学習指導要領/教育の情報化

本気で取り組む情報教育 学習指導要領改訂へ 義務教育でのプログラミング教育の充実を(永井克昇千葉商科大学教授、前文部科学省視学官)

共通教科「情報」の方向性を本気で示す

高等学校では、平成25年度から新しい学習指導要領が全面実施されました。そして平成26年度の秋、次の学習指導要領の改訂に向けた諮問が予定されています。

今後、情報教育がどのような方向に動くのか。文部科学省、教育委員会の指導主事の先生方、現場の先生方も一体となり、その必要性を正しく認識し、共通教科「情報」の方向性を本気になって示さなければならない時期に来ています。

しかしながら、『情報の科学的な理解に関する学習は「情報の科学」で取り扱い、「社会と情報」では科学的な理解について取り扱わない』といった学習指導要領の意図と明らかに異なる見解を伺うことがあります。

例えば、「社会と情報」では、「情報モラル」がキーワードになっています。学習指導要領を確認いただけば、場合によって情報モラルについて、「社会と情報」の方が踏み込んで書かれていることがおわかりになると思います。

「情報モラル」は、仕組みや特性といった科学的な理解がされていなければ、正しく理解できません。「社会と情報」「情報の科学」の2つの科目の基盤には「情報活用の実践力」だけでなく、「情報の科学的な理解」があります。そのことを正しくご理解いただき、2つの科目を適切に実施いただきたいと思います。

「科学的な理解」が極めて大事

また、共通教科「情報」では「情報モラル」が極めて強く打ち出されており、「情報教育=情報モラル教育」という印象をお持ちの先生方も少なくないのではないでしょうか。

共通教科「情報」は、子どもたちが社会に出たときに必要最低限の力、情報活用能力を身に付けさせるために必履修として位置づけられています。その中にICTの活用や情報モラルの学びが強く打ち出されているのは確かです。

しかし、そこに目を奪われすぎないでいただきたいのです。ICTを活用するための基礎、基盤となる「情報モラル」を高等学校の発達段階で正しく理解させること。子どもたちが実際に行動に移せるような力を育むことが必要です。それには単に実践力、活用だけではなくて「科学的に理解すること」が極めて大事であることをご理解いただきたいと思います。

義務教育からプログラミング教育を充実

2014年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」では「義務教育段階からのプログラミング教育等のIT教育を推進する」という言葉が入りました(図1)。次回の学習指導要領の改訂では、小、中、高等学校を通じてどのようにプログラミング教育を充実させていくかが課題になります。

【図1】日本再興戦略

それには、現在の情報活用能力3観点8要素の中に「プログラミング」の要素を組み入れることを始め、小学校の低学年、中学年、高学年、中学校、高等学校という学校教育の各発達段階中にどのような学習内容を落とし込んでいくのか。到達目標を作り、教育課程上の具体的な構造を示さなければなりません。教科としてまとまった時間がない小、中学校ではどの授業のどこで取り組むのかを考えなければなりません。

また、今後、プログラミング教育をはじめ、小、中学校のまとまった時間の中でさらに情報活用能力の育成が図られることで、子どもたちにとって本来あるべき共通教科「情報」の姿が見えてくると思います。

共通教科「情報」は「展開」から「充実」へ

前回の学習指導要領の改訂、つまり共通教科「情報」の第一期は、情報の授業を「知って」いただく段階でした。そして現行の学習指導要領、第二期は従来の内容を整理しさらに「展開」させることにあります。

そして、次の学習指導要領の改訂、第三期は「展開」から「充実」に動かしていくのだと思っています。

これからの先生方の共通教科「情報」の授業実践の積み重ねが、私たちにとって大きな財産になります。情報活用能力の3観点8要素の中の、ある特定の観点に偏った実践ではなく、共通性の基盤の上に多様な実践を積み重ねていただきたいと思います。

先生方の実践のお力をいただき、共通教科「情報」を次のステージにジャンプさせたいと思います。

※第7回全国高等学校情報教育研究会全国大会(埼玉大会)基調講演より
(2014年9月掲載)