授業でのICT活用

SKYMENUは授業以外にも活用できる

SKYMENUは授業で活用するための学習活動ソフトウェアである。しかし、本校では、①職員会議の効率化、②教員のICT活用能力向上の2つを目的とし、毎月の職員会議でも活用している。

① 職員会議の効率化

以前の会議では事前に発言予定者が会議用フォルダに資料(ファイル)を入れておき、全員が該当資料を個別に開くスタイルであった。この方法では、「該当資料を探す時間がかかる」「資料のどの部分の説明なのかわかりにくい」「議題が変わるタイミングで資料を開く時間がかかる」といった問題があった。

SKYMENUは毎年新しいバージョンが出され、できることも増えているが、基本的な機能は「画面のやり取り」であると考えている。この機能を活用すれば、自分の画面を瞬時にリアルタイムで受け手の画面に投影できるので、従来の会議での問題を解決できるのではないかと考えた。

② 教員のICT活用能力向上

本校は平成28年度に神戸市のICT活用重点推進校の1つとして、電子黒板や書画カメラ、タブレットなどのICT機器が整備された。電子黒板と書画カメラに関しては、当初から積極的に授業で活用していたが、タブレットに関しては教員の活用状況に格差があるように感じられた。

この原因の1つとして、タブレットへの苦手意識というよりは、タブレットに入っているSKYMENUへの苦手意識が活用の格差に関係しているのではないかと考えた。導入時に操作研修はしているが、それだけでは自発的に授業で活用するというところまでいく教員は限られていた。

苦手意識を軽減させるためには、実際に触り、慣れ親しむことが大切である。そのためには普段の校務の中で、継続的にSKYMENUを使う状況を作り出す必要があると考えた。ある程度の教職員が集まり、定期的に行われるという条件が必要であり、毎月行われる職員会議での活用が適切であると考えた。平成30年1月から実践しており、令和元年10月までに計25回実施している。

本稿では、②教員のICT活用能力向上を中心に報告したい。

全員が使わざるを得ない状況を作り出す

まずは、職員会議でSKYMENU を活用するための準備についてであるが、職員室も1つの教室であるという意識で、なるべく教室に近い環境を準備するように心がけた。

職員室専用のプロジェクターとスクリーンを設置し、教室の電子黒板と同様に、プロジェクターにはミラキャスト対応のアダプターを接続した。これにより、教室と同じ感覚でPCの画面をスクリーンに無線投影できるようにした。

SKYMENUの先生役は会議の司会学年が務めることで、特定の人物に偏らないように配慮した。スクリーンに先生役のPCの画面を投影しなくても、会議の進行上の問題はないが、実際の授業では教員のタブレットPCやノートPCの画面を電子黒板に投影するので、その状況に近づけるためにスクリーンにも投影するようにした。これには、「先生役がSKYMENUのどこを操作すれば、児童役にどんなことが起こるのか」ということを学ぶ意味もある。

会議直前の準備としては、司会学年の1人が先生用IDでログインし、「授業開始」にしておく。初期設定で禁止されている児童役の「発表」を許可に変更し、先生役のPCの画面をミラキャストでプロジェクターに無線投影する。それ以外の職員は児童用I D でログインしておく。初めの頃はSKYMENU の使い方や、使うまでの準備がわからない職員の割合が多いので、簡単な手順やログインIDをスクリーンに投影しておいた。

また、職員室前方への拡大掲示も行った。会議で発言するときは、「発表」「すべての学習者機」でスクリーンや他の参加者のPC に投影しながら会議を進め、自分の発言が終わると「投影」を終了する。この方法で会議を行うためには全員がSKYMENUを使わなければならないので、管理職も含め、職種に関係なく、全員が毎月SKYMENUを使わざるを得ない状況になった。

会議で失敗し、授業で成功する。
職員会議がアウトプット型の研修の意味を持つようになった。

短時間で会議が終了し、自然と拍手が起こる

初回は混乱したが、2回目以降はスムーズに進んだ。特に1回目と2回目の変化は大きかった。

実際に触ってみることがいかに大切かを実感した。1か月経過すると、ログインや投影方法を忘れかけている職員もいるが、完全に忘れているわけではないので、周りの助けにより、容易に思い出せる。互いに助け合うことができるのは、全員がSKYMENUについて、少しずつ知っていて、話をできるようになったからである。

職員に行ったアンケートによると、「会議中に周囲の職員に助けてもらったことがある」と全員が回答している。助ける側も教えることにより、知識をより確実なものにできる。

会議自体も以前のように全員で同じ資料を開いたり閉じたりせず、発言者が発表機能でスクリーンや参加者のPCに投影するだけなので、議題間の流れがスムーズになった。他の要因もあるかもしれないが、短時間で会議が終了し、自然と拍手が起こったこともあった。

職員が作成する資料もパワーポイントなど、投影を意識した、動きのある資料が出てくるようになった。

マニュアルの「すき間」を知ること

しかし、すべてをSKYMENU で投影しながら進めると不便なこともあった。

例えば、発言者の画面が投影されているとき、他の職員は自分の画面を触ることができないので、もう少し下を見たいと思っても見ることができない。これは多くの職員が感じていたことであった。しかし、このようなSKYMENUの特性を体感すること自体にも意味がある。おそらく、職員会議でSKYMENUを活用するまでは、この基本的な特性を知らない職員が多かったのではないだろうか。

授業で使っている教員でも普段は先生側で活用するので児童側の使用感はわからない。児童側になるという体験は教材研究で必要な視点の1つであると思う。

初めの頃は発言者が自分の順番になってから、資料を開き始めることが多かったが、現在は会議が始まるまでに使用する資料を開いておくことが常識になっている。誰かが投影しているときは他の人は自分の画面を操作することができず、直前に資料を開くチャンスがないことを理解しているからである。

これは授業で児童がSKYMENUで次々に発表するような場面でも同じである。高度な使い方をしているわけではないが、このような、マニュアルには書かれていない「すき間」の知識や「コツ」が会議の中で身についていくのではないかと思う。行事の係分担の確認や、学年ごとに違う資料を見てもらう場面では投影せずに、各自で該当資料を開いてもらうなどの使い分けが見られるようになった。紙の資料と投影を組み合わせたり、後でポケットに突っ込んだりして使うような資料は、紙で配布しておくほうがいいなど、その人なりに伝え方やメディアを考えるようになった。

SKYMENUを基本としながらも、内容によって適切な方法を選択することが大切である。それは授業でも同じである。誰かが効果的な使い方をしていれば、「あんなふうに使えばいいのか」となるし、誰かが失敗していれば、「どうすればよかったのか」と考えることになる。

人から学ぶことができる点が一人で練習する場合との大きな違いである。効率的ではない活用をすれば、それなりに時間を浪費してしまう上、その状況を全員が見ているので、適度な緊張感もある。適度な緊張感の中での失敗は次につながるはずである。会議で失敗し、授業で成功する。職員会議がアウトプット型の研修の意味を持つようになった。

教員発信から児童発信へ

実際のSKYMENUを活用した授業を見て、感じたことを述べたい。

まず、教員が操作に慣れてきているという印象を持った。例えば、家のテレビのリモコンで、どのボタンで何が起こるかを迷いながら使うことがないように、SKYMENUの操作をスムーズに行えている。すべての機能を知っているわけではないし、間違うこともあるが、全体的に軽やかな印象を受けた。児童も授業の中で、「先生、これ、SKYMENU でみんなに見せたいねんけど」という言葉が出るぐらい、自然になっている。

使い分けに関しては、教員が説明しながら児童に操作させたい場面では電子黒板だけに映したり、児童が特に集中して話を聞く必要がある場面では、操作ができないようにあえてタブレットに映しながら話をしたりするなど、教員の意図を元に瞬時の判断で行えている。こういった様子を見ていると、職員会議での児童側の体験が生きているのではないかと思う。「ICTはツールである」とよく言われるが、無意識に使えるようになって初めてツールと言えるのではないだろうか。おそらく、通常の黒板やチョークをツールとして認識している人はいない。わざわざ、「黒板を活用した授業」などとは言わない。それは当たり前すぎて、無意識化されているからである。SKYMENUもそうなるためには、授業だけではなく、普段から慣れ親しまなければならない。その他のICT活用でも同じである。特別感をなくさなければならない。

職員会議でSKYMENUを使うようになってから、児童側から発信することが増えたように思う。例えば、児童がタブレットで写真を撮ってきて、それに何かを書き込んで発表するような場面で、以前は教員が画面一覧から児童のタブレットを選び、電子黒板や他のタブレットに投影することが多かった。

しかし、職員会議でSKYMENU を使うようになってからは、発表機能で児童側から発信する姿を見かける機会が増えた。どちらの方法がいいかどうかは、授業のねらいやその時の状況によって変わってくるので、一概には言えない。

しかし、選択肢の一つとして、教員の頭に入ったのではないだろうか。児童に発表機能を使わせるときは、事前に発表を許可しておくことや、「発表終了」をしないと次の児童が発表できないことも、職員会議から体験的に自然に学んでいる。個人的な想いとしては、1つの方法しか知らないから、同じ方法を続けるというのではなく、なるべく多くを知って、また、知ろうとして、その中で状況に合わせて、適切な手段を選択できるようになってほしいと願っている。新学習指導要領において、情報活用能力が言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」として位置付けられているが、情報活用能力の育成は児童生徒だけではなく教員にも必要なことである。

活用を後押しする効果

今年度の転入者も4月1日の着任日の職員会議からSKYMENU を「強制的」に使ってもらっている。転入者へのインタビューで印象的だったことは、「画面を見ているだけでも意味があった」と答えていることである。ほとんどの時間は自分の画面に映された発言者の画面を見ているだけであるが、「職員会議でSKYMENUを使う習慣がなかったら、今も使っていないかもしれない」との回答が複数あった。会議で何度か見ているうちに自分にもできるかもしれないと思うようになり、心理的なハードルが下がるようである。実際に1学期から授業で活用している転入者が多かった。まだ、活用できていない転入者も2学期は使ってみたいと答えていた。

毎月の会議でSKYMENUを活用しても、それだけで十分に習得することはできないかもしれない。しかし、「0を1にする効果」「1を0に戻さない効果」はある。別に時間を取って研修をすることなく、普段の校務の中で、ある程度使えるようになり、それが維持されるところに価値がある。全員が最低限のことができるようになれば、「1を2、3にすること」はそれほど難しいことではない。最近ではちょっとした打ち合わせにもSKYMENUを活用することが増えた。この「ちょっとした」というところがポイントである。SKYMENUに慣れ親しむ段階は全員が卒業できた。今後の本校教員の活用に期待したい。

(2020年1月掲載)