教育情報化最前線

専修大学松戸中学校・専修大学松戸高等学校 ICT活用の利点を発見しながら試行し、楽しんでスタートすることをめざす 中学校・高等学校で『Sky安心GIGAパッケージ』910台の活用をスタート

専修大学松戸中学校・高等学校では、文部科学省の「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備事業」を受け、2020年11月に中学校、2021年4月に高等学校へ生徒1人1台のタブレット端末を導入。それらに、Sky株式会社が提供する『Sky安心GIGAパッケージ』を採用しました。整備の経緯や商品選定時の検討、導入後の活用などについて、中学校の中村 吉伸 教頭と高等学校の北川 有明 教頭にお話を伺いました。

中村 吉伸

専修大学松戸中学校 教頭

北川 有明

専修大学松戸高等学校 教頭

ICTワーキングを発足し、環境整備や活用推進に取り組む

本校は専修大学の付属校として、建学の精神である「報恩奉仕」「質実剛健」「誠実力行」に基づいた教育を行い、国際社会を担うリーダーの育成に努めるとともに、地域の発展に貢献するため、高等学校は1959年に、中学校は2000年にそれぞれ開校しました。現在は「社会に貢献できる人材」「国際社会で活躍できる人材」を育成すべく、力を尽くしています。

高等学校では25年以上前から、中学校では開校当初からコンピュータ教室を活用してきましたが、さらなるICTの利活用を促進するため、2015年に「ICTワーキング」を発足。ICT設備導入計画の立案や各教科のICT推進担当者による会議などを行いながら、電子黒板や教員用のタブレット端末の導入などを進めてきました。

2016年以降、サーバや無線LANといったハード面の整備・増強を進める一方、一斉での教員研修や教科ごとの公開授業を通じた相互研修などにも取り組み、教員用タブレット端末と電子黒板を活用した授業は、日常的に行われるようになってきました。

教員によるICT活用が進んだことで、生徒によるタブレット端末の活用についても検討を始めた2019年末、文部科学省から「GIGAスクール構想の実現に向けた環境整備」が示されました。それを受けて翌2020年2月に「教育力向上推進ワーキング」を発足し、本校におけるGIGAスクール構想に向けたICTの活用について、本格的な検討に入りました。

生徒たちに必要な環境を、いち早く整えることを第一に

当初は、数か年の計画で整備を行うスケジュールでしたので時間的な余裕もありましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う臨時休業などもあり、整備計画は大幅に前倒しされることに。特に義務教育である中学校については、文部科学省より整備に関する補助金支給の期限が示されたことから、本校は「生徒にとって必要とされる環境を、いち早く整えること」を基本方針として、整備を進めることにしました。

なお、2020年春の臨時休業の際は、まだ生徒用の端末はありませんでしたので、生徒たちには印刷した教材や課題を配付して、各家庭で取り組ませました。同時に、各家庭のコンピュータやインターネット環境の有無を確認した上で、教員および生徒の「Google Classroom」のアカウントを用意し、Web会議システム「Google Meet」を使ってオンラインホームルームなどを行い、一部授業も配信するなどして対応しました。

こうした、さまざまな対応と並行する慌ただしい状況の中で、生徒1人1台端末の選定を進めたのですが、最も注意したのは「端末の故障」です。中学校では、タブレット端末を学校から貸与する形で整備することになりましたので、何かしらの理由でタブレット端末が故障した場合でも、保護者に費用を負担していただくことはありません。しかし、端末の故障によって生徒の学習活動が止まってしまうことは避けなければなりません。ですから、頑丈で故障しにくい端末を選ぶことと、数台の予備機を用意することを前提にして商品選定を行いました。

さらに販売会社からの提案により、Sky株式会社が提供する『Sky安心GIGAパッケージ』は、端末の自然故障のほか、落下や水ぬれなどの物損故障への保証も付帯することを知りました。また、タブレット端末を授業で活用するために欠かせない『SKYMENU Cloud』をはじめとする各種学習用ツールもワンパッケージで提供されることもあり、採用を決めました。非常に慌ただしい状況下で選定を進めていましたので、無駄なくパッケージ化された商品の提案はありがたかったです。こうして商品選定を進め、8月には中学校で使用するタブレット端末と学習用ツールなどを決定し、11月には生徒1人ひとりに貸与することができました。

トラブル対応の遅れで生徒の活動を止めないために

高等学校では2021年4月入学の新1年生から、生徒1人ひとりがタブレット端末を購入(費用は保護者負担)することを決定していましたので、中学校での商品選定と導入後の状況も参考に、タブレット端末および学習用ツールなどを選定しました。まずは、中学校で使用する端末よりも、高性能で信頼性が高い端末という観点で機種を選定。学習用ツールについても中学校にも導入された『SKYMENU Cloud』を採用することにしました。同等のソフトウェアを別途導入することも考えましたが、『Sky安心GIGAパッケージ』の中に、初めから含まれていることはもちろん、近隣の中学校でも採用されていることや、私どもが現時点で想定している機能が搭載されていること。さらに、機能や使い勝手などに課題があったときも、修正や改善のスピードに定評があることから、最終的に『SKYMENU Cloud』でスタートすることを決定しました。

何より、高等学校では端末費用を保護者が負担することになるため、故障に対する保証が充実していることを重視しました。高等学校では、タブレット端末は生徒の所有物ですので、壊してしまった場合は自己責任だということもできますが、安心して毎日活用してもらうためにも、できる限り金銭的な負担がないようにしたいと考えました。『Sky安心GIGAパッケージ』なら、故障への保証や各種学習用ツールも含め1つのパッケージになっているので、保護者の費用負担が抑えられます。

写真1不具合や故障が発生したときは、報告書に記入して情報管理室に提出

なお、使用しているタブレット端末に不具合や故障等が発生し、保証会社に修理を依頼した場合には報告書写真1にその内容を記入し、本校の情報管理室に提出してもらうようにしています。そして、必要に応じて予備機を貸し出すようにしました。

また、これは中学校と高等学校で共通することですが、タブレット端末を選定する際、OSはWindowsであることを前提としました。もちろん、本校教員の中にもiOSやChrome OSの端末がいいという方も少なからずいたと思います。しかし検討から実導入まで、時間的な制約があるなかで商品選定を進めたことや、導入後の活用推進や運用管理の面でも、長年の利用実績がある使い慣れたOSを使うべきだと考えました。トラブル対応についても一定の経験と運用ノウハウがあるOSなら、迅速な対応が可能です。何らかのトラブルが発生したときに対応が遅れて、生徒たちの活動を止めてしまうことは一番避けたい事態です。

板書とノートを中心にしながら、どうICTを活用するか

こうして導入した生徒1人1台のタブレット端末ですが、正直なところ活用については、まだまだこれからです。先行して導入した中学校でも昨年の11月から、高等学校では本年の4月末に生徒の手に渡ったばかりですので、あまり性急に活用を推進するのは避けたいと思っています。まず「使いたい」と思ったときに、タブレット端末の起動、ログオンを済ませて、全員が使える状態になるまでを「2分以内に完了」できるように、使い慣れることから始めましょうと呼びかけています。

以前、教員用のタブレット端末や電子黒板を整備したときも、初めから日常的に活用されていたわけではありませんでした。しかし、理科や社会では写真や映像などを提示することで理解が深まりましたし、国語や英語でも板書にかかる時間を減らすことで生徒たちと向き合って話す時間が増えました。授業においては、ほんの数分でもこうした時間が増えることで、学びの深度が変わる。その手応えを、教員や生徒が感じられることが大切だと思います。

写真2端末導入時、教員に活用のポイントと具体的な活用例をまとめた資料を配付

その手応えがあれば「板書では何を書き、電子黒板では何をどう見せるのか」という工夫につながっていきます。やはり、授業は板書とノートが中心であり、それらがなくなることはないと考えています。その中で、どうやってICTを活用すれば、より効果的なのかを考えていくことが大切ではないでしょうか。

ですので、生徒1人1台の端末が導入されたときに教員に配付した資料写真2にも「これまでの“黒板・ノート・プリント”の授業との併用で、『PC活用の利点を発見しながら試行する』というスタンスで、楽しみながらスタートしていただけたらと思います」と記載しました。

端末を使用するときは、必ず『SKYMENU Cloud』にログイン

その上で、まずはどんな使い方から始めるのか。例えば、これまで電子黒板に映し出していた教材を、生徒1人ひとりのタブレット端末に対して[画面転送]して示す。電子黒板では教室の後ろの席からは見えにくかった部分も、手元であればより鮮明に見ることができます。また、調べ学習を行うときも[画面一覧]を使えば、生徒たちがどんなWebサイトを閲覧しているのかが把握できるので、個別指導のきっかけもつかみやすくなります。

教員用資料にも「調べ学習だけであっても、必ずSKYMENUのそのクラスに参加させるとよい」と記載し、授業の中でタブレット端末を使用する際は、まず『SKYMENU Cloud』で[授業]を開始し、生徒たちのタブレット端末(学習者機)と教員のタブレット端末(教員機)をつなげて、いつでも使える状態にしておくことを「活用のための重要なポイント」として推奨しています。教材の配付や回収(提出)などもスムーズに行えるようになるので、まずはこうした基本的な使い方から、定着させていきたいと考えています。

こうしたICTを活用した学びの環境が整ってきたことで、少しずつ変化が生まれています。つい先日も、英語の教員から「生徒に、自分の英語スピーチの様子を録画させて、提出させたい」という質問を受けました。タブレット端末のカメラで撮影した動画を[発表ノート]に貼りつけて提出させると、自動的に生徒ごとに振り分けて保存されること図1を伝えると、ぜひ実践してみたいという前向きな話をしてくれました。

図1発表ノートに動画を貼りつけて提出すると、自動的に生徒ごとに振り分けられます

日頃から教員同士で操作を教え合い、さまざまな活用方法について話し合う場面が増えており、これからは積極的に活用している教員の授業での実践を、ほかの教員とも共有するなどして着実な活用推進につなげていきたいと思います。

教科指導に限らず、人と人のつながりにも活用したい

こうした、授業の中でのタブレット端末の活用は始まったばかりですが、中学校でも高等学校でも、基本的にタブレット端末は自宅に持ち帰らせており、著名なWeb学習サービスも利用できるようにしているので、生徒たちは家庭での自主学習で活用し始めています。

また、普段は訪問することが難しい離れた場所、例えば海外の姉妹校の人たちとの関わりを深めるなど、タブレット端末は教科に限らずさまざまな場面で活用していきたいと思います。

「広い視野と国際感覚をもち、個性・資質と知識を生かし、世界人類の福祉に役立つ人物の育成」という本校の教育目標の下で注力している英語教育はもちろん、人と人のつながりから学ぶ豊かな人間性の醸成といった面でも、タブレット端末をはじめとするICTの利活用には、大きな可能性が秘められていると感じています。

これからも、ICTを使うことを目的にするのではなく、新たなツールとして使いこなしていくことで、本校が大切にする「生徒を基本に据えた学校づくり」に役立てていきたいと思います。

(2021年6月取材 / 2021年10月掲載)