教育情報化最前線

1人1台端末を活用した探究学習で
学ぶ意欲を高める 『Sky安心タブレット』で、生徒が安心して活用できる環境と運用体制を構築

多田 昌弘

学校法人 水城高等学校教諭

学校法人 水城高等学校は、2017年度からBYOD(保護者負担)による生徒1人1台のタブレット端末を活用した学びをスタートされています。2020年4月入学生からは、無償・無制限の自然故障・物損故障保証が付帯した『Sky安心タブレット(Surface Go)』を購入端末に指定。校内外問わず、あらゆる環境で生徒が安心してタブレット端末を活用できる環境を実現されています。同校の取り組みについて、多田 昌弘 教諭に伺いました。

学校法人 水城高等学校 (所在地:茨城県水戸市)

小田部 幹夫 校長、生徒数 1,701名

2017年からいち早く「生徒1人1台」をスタート

本校は、1964年の創立以来、建学の精神「洗心以て自己の確立を期す」の下、強固な意志と逞しい実践力を備え、心情豊かで個性ある人間づくりをめざして教育活動を行い、多くの卒業生を輩出してきました。これまで培ってきた伝統を守りつつ、新しい時代に応える教育を実践するため、2017年度の新入生からBYOD(保護者負担)による生徒1人1台のタブレット端末の活用をスタートさせました。全教室の生徒用無線LAN環境の整備も完了しており、生徒は放課後・休み時間・授業中でも、必要に応じてタブレット端末を取り出して自由に活用できます。

生徒1人1台活用の4年目を迎えた2020年度の新入生からは、Microsoft社製タブレット端末「Surface Go」に3年間の「無償・無制限の自然故障・物損故障保証」が付帯したSky株式会社の『Sky安心タブレット』を新たな生徒用端末として採用しています。

BYODで生徒1人1台体制へ。学校はインフラやICT環境整備に注力

そもそも生徒1人1台体制のきっかけは、複数あるコンピュータ教室の更新でした。これまでのように複数のコンピュータ教室を整備するのか、それとも生徒が1人1台のタブレット端末を活用して学ぶ、新しい学習環境の実現をめざすのか。本校のめざす教育の姿や導入、運用に必要なコストを含めて検討しました。

結果、生徒1人1台体制をBYODで実現することが決定し、学校は、教室の無線LAN環境などの通信インフラをはじめ、プロジェクタなどのICT環境整備を充実させることになりました。生徒の端末は、3年間の自然故障・物損故障保証がついたものを本校が指定し、それを3年間の月払いで購入してもらっています。

端末の故障が頻発し、修理費用の負担や運用方法が課題に

生徒1人1台体制をスタートさせた当初、生徒の端末は『Sky安心タブレット』ではなく、Windows 2in1タブレット端末と自然故障・物損故障を組み合わせたものでした。生徒たちの活用は順調に進んだのですが、活用度が上がるにつれて「自転車で転んだ際に、鞄が落ちて端末の画面が割れてしまった」「鞄の中でお弁当の汁が漏れていて、水浸しになってしまった」といった故障や破損に関する相談も多く発生するようになりました。

しかも、当時加入していた保証は、端末1台当たりの修理費用に上限があるものだったので、なかには2年生の夏を過ぎた段階で上限金額を超えてしまい、無償で修理できなくなったという生徒もいました。上限金額を超えた修理は、保護者に負担してもらう必要があるのですが、この金銭的な問題への対応が教員の負担になっていました。

修理体制にも課題がありました。本校では2、3年生の端末の故障や修理のために、学年ごとに週に一日、導入業者による相談窓口を開設しています。窓口で「修理が必要」と判断された場合に、本校で数台確保している予備機を生徒に貸し出すというルールにしています。故障のタイミングが悪ければ、最長で6日間予備機を借りられず、「端末が使えない時間」が生まれていました。今は、例えばスマートフォンが故障して携帯電話ショップに持ち込んだら、すぐに代わりの端末を借りられるような時代ですから、生徒や保護者から理解を得にくい運用でした。

加えて生徒から返却された予備機は、次にほかの生徒が使う可能性があるため、情報担当の教員が都度USBメモリで初期化をする必要がありました。日々の授業をこなしながら、端末の初期化やトラブルの相談に対応しなければならず、教員の負担が大きくなっていました。

このような本校の課題を解決してくれたのが『Sky安心タブレット』でした。

無償・無制限の自然故障・物損故障保証が付帯した『Sky安心タブレット』を採用

端末は、GIGAスクール構想 標準仕様に準拠したMicrosoft社製タブレット「Surface Go」を選定。

『Sky安心タブレット』Webサイト

2020年度新入生の端末から『Sky安心タブレット』を採用

ポイント1無償・無制限の自然故障・物損故障保証

最も評価したのは、「無償・無制限の自然故障・物損故障の保証」です。端末ごとの修理の上限金額設定や修理回数の制限がありませんから、先述したような修理における金銭的な問題を気にせず、安心してタブレット端末を使えるようになりました。加えて、この保証は、校外、家庭での故障やキーボード、ペン、ACアダプタなどの周辺機器も保証の対象になっています。「鉛筆やノートのような道具の一つとして、タブレット端末を使ってほしい」という私たちの想いを実現するためには欠かせないものでした。

端末や周辺機器の保証、コールセンターによる対応を評価

ポイント2コールセンターによる修理受付対応

2つ目の評価ポイントは、コールセンターによる修理受付です。『Sky安心タブレット』は、学校からコールセンターへの修理依頼をした場合、工場出荷状態の新しい端末が学校に返送されるという特長があります。

この仕組みを活用すると【下図】のような運用が実現できます。具体的には、生徒から端末不調の相談があった場合、教員がまず状態を確認して、コールセンターに相談します。「修理が必要」となった場合、学校であらかじめ購入してある予備機(工場出荷状態)を「新しい端末」として生徒にすぐに渡します。これにより、課題の1つであった「生徒が端末を使えない時間」をなくせます。それから、教員は専用の配達サービスで修理する端末を発送。後日、返送された端末(工場出荷状態)を、「新しい予備機」として補充します。これにより、もう1つの課題であった「生徒に貸し出した予備機をリカバリする」という教員の作業がなくせます。

従来の2つの課題を解決しつつ、さらに「サービス向上」を実現できますから、私どもにとって理想的なサービスでした。

ポイント3生徒に満足感のあるタブレット端末「Surface Go」

3つ目は、『Sky安心タブレット』で提供される端末「Surface Go」です。まず実社会との接続や、オフラインでの利用を考えれば、生徒用端末のOSは「Windows」一択でした。そして、3年間の取り組みから、生徒用端末は安価で性能が抑えられたものではなく、彼らが使いたいと思えるような「性能」を備え、「満足感」のあるものを用意したいと考えていました。そういった点で「Surface Go」は、まさに私たちが求めていた端末でした。

実際に、入学生から「『Surface Go』を使えることを楽しみにしていた」という声を多く聞いています。加えて、今年の新入生の修理依頼件数は、例年と比べて少なくなっています。これは生徒が端末に満足し、大切に扱ってくれているからだと考えています。

▼ 「生徒が端末を使えない時間」や「教員がメンテナンスする手間」を削減

「安心」で広がる、タブレット端末の日常的な活用

タブレット端末がノートやペンのような当たり前の道具に

今や、生徒たちにとってタブレット端末は、ノートやペンのような「当たり前の道具」になっています。例えば、授業の内容をOneNoteにまとめたり、部活動の様子を動画で撮影して、練習に生かしたりする生徒もいます。さらに、通知表や定期試験の成績通知、課外授業や行事の申し込みは、すべて本校独自のWebシステムで行うようにしていますから、タブレット端末がなければ学校生活が成り立たなくなっています。

探究学習(SY研)にタブレット端末が不可欠

▲ 「おもしろい」を突き詰める上で、タブレット端末が欠かせない

なかでも2018年度から開始した「SUIJOよろづ研究室」(『SY研』)の活動において、タブレット端末は欠かすことができないツールになっています。SY研は、1、2年の生徒が「おもしろい」と感じるものをとことん掘り下げ、探究する取り組みです。生徒は学年やコースに関係なく、それぞれの「おもしろい」のテーマに応じた「研究室」に分かれて活動しています。

例えば、ある生徒は「エスカレーター」を研究テーマにして探究しました。インターネットでの情報検索から始まり、やがて水戸駅にあるエスカレーターを保守業者がメンテナンスする様子を取材したり、自らエスカレーターを開発メーカーに問い合わせて工場を見学したりして、深く探究していきました。この生徒は、工学系の学部がある大学への進学を志し、AO入試に挑戦。見事、希望の大学に合格することができました。

「おもしろい」を探究した経験が、AO入試や就職面接に生きる

そもそもSY研は、「知識・技能の確実な習得」や「思考力、判断力、表現力の育成」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」といった「学力の3要素」を育むという目的と、自分の「おもしろい」を突き詰める経験を、勉強を頑張る原動力にしたいという想いで取り組んでいます。自分の「おもしろい」を見つめることは、文理選択や進路選択をする際の動機にもなっています。

さらに、近年では大学入試のAO化が進んできており、生徒は3年間の学校生活で取り組んだことを、自信を持ってPRできる力が求められています。生徒たちが探究し、自分と対話するために、タブレット端末は今後さらに欠かすことのできないツールになると考えています。

休業当日から、時間割どおりにオンライン授業を展開

新型コロナウイルス感染症禍における長期臨時休業においても、大きな混乱もなく「オンライン授業」に移行しました。休業当日から時間割どおりに授業を行うことができ、例年と比較しても学習進度に大きな遅れは生じていません。これもタブレット端末の活用が生徒たちにとって「当たり前のもの」になっているからだと思います。

そして、オンライン授業の経験によって、本校のICT活用は大きく一歩前進したと感じています。特に大きく前進したのは、「教員の教材活用や教材づくり」です。これまでも教員が生徒に資料や教材をPDFファイルで配付するといった活用は進んでいたのですが、オンライン授業をきっかけに動画教材を使う教員が一気に増えたのです。さらに普段Web会議システムとして利用している「Microsoft Teams」は、「録画ボタン」を押すだけで簡単に動画を作ることができます。1人でWeb会議を開き、さまざまに工夫を凝らした動画教材を制作する教員が増えました。動画教材に対する生徒の評判は上々で、この流れを止めることなく、さらに授業改善を進め、学びの質的な向上を図りたいと考えています。

▲ 板書で示しながら説明する様子をWeb会議システムで配信したり、体育などの実技系の教科では動画を撮影したりして生徒に届けた

「安心」があるから、新しい挑戦が生まれる

『Sky安心タブレット』を導入する以前は、故障を恐れるあまり、使い方を選んだり、使うことをためらったりしてしまうことが多くありました。今は『Sky安心タブレット』の無償・無制限の自然故障・物損故障保証で、教員、生徒、そして保護者が安心して端末を活用しています。何か新しいことに挑戦するとき、失敗はつきものです。失敗を恐れることなく、より質の高い教育をめざして、生徒たちとさまざまな挑戦をしていきたいと思います。

(2020年8月取材 / 2020年10月掲載)