児童もいます。児童によって差が生じますが、各家庭で生活リズムは異なりますから、学校から一律に使い方を決められるものではないと思います。

各家庭のルールは、児童と保護者で決めて、それを守る。学校でのルールは、教員と児童で決めて、それを守る。「自分たちで決めたルールだから、自ら守る」という考え方を基本にしています。

ルールを守らない利用やいたずら、事実を確認し、情報モラル指導を徹底

ルールを守らない利用やいたずらによるトラブルはあります。例えば、夜遅い時間まで端末を使っていると思われる児童がいました。そこで実態を正確に把握するために『SKYMENU Cloud』の[利活用ログ]で当該児童の操作記録(ログデータ)を確認図2。実際に深夜2時、3時まで端末を使っており、その事実を基にして、個別に指導をしました。

[利活用ログ] 『SKYMENU Cloud』を利用した際の記録を、ログとして取得できる
図2[利活用ログ] 『SKYMENU Cloud』を利用した際の記録を、ログとして取得できる
※画面はイメージです
取得可能な項目
  • ログイン情報(ログイン・ログアウト)
  • 授業開始 / 終了の履歴
  • コンテンツ利用履歴
  • 連絡板の閲覧 / コメント履歴 など

また、友だちのユーザID、パスワードで勝手にログインをして、いたずらをするという事案もありました。直ちに全学年に対して情報モラル指導を行い、なりすましやネット上に他人の悪口を書き込むことについて、児童たちと考えました。端末活用にトラブルはつきものです。適切なタイミングで、適切な情報モラル指導を行うことが大切だと考えています。

家で音読を動画で撮影し、授業でアドバイスを交換

図3ペアの児童の音読動画を聞き、[発表ノート]でアドバイス

表1は、本校が児童に取り組ませている端末を使った家庭学習の一部です。例えば国語では、宿題で音読を練習させ、音読動画を撮影させています。音読の動画は、ペアの児童同士で相互に確認し、[発表ノート]に良い点や改善点をまとめて[提出]。[提出箱]を閲覧してアドバイスを確認するという取り組みをしています図3。動画があることで、きちんとしたアドバイスができることに加え、撮影をし忘れてしまうとペアの児童に迷惑がかかるので、全員がきちんと音読の宿題をしてくるようにもなっています。

表1の上から4つ目の項目に「持ち帰ったアサガオや野菜の成長デジタル日記」とありますが、例えば生活科では1学期にアサガオや野菜を植えて、夏休みには家に持ち帰って観察をします。そこで1学期から[発表ノート]で成長デジタル日記をつけさせ、夏休み中も家庭で継続して記録させています。また、昨年度のオンライン学習期間中には教員ができる限り育てている植物の様子を撮影して、[発表ノート]で[配付]しました。教員から[配付]されると、「僕の家では」「私の家では」と、今度は児童からどんどん画像が送られてきました。

表1児童が端末を持ち帰って取り組んだ内容の一部
取組 ねらい 効果

音読を動画で撮り、[発表ノート]で相互評価。

音読を動画で撮影し、表現の工夫や声の大きさ等がよいか確認する。

客観的に音読を確認し、よい点や改善点を把握し、次の音読に生かせる。

リコーダー演奏を動画で撮影し、[提出]する。(テスト)

演奏を客観的に見て、次回の演奏に生かす。

教員は評価に生かせる。児童は納得がいくまでテストができたり、客観的に演奏を鑑賞し、改善点を見い出したりする。

家庭のごみ出しの様子や集積所を撮影し、授業で使用([発表ノート]にまとめる)。

ごみを処理する事業について、見学・調査や資料を通して調べたことをもとに、処理の仕組みや工夫、自分たちが気を付けることを写真や図、言葉等で表現する。

ごみ処理を身近に捉え、自宅のごみがどのように処理されているかを意識する児童が増えた。

  • 家の周りで〇〇発見
  • 持ち帰ったアサガオや野菜の成長デジタル日記([発表ノート])

日常生活と教科の学習を関連付け、意欲を高めたり、学習内容の理解をさせたりする。

学習したことを実生活にもつなげることができる。

  • 割り算プログラムで自主練習(3分間)
  • ローマ字入力練習

毎日継続して実施することで知識・技能の定着を図る。

意欲的に学習に取り組んでおり、技能の定着が見られている。

さらに、これまでは家庭に持ち帰ったアサガオなどを枯らしてしまった児童は、そこで学びが止まっていました。この活用では先生から送られてくる[発表ノート]や[提出箱]を見れば、友だちの日記から成長の様子を学ぶことができます。ちょっとしたことですが、誰一人取り残さない学びを実現できる良い使い方だと思います。

夏休みの各種募集要項をPDFにまとめて[マイページ]に掲載、効率化へ

夏休みには、さまざまな作文やポスターのコンテストがあり、募集要項の用紙をたくさん配付していました。10枚以上あるプリントを人数分印刷して、児童に渡していましたが、低学年では、教員が児童分のプリントを1つにまとめて配付する必要があり、手間がかかっていました。

そこで、募集要項や応募票などの資料をダウンロードできるWebサイトをまとめたPDFを作成。作成したPDFを[マイページ]の[Webページのリンク]に掲載し、家庭から応募できるようにしました。もちろん家にプリンタがない児童もいるので、何枚か紙で用意しておいて、持ち帰れるようにしました。夏休み前に児童が持ち帰る資料が減りますし、教員の手間の削減にもつながります。

家庭学習での端末活用 児童が端末に慣れていることが前提

児童に「家庭学習でどのように使いたいのか」を聞くことも大変有効だと思います。私の学級では、児童から「朝のスピーチで好きなものを写真で紹介したい」という声が上がり、以後[発表ノート]などを使ったスピーチが定番になりました。児童の発想は柔軟ですから、なるほどと思わされる案がきっとたくさん出てくると思います。

とはいえ、学習のための前向きな使い方は、児童が端末活用に慣れ、ルールを守って使えるからこそ出てくるものだと思います。まずは学校のルールの下で端末を使う機会を十分に取り、慣れることが重要だと思います。それができれば家庭学習でも上手に、そして効果的に使えるようになると考えます。

(2022年10月取材 / 2022年12月掲載)