1人1台端末の日常的な活用で「授業の効率化」と「協働による学びの充実」へ 『Sky安心タブレット』で、児童生徒1人1台環境を実現
学校法人智辯学園 智辯学園和歌山小学校・中学校は、国の「GIGAスクール構想」に基づき、このほど全校児童生徒約1,100台のタブレット端末を導入。10月より児童生徒へ貸与による1人1台の端末を活用した学びをスタートさせました。タブレット端末は、無償・無制限の自然故障・物損故障保証を付帯した『Sky安心タブレット(Surface Go 2)』を採用され、小学校では学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』を導入されています。同校の児童生徒1人1台端末の整備や活用について、藤田 貴憲 教頭付、前川 倫男 情報システム部長にお話を伺いました。
藤田 貴憲
智辯学園和歌山 小学校 教頭付
前川 倫男
智辯学園和歌山中・高等学校 情報システム部長
2016年からタブレット端末を活用した授業研究を推進
本校は、「授業の効率化」や「コミュニケーションの充実」による学力の向上をめざして、2016年から小学校に42台のタブレット端末と学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』を導入し、これまで授業実践を進めてきました。タブレット端末を活用することで、子どもたちの「学ぶ意欲」の高まりと「学習内容」の深まりを実感しました。それは、先生と児童、児童と児童が情報を即座に交換できることで、意見の響き合いが生まれたからです。ICT活用による授業改善や学力の向上に確かな手応えを感じていました。
タブレット端末を活用する教員や児童が増え、各教室でさまざま工夫を凝らした授業が展開されるようになってくると、次第に「42台では足りない」という声も増えていきました。例えば、プログラミングの授業で2人1台しか端末がないと、どちらかの1人の児童がプログラミングをやりきるまで、もう1人の児童が待つことになってしまうのです。もちろん、グループやペアで協力して協働で学ぶことは大切なのですが、テーマや題材によっては、1人1台端末があることで、学びがより深まるのにと感じる場面が増えていきました。こうした場面がたびたびあり、多くの教員が「もっと子どもたちにタブレット端末を配ってあげられないだろうか」と考えるようになっていました。
1人1台端末を学校で購入し、児童生徒へ貸与
そうした中で、2019年末に文部科学省から1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する「GIGAスクール構想」が打ち出されました。本校では、構想に基づき、2020年度中に小・中学校の児童生徒1人1台分の端末(約1,100台)の整備と、10ギガに対応した校内ネットワークの実現をめざすこととし、整備計画を進めていきました。
まず整備するタブレット端末のOSは、Windowsにしました。これにはいくつか理由がありますが、最も大きな理由は、児童生徒が将来仕事に就くであろう、多くの企業や組織ではWindowsの端末やMicrosoft Officeが標準的に使われていることにあります。小、中、高等学校の12年間でWindowsの端末を道具として使いこなし、社会で通用する力を身に付けさせたいと考えています。
私たち教員が「Windows端末に慣れている」ということも重視しました。教員が、1人1台端末やクラウドサービスなどの新しいICT環境について正確に理解し、把握することで、初めて子どもたちにタブレット端末を安心して渡すことができると考えています。これは運用管理についても同様です。これまでの運用経験を生かして、今後1人1台で発生しうるさまざまなトラブルに対して私たちがきちんと対処できることで、初めて子どもたちに適切な学習環境を提供することができます。さまざまな魅力的なサービスがありますが、私たちは、私たち教員が把握でき、適切な対応できるICT環境を構築したいと考えています。
ストレスなく、安心して活用できる端末が必要
児童生徒1人1台のタブレット端末は、「Surface Go 2(Microsoft社製)」を選びました。児童生徒がストレスなく扱えるスペックを備えていることや画面に書き込む際に使用するペンの書き心地が良いこと、「Microsoft 365」などと連携が取れていることを評価しました。
端末に加えて、端末の自然故障・物損故障保証サービスやセキュリティ対策ソフトウェア、小学校低学年の児童でもWordやPowerPointなどのソフトウェアを扱いやすくしてくれるゼッタリンクス社の「こどもOffice」などの導入も検討していきました。
特に慎重に検討したのは「無償・無制限の自然故障・物損故障保証」です。これまで整備したタブレット端末は「画面タッチが効かなくなった」「電源が入らなくなった」といった理由で、全42台の端末うち半数の端末を修理に出していました。また「教師や子どもがタブレット端末を落として画面が割れてしまった」といった物損故障の事案も発生していました。今後1人1台の環境を想定すると、児童生徒が安心してタブレット端末を活用するためには「無償・無制限の自然故障・物損故障保証」の契約は欠かせないものでした。
さまざまな保証会社やソフトウェアメーカーに個別に声をかけて精査していたところ、それらが一つのパッケージとしてまとまったSky株式会社の『Sky安心タブレット(Surface Go 2)』を知りました。商品を個別に仕入れるよりもコストメリットがあることと、コールセンターによる窓口の一元化や故障した端末の回収・修理サービスなどが充実している点が良く、採用を決めました。
端末保証やソフトがパッケージになった『Sky安心タブレット』 を導入
「Surface Go 2(Microsoft社製)」と「4年間の無償・無制限の自然故障・物損故障保証」「こどもOffice」「セキュリティ対策ソフトウェア」などが一つのパッケージになった『Sky安心タブレット』を採用した。
学校での“対面授業”を重視し、『SKYMENU Class』を導入
私たちは、学校の授業における対面でのコミュニケーションと協働活動を通じて学びを深めていきたいと考えています。タブレット端末などのICTは、それをかなえるためのツールだと捉えています。これまでにも児童がみんなで力を合わせて一つの考えを作り上げる姿や、体育などで子どもたちが演技の様子を動画で撮影し、班で協力して比較、分析して課題を解決していくといった姿がたくさん生まれています。
このような学びの姿を、1人1台の環境でさらに発展させていくために『SKYMENU Class』を継続して採用することにしました。特に、1人1台の端末を活用すると、これまでよりも1人ひとりの考えが確かになり、「個の学び」が確立します。教員がその多様な個々の考えを把握して、それらを結び付けることができれば対話や協働をより充実したものにできます。『SKYMENU Class』には、自分の考えをまとめられる[発表ノート]、その学びの様子を教員が手元の端末でリアルタイムに把握できる[画面一覧]機能、そして「画面合体」や「画像合成」などの協働学習のためのアプリまで揃っているので、今後さらにその有用性が高まると考えています。
また、今は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、子ども同士が机を寄せ合った密なコミュニケーションや協働による学習活動に取り組みにくい状況があります。これまで私たちが大切にしてきた授業を、タブレット端末と『SKYMENU Class』の活用によって再び継続していけると期待しています。
AI技術と教員のきめ細やかな指導で、より質の高い学びへ
1人1台端末を活用した個の学びの確立という視点では、AI学習ドリルを活用した学習支援を計画しています。1人ひとりの理解度や課題に沿った適切な問題に取り組み、課題となる部分により効果的にアプローチできるようになります。
もちろん、AIだけで児童生徒の学習上の課題をすべて解決することはできません。教員の対面での見取りや助言、さらには学習履歴データを分析して指導することで、個別に最適化された今まで以上の学びが実現できます。それは、プロスポーツで、コーチが選手のデータをもとにしてアドバイスをしたり、個別のトレーニングメニューを決めたりするようなイメージです。
これまで本校の教員が大切にしてきた指導のノウハウとAIという新しい技術をうまくかみ合わせることで、より質の高い学びを子どもたちに届ける。そのための活用研究にこれからも取り組んでいきます。
毎日の授業を、より効率的・効果的にするためにICTを使いたい
毎日、ICTを使わなければと身構える先生方も多いと思います。けれども、私たちはこれまで培ってきた授業スタイルを大切にしつつ、そのなかに1人1台の端末を無理なく、効果的に取り入れたいと考えています。例えば、本校では、子どもが「手で書いて考える」という行為をとても大切にしています。これは、手を動かすことによって子どもたちの脳が活性化されるからです。しかし、学級全体で答えや考え方を共有するような場面では、ノートやプリントに書いたことを子どもが5分、10分かけてホワイトボードに書き写す必要がありました。
こうした場面で、タブレット端末と『SKYMENU Class』が活躍します。教員や子どもがタブレット端末の[カメラ]で自分のノートを撮影すれば、その画像がネットワークを通じてプロジェクタに投影され、すぐに発表、共有できるのです。子どもたちがホワイトボードに書き写す時間を短縮することで生まれる時間を使って、練習問題やより発展的な課題に取り組むことができます。
ICTを使った授業というと、特別なしかけを作って、新たな授業づくりを求めてしまいがちです。しかし、私たちは地に足をつけて、本当に子どもの資質・能力を育むための教育活動を展開したいと思っています。
週1回、教員同士のアクティブ・ラーニングで、授業改善へ
1人1台端末の環境は、教員も初めて体験する環境です。こうしたときこそ、私たち教員自身が「アクティブ・ラーニング」の姿勢で学ぶことが必要です。本校ではこれまでのような研究授業を主体とした研修だけでなく、教員の主体的・対話的な活動を通じて理解を深める取り組みを展開していきます。
具体的には、タブレット端末を使った授業を、授業者以外の先生にタブレット端末の[カメラ]を使って撮影してもらいます。撮影した写真は、そのまま[発表ノート]に貼り付けられるので、簡単なコメントを添えてもらいます。そして週に1回約30分程度、その[発表ノート]を持ち寄り、お互いの実践を交流してもらいます。実践のアイデアの共有に加えて、お互いの取り組みを認め合う場、困ったことを気軽に相談できる場になっています。週1回という短い期間で行っているのは、トライ&エラーによるスピーディな改善活動を大切にしたいからです。トライしてエラーがでたら、微調整してすぐにまたトライして取り返していく。私たち教員がアクティブに挑戦する姿を子どもたちに見せたいと思っています。
ICTを正しく、適切に活用できる人に
中学校では、教員と児童生徒の情報共有ツールとして「Microsoft Teams」を活用していく予定です。コミュニケーションツールの活用には、児童生徒のマナーやモラルに対する意識がとても重要になります。「モラルのない行為があれば便利なサービスやネットワークの使用を取りやめなければならないこと」「一部の人間の勝手な振る舞いが、全体の不利益につながる」といった実社会では当たり前のことを、彼らにしっかりと伝えて活用していきたいと思います。
もちろん「Microsoft Teams」などを管理できる「Microsoft 365」の管理者サイトでは、児童生徒の活用状況を把握できる仕組みが整っています。例えば、夜遅い時間まで友だちとチャットをしている生徒たちがいれば、その履歴を基に教員が指導することもできます。1人1台端末でつくられる本校のICT環境は、いわば一つの「小さな社会」です。大人が見守ることができる安全な空間で、彼らが大人になっても通用するスキルとともに、マナーやモラルをしっかりと身に付けてほしい。そして「ICTを正しく、適切に活用できる人」に育ってほしいと考えています。
(2020年10月取材 / 2021年1月掲載)