教育情報化最前線

兵庫県宝塚市教育委員会 常に子どもを真ん中に置いた議論を。
全教職員で連携し、新しい教育を創りたい

兵庫県宝塚市教育委員会では、GIGAスクール構想によって整備された1人1台端末の活用を全校で一体的に進めるため、管理職研修の充実や「タブレット活用スモールステップ表」による教員1人ひとりのスキルに応じた支援に取り組まれています。同市の取り組みについて、五十嵐 孝 教育長にお話を伺いました。(2022年3月取材)

五十嵐 孝兵庫県宝塚市 教育長

刻々と変化する環境に応じて、
できる限り早く手を打っていきたい

宝塚市は兵庫県南東部に位置しており、住宅地が広がる南部市街地と豊かな自然に囲まれた北部田園地域からなっています。小学校が23校、中学校が12校、特別支援学校が1校ありますが、地域により児童数が1,000名を超える大規模校も児童数約80名の小規模校もあり、ICT活用に限ったことではないですが、全市一律の取り組みを推し進めるのは少し難しい部分があります。

私は、各学校に1人1台端末の配備が進むなか、令和3年7月に教育長に就任しました。これだけ大きな環境整備事業ですので、担当する委員会事務局の教育研究課(以下、教育研究課)は非常に慌ただしく動き続けていました。そのなかでも試行錯誤を重ねながら、さまざまな取り組みを行ってきました。

まずは令和3年度の夏季休業期間中に、子どもたち自身がタブレット端末に慣れることと、保護者の皆さまにその様子を見てもらうことを目的に、すべての子どもたちが家庭にタブレット端末を持ち帰りました。そして、各家庭の通信環境を確認した上で、2学期には「オンライン朝の会」を実施。コロナ禍における、さまざまな状況の変化にも対応できるよう手を打ちながら課題を洗い出しつつ、方向性を探っていきました。

例えば、「オンラインで学校と家庭をつなげる」という取り組みも、そこで終わってしまうのでは意味がありません。ICTは、その仕組みを理解してツールが使えるようになるだけではなく、実践に役立ててこそ意味があるからです。ですから、教育委員会としてはできる限り、次の手またその次の手を、継続して示していくことが大切だと考えています。

全体で取り組むべき課題だからこそ、
教員のフォローアップがより重要に

一方で、ICT活用や教育の情報化は、学校の情報担当教員だけが取り組むものではありません。教育委員会においても、担当部署だけで推進するものでもありません。ICTを教育環境の一つの核として捉え、全体で進めていくべき取り組みです。そういう意味で、学校長をはじめとするすべての教員に当市が取り組もうとしていることを伝えていくことが大切です。

そこで、当市では動画を制作し、私と教育研究課の課長から全教員に呼びかけたりもしました。それは、何よりも日常的に使いながら慣れていき、より良い活用へと発展させていただきたいという思いからです。今後は「1日1回」はタブレット端末を使い、子どもたちと共に何かに取り組むということを習慣にしていきたい。これからは、そうしたことも積極的に発信していきたいと考えています。

しかし、現時点では教員のICT活用スキルに個人差があるのは確かですので、教員のスキル向上を直近の課題だと捉えています。その改善のための一つの道筋として、教員が「めざすべき姿」を大きく1~5のステップに分けた「タブレット活用スモールステップ表」を作成しました。指標があることで教員自身が現在のスキルを客観的に捉えることができ、次にめざすステップを具体的にイメージできるように示すことで、スキル向上を促していきたいと考えています。

もちろん、ICTを上手に使うことができれば、それで良い授業ができるということではありません。あくまでも、道具となる学習用ツールをどの程度使いこなせているのか、その到達度を測るための指標の一つです。

今後は、日本で長年培われてきた教育の良い部分と、ICT活用のベストミックスがますます重要になります。そのためにも、常に子どもたちを真ん中に置いて、われわれ教職員が連携しながら、みんなで新しい教育を創っていくことが求められています。私どもとしても、教員1人ひとりと、できる限り具体的なイメージを共有しながら、ICT活用を推進できるよう尽力したいと思います。

(2022年6月掲載)