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ICT活用研究愛知県日進市立竹の山小学校 [電子連絡板]の活用で、朝の時間にゆとり 出欠確認や教職員間連絡、家庭との連絡にも、『SKYMENU Cloud』を活用

愛知県日進市立竹の山小学校では「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備」により、令和3年3月までに児童1人1台、担任教諭1人1台のiPadをはじめ、さまざまなICT機器の整備が進みました。これらを活用した1年間の取り組みを振り返って感じているICT活用の現在について、同校の伴野 美布 教諭と池之野 博美 教諭にお話を伺いました。(2022年1月取材)

伴野 美布教諭(教務主任)

愛知県日進市立竹の山小学校

池之野 博美教諭(校務主任)

愛知県日進市立竹の山小学校

振り返りノートを撮影して共有、
初歩的な活用からスタート

本校は、併設されている日進北中学校とともに平成25年に創立した新しい学校で、現在(令和3年度)は496名の子どもたちが学んでいます。また、日進市を含む隣接市町から構成される「愛日地方教育事務協議会」より、令和3年度と4年度に研究委嘱を受け、「ともに学びを深める竹っ子の育成~振り返り・問い・外化を意識した授業を通して~」を研究主題として、2年間にわたり学習指導について研究に取り組んでいます。

「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備」では、子どもたち1人1台、担任教諭に1人1台、担任以外の共用として5台のiPadが導入され、各教室に短焦点プロジェクタ、Apple TV、充電保管庫なども整備されました。加えて、特別教室には4Kモニターや電子黒板なども整備されて、一気にICT環境が整いました。

日進市では、小学校は高学年から順次配備する計画だったのですが、本校は研究委嘱を受けていることもあり、全校一斉に配備され、年度内にすべての機器の導入を完了。受け入れ対応などは大変でしたが、早い段階で環境が整ったことはとてもありがたかったです。

しかし、この段階では教員の約半数がiPadを使ったことがないという状態でした。販売会社にも協力いただき「iPad手始め講習会」を実施して端末の基本操作を学び、Sky株式会社に「SKYMENU講習会」を開催してもらいました。その上で、初めはICTに長けた教員がフォローしながら「すべてのクラスで使ってみよう」ということから活用をスタートしました。

例えば、子どもたちが記入した紙の振り返りシートを端末で撮影しておき、次時の導入で、それをプロジェクタに投影して「前時にこういうことを書いている人がいるよ。今日はこれをみんなで考えよう」と伝えるような活用から始めました。とても初歩的な活用ではありますが、投影は視覚支援にもなりますし、意欲の高まりにもつながります。また、本校では研究主題でもある「振り返り」を大切にしていますので、前時の学びを本時につなげるための助けにもなっています。教員も実際に使ってみることで、ICTは学びを深めたり広げたりするための大きな力になるという実感がもてたと思います。その後「Zoom講習会」や「Microsoft Office 365講習」「eライブラリ講習」など、目的に応じて教職員向け講習を行ってきました。

朝の連絡は電子連絡板で共有し、
教室で子どもと過ごす時間が増えた

本校では以前、8時20分に職員室で連絡事項の確認や打ち合わせを行っていました。しかし、ゆとりをもって子どもたちに接することができるように、朝の打ち合わせの代わりに[電子連絡板]を活用することになりました。教員が各自の端末で見られる[電子連絡板]なら、教室にいても内容を確認できるというメリットがあります。

本校では、教職員専用として「職員連絡板」と「本日の欠席」という2つの連絡板を用意図1。これらは教職員なら誰でも書き込めるので、各自が周知したいことを記載しています。先々の日付の内容も書き込めるので、連絡事項ができた時点であらかじめ書き込んでおけるのも利点です。何よりも、朝の決まった時間に職員室に集まらなくなったので、以前よりも子どもたちと関わる時間にゆとりができました。

図1 教職員専用の電子連絡板として「職員連絡板」と「本日の欠席」の2つを運用

電子連絡板を書き写すことで
連絡帳の書き方練習にも活用

また、教職員専用の連絡板以外に、各クラスの子どもたちが閲覧できるクラスごとの連絡板もあります。「職員連絡板」に記載された連絡事項の中で、子どもたちにも伝えなければいけないものについては、朝の会で伝えた上でクラスの連絡板にも載せている教員もいます。

欠席の連絡方法も変わりました。コロナ禍以前は、同じ分団の子が欠席する子の連絡帳を預かって届けていたのですが、感染対策の観点では物を手渡しすることも良くないとされるため、保護者からメールで直接ご連絡をいただくように変更しました。しかし、メールは閲覧できる教員が限られるため、[電子連絡板]を活用する前は、欠席の連絡を受けるたびにプリントアウトして担任の机に置いたり、電話で連絡したりする以外に伝達方法がありませんでした。連絡板を活用するようになってからは、メールで届いた欠席連絡を確認し、転記することで担任に伝達できるようになりました。連絡事項の周知も欠席連絡も、以前は朝の慌ただしい時間帯に急いで行っていましたが、今は余裕をもって子どもたちと接することができるようになりました。これは、子どもたちの健康観察や1人ひとりの様子をしっかり見取るという意味で、大きな変化だと思います。

また、子どもたちも[電子連絡板]を活用しています。写真1は、1年生の朝の様子です。子どもたちは、登校してくるとまず充電保管庫から端末を取り出して『SKYMENU Cloud』にログインし、クラスの連絡板を開きます。そこには「明日の連絡」という欄があり、教員が手書きした連絡帳の写真が貼りつけられており、子どもたちは、それをお手本として自分の連絡帳に書き写します。これは連絡帳の書き方の練習も兼ねており、毎朝の日課となっています。

写真1 登校すると端末を取り出して連絡板の内容を自分の連絡帳に書き写している

Web会議システムを使って
オンライン朝会やオンライン学活を実施

そのほか、昨年(令和3年)秋の緊急事態宣言が発出されていた期間には、Web会議システムを使用した「オンライン朝会」を行いました。登壇者は体育館や放送室から話すようにし、開始前に各クラスの担任の端末と接続。教員用端末の画面を教室のプロジェクタで投影しました。『SKYMENU Cloud』はWeb会議システムと連携した[ミーティング]機能があり、参加者を選択するだけで開始できます図2。URLを共有したり、ミーティングIDやパスコードを入力したりする必要がないので、非常に活用しやすかったです。

図2 参加者を選択するだけでWeb会議システムを使ったオンライン会議が行える

夏季休業期間に新型コロナウイルス感染症が急拡大した期間は、社会的にもオンライン授業をどう考えるのかが大きな話題となっていました。日進市でもさまざまに議論されたようです。その時点で2学期を目前に控えていたので、実施に踏み切るかどうかはともかく、まずはWeb会議システムを使えるようにならなくてはならないため、急ぎ「Zoom講習会」を開催しました。ただ、この頃には子どもたちも操作に慣れていましたので、迷うことなく活用できそうだという手応えがありました。

しかし、各家庭のWi-Fi環境を把握する必要があります。まずはWi-Fiに接続できるかどうかを試してもらうため、9月初めに全校生徒に端末を家庭へ持ち帰らせました。このときに家庭内のWi-Fi利用状況についてのアンケートを実施し、環境がない家庭には市で用意されたWi-Fiを貸し出すことに。その後、定期的に全校一斉の「持ち帰り訓練」を行うことにしました。

まず行ったのは「オンライン学活」です。9月中旬に、2回目の全校一斉持ち帰りを実施しました。学校での授業は午前中のみに限定されていましたので、帰宅させた午後の時間を活用して、各家庭からWeb会議システムに接続することを試みました。

定期的に全校一斉の
「持ち帰り訓練」を継続している

電子連絡板を活用して
宿題に取り組ませる

本校では、その後も持ち帰り訓練を継続し、10月も2回の全校一斉の持ち帰りを行いました。金曜日に端末を持ち帰り、翌週の月曜日に学校に持参するという流れで行ったのですが、取り組ませる宿題の内容は事前には伝えず、端末を持ち帰らせてから[電子連絡板]を使って伝えるという方法にしました。これには、課題を事前に伝えない方がサプライズ感もあり、子どもたちの意欲も高まるだろうというねらいがあります。

例えば、1年生なら生活科の課題で「どんぐりのような“秋のもの”を見つけて写真に撮ってこよう」といったもので、写真や動画の撮影、[発表ノート]を使った課題が中心でした。その後は「Microsoft Forms(以下、Forms)」を使った「防災クイズ」に取り組ませました。[電子連絡板]にはURLのリンクが設定できるので、連絡板にFormsへのリンクボタンを用意し、それをタップして解答するというやり方です。これは1月に行った「学校評価アンケート」でも同様に行いました。これらは、それぞれ回答率が95%以上となっています。この結果を見ても、[電子連絡板]は家庭での活動にも適していると感じています。

実技を伴う教科の評価では
動画撮影が有効だと実感

写真2家庭での調理実習や演奏の様子を撮影して提出させることで、細やかな評価に

また11月には、学年ごとの持ち帰りも実施しました。例えば、6年生では家庭科の調理実習を行っています。コロナ禍で、学校での調理実習ができなくなったことから、家庭で調理している様子を撮影して提出させました写真2。同様に4年生はリコーダーの演奏を撮影して提出。その取り組みを通じて、実技を伴う教科では動画を撮影して提出させることが、的確な評価につながるということが分かりました。

調理実習や演奏を学校で行う場合、時間が限られているため、1人ひとりに時間をかけて評価するのは難しいものです。動画であれば繰り返し見ることもできます。ICT活用の利点の一つですが、本校においては、コロナ禍によって制限された状況があったからこそ見いだせた活用メリットでした。こうした取り組みは、この先にコロナ禍が収束したときも継続していくと思います。

なお、これらの取り組みには保護者の理解と協力が必要なため、動画の撮影方法や注意点を、学校ホームページに簡単なマニュアルを掲載しています。さらに[電子連絡板]に課題の内容に加えて、マニュアルページへのリンクを載せておくことで、保護者の皆さまにも分かりやすいように配慮しています。

[発表ノート]なら
個に合わせた教材が手軽に作れる

写真3[発表ノート]であらかじめ枠を用意することで、本質的な課題に集中できる

これまでの取り組みを振り返ると「とにかく使ってみよう。使ってみなければ分からない」という1年間だったように思います。算数で関係図を作るようなとき、作図の仕上がりにこだわるあまり、どの数字が入るのかということを考える時間が足りなくなることがあります。しかし、[発表ノート]であらかじめ枠を用意しておくことで、本質的な課題に集中することができます写真3。同様に、特別支援学級で学ぶ子どもたちのために、教員が[発表ノート]を使った教材を用意しています。子どもによって支援が必要な度合いは異なりますので、それに合わせて作っていますが、[発表ノート]であれば絵合わせやなぞり書きの教材が手軽に作れます。こうした取り組みから、新たな可能性が見えてきました。

今後は、これまで全校一斉が基本だった持ち帰りの取り組みを各学年、各クラスで行えるようにしたり、授業の中でのより良い活用を共有したりといったことに取り組んでいきたいと思います。そのためにも、ルールやモラルの指導を見直すことも必要になるでしょう。これまで以上に保護者の理解を得られるような取り組みも大切です。そういう意味で、メリット、デメリットの両方が「使ってみないと分からない」ことが分かったというのが、この1年間の成果なのかもしれません。しかし、コロナ禍という制限のある状況だったからこそ、見えてきた効果的な活用方法が確かにあるので、この1年間の取り組みを糧にして、本校における新たなICT活用を考えていきたいと思っています。

(2022年4月掲載)