学習指導要領/教育の情報化

「教育の情報化に関する手引」のポイント 堀田龍也(玉川大学 教職大学院 教授)

教育情報の「いま」を捉える

堀田龍也(玉川大学 教職大学院 教授)
東京学芸大学教育学部卒、電気通信大学電気通信学研究科修士課程修了、静岡大学情報学部助教授、メディア教育開発センター准教授などを経て今年4月より現職。文部科学省参与(生涯学習政策局参事官付)(併任)、専門分野は教育工学・情報教育。

地域・学校の情報化に向けた指針に

文部科学省ではこのほど、小・中学校の新学習指導要領に対応した「教育の情報化に関する手引」を発表した。指導要領の記述に基づき、ICT活用や情報教育、校務の情報化などについて解説するもので、各地域・学校の教育の情報化に役立つ情報が豊富だ。

執筆に携わった堀田龍也・玉川大学准教授に、作成のねらいや内容のポイント、学校や行政での活用方法について解説してもらった。

(日本教育新聞より転載)

授業でのICT活用の具体例も豊富

時代の変化踏まえ構成・内容見直し

「教育の情報化に関する手引」(以下、「手引」)は、これまでも学習指導要領の改訂に合わせて作成されてきた冊子です。従来は「情報教育に関する手引」でしたが、今回はタイトルを変更し、構成、内容も大きく見直しています。

見直しの背景となっている社会や教育の変化について解説しておきます。ひとつは、情報社会の進展を受け、学習指導要領にもICT関連の記述が増えたことです。次に、情報モラルやPISA型読解力などが、子どもに必要な力として求められるようになったこと。さらに、情報機器が普通教室にも普及し、教師のICT活用が注目されているという点があります。

 構成面の変化としては、「教科指導におけるICT活用」(第3章)を前面に出していることが挙げられます。従来の「手引」ではここに「情報教育」が入っていました。

誤解してほしくないのですが、これは国が情報教育を軽視しているのではありません。先生がICTを活用して授業をすることが、教える内容の増える新指導要領のもとで、教育方法としてこれまで以上に重視されている現状を受け、こうした構成になっているのです。

また、本来は情報教育の目標のひとつと位置づけられる「情報モラル」については一章を割いて詳述しています。これも、前述の社会や教育の変化を踏まえた改編です。

情報化のリーダーが読むべき「バイブル」

では各章のうち特に注目したい点を見ていきましょう。

まず第3章では、教科指導におけるICT活用のメリットや留意点、具体的な活用方法を示しています。

章の後半では、黒板と情報機器の使い分けや、普段の授業でICTを使いやすい教室環境づくりなど、ICT活用の日常化につながるヒントも提示しています。

第5章で注目したいのは、情報モラル指導の必要性を、子どもたちの携帯電話やネット利用の最新動向から捉え直している点です。学習指導要領や解説書では言及できなかった子どもの実態を先生方にも知ってほしいというねらいがあります。

第3章同様、指導の具体例を細かく解説しているので、学校現場でも「この教科ではこんなことが教えられる」というひとつの目安として参考になると思います。

第6章では、校務の情報化の目的をおさらいする一方で、情報化によって生まれる学校の変容を、管理職や教員、事務職員といった「プレーヤー」別に整理しています。

後半は情報化の進め方のモデルを示しながら、教委や校長のリーダーシップ、校務全体の見直し、情報セキュリティの重要性を解説しています。

まとめの第10章は、「手引」で示してきた教育の情報化を推進するための、教委と学校の体制づくりがテーマです。

取り組みの核になるのは、教委では教育CIO、学校では学校CIO(おもに管理職)。本章ではそれぞれの機能や組織配置のモデル、CIOを軸にした教委と学校の連携のあり方などを具体的に示す一方、学校CIOとしてリーダーシップを発揮すべき管理職の資質をチェックする自己評価リストも添付しています。

この「手引」は、教育の情報化に関する今日的なトピックを公的な視点から解説した文書として、すべての先生方の参考になるものです。

なかでも、教委の担当指導主事や各校の情報担当教諭、管理職には、教育の情報化に向けていまどんなことを、どう進めていくべきかという指針を提示する「バイブル」として、今後長く読まれていくでしょう。それぞれの立場で「手引」の内容を検討し、各地域、学校の情報化に役立てていただきたいと思います。

「教育の情報化」の全体像を複数のテーマで詳説

教育の情報化に関する手引き【概要】

【第1章】情報化の進展と教育の情報化
「教育の情報化のこれまでの歩みと現在を概説」 教育の情報化に関する国の政策や文科省の施策、関連文書などの情報をわかりやすく整理しています。
【第2章】学習指導要領における教育の情報化
「新学習指導要領が描く教育の情報化の全体像を見る」 新しい学習指導要領での教育の情報化の位置づけを、記述の一覧表などを使って解説しています。
【第3章】教科指導におけるICT活用
  • 教科指導におけるICT活用の考え方
  • 教科指導におけるICT活用の具体的な方法や場面
  • 日常的なICT活用の準備
「教科指導での具体的な活用シーンと活用方法をわかりやすく」 教科指導におけるICT活用場面を、「学習指導の準備と評価」「授業での教師の活用」「児童生徒による活用」に分類し、各場面ごとの活用メリットや留意点、具体的な活用法を例示しています。教師の活用例は、学年や教科別ではなく、文科省のICT活用指導力チェックリストの項目に沿って整理。活用を日常化するために必要な教室環境や研修のあり方にも言及しています。
【第4章】情報教育の体系的な推進
  • 情報教育の目標と系統性
  • 情報活用能力を身に付けさせる学習活動
「子どもに身につけさせるスキルを指導例と合わせて例示」 新学習指導要領のもとでの情報教育の系統性を解説します。各学校段階で身に付けさせる情報活用能力については、各教科や総合での具体的な指導例と合わせて例示。情報教育の研究校は特に注目しておきたい章です。
【第5章】学校における情報モラル教育と家庭・地域との連携
  • 情報モラル教育の必要性
  • 情報モラル教育の具体的な指導
  • 教員が持つべき知識
  • 家庭・地域との連携
「最新データで見る子どもの実態と情報モラル指導の必要性」 情報モラル指導の必要性を、児童生徒のICT活用の実態から捉え直すとともに、小・中学校の各教科での指導例を詳しく示しています。このほか、情報モラル指導のベースとして教員が知っておくべき知識や情報も整理。後半は、学校と家庭・地域が最新の情報を共有しながら、効果的に連携していくためのポイントを挙げています。
【第6章】校務の情報化の推進
  • 校務の情報化の目的
  • 校務の情報化が生み出す学校の変容
  • 校務の情報化の進め方モデル
  • 校務の情報化を進める上での留意点
「校務の情報化によるメリットと「進め方」のモデルを例示」 情報機器の整備率は地域間で差があるため、ここでは校務の情報化の考え方を中心に解説しています。管理職や教員、養護教諭、事務職員など、職種別に見た情報化のメリットのほか、校務の情報化に学校全体で取り組む際のモデルも示しています。教員用PCの導入を業務の効率化に上手くつなげるポイントなど、情報化を推進中の学校や地域にとって参考になる情報も。
【第7章】教員のICT活用指導力の向上
  • 学校における具体的なICT環境整備
  • 学校におけるICT環境整備の推進、運用
「ICT活用指導力を効果的に高めるためのアイデア」 前半は「チェックリスト」の各項目を詳しく解説しながら、ICT活用指導力の重要性を再確認します。後半は、校内、個人、教委や教育センターによる研修を組み合わせた計画的な研修方法を解説します。
【第8章】学校におけるICT環境整備
  • 教員のICT活用指導力の重要性
  • 効果的な研修
「学校に必要な情報機器とネットワークのあり方を解説」 学校のICT環境整備(ハード、ソフト、ネットワーク)のポイントを具体的に解説。普通教室の整備のあり方を詳しく述べているのが今回の「手引」の特徴です。また、必要な予算の確保についても1節を割いて記述しています。
【第9章】特別支援教育における教育の情報化
  • 小・中・高等学校での特別支援教育における情報教育とICT活用
  • 特別支援学校における障害種別の情報教育とICT活用
  • 第3章~第8章の内容を踏まえた特別支援教育における配慮点
「指導例から理解する特別支援教育とICTの関係」 小・中・高校での特別支援教育におけるICT活用と、特別支援学校での情報教育とICT活用を取り上げています。発達障害のある児童生徒へのICTを活用した教育支援の手法については、具体的な指導例を挙げて解説します。
【第10章】 教育委員会・学校における情報化の推進体制
  • 教育の情報化の推進体制
  • 管理職に求められること
「教育・学校CIO役割を軸に情報化の推進体制を解説」 教育の情報化を推進していくための、教委と学校の体制づくりを解説。教委については、情報化の統括責任者としての教育CIOの機能を中心に、学校については、学校CIOとしての管理職の役割と校内体制づくりを重点的に記述しています。後半には、管理職(=学校CIO)のための自己 評価リストも添付。管理職のリーダーシップの重要性を強調しています。

(2009年7月掲載)