学習指導要領/教育の情報化

教育の質を高めるためのICT活用、環境整備を

「GIGAスクール構想」によって、児童生徒1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備に向けた検討が全国各地で進んでいる。教育の質を高めるためのICT活用、ICT環境整備に立ち返って考えたい。

授業の質を高めるために学習者用PCを使いたい

「GIGAスクール構想」で期待されることの一つに「学びの個別最適化」がある。これは学習者用のデジタル教科書やAI学習ドリルソフトなどでよくいわれる話だが、児童生徒1人1台の端末で学習することで、1人ひとりの特徴や実態に応じて学習課題や教材に取り組むことができ、最適な学びが実現できる可能性がある。

これらがICTの有効な活用方法の一つであることに間違いはないだろう。けれども「個別最適化」のキーワードが先行しすぎたためか、児童生徒1人1台というと「1人ひとりが個別で端末を使う」というイメージが先行してしまっているように思う。

当然のことだが、授業には個別の場面だけでなく協働や一斉の場面もある。グループで1台、もしくは2台使ってディスカッションするという場面もあるだろう。個別の活用に捉われるのではなく、さまざまな学習場面の中に、一斉、協働、個別の学習形態を効果的に取り入れ、そこに学習者用コンピュータを有効に活用することで授業の質を高めることこそが重要だと筆者は考える。新学習指導要領のめざす「主体的・対話的で深い学びの実現」に向けて、1人1台の環境をどのように生かしていけるのか。その議論がますます大事になってくるだろう。

学習活動を想定して開発された学習活動ソフトの活用を

児童生徒1人1台の端末を授業の質を高めるために活用したい。そのために役立つのが、児童生徒が学習活動でコンピュータを使うことを想定して作られた学習活動ソフトウェアだ。例えば、学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』には簡易なプレゼンテーション資料を作成できる[発表ノート]がある【図1】。[発表ノート]は、我々大人が普段利用している文書作成やプレゼンテーションのアプリと違い、ツール上から[カメラ]を直接起動し、撮影から挿入までシームレスに行える。児童生徒が手間をかけずに自分の考えを表現できるように作られていて、互いの考えを手軽に伝え合える良さがある。

プレゼンテーションについていえば、「プレゼンテーション資料を作成するため」ではなく、「プレゼンテーションの力を育むこと」をめざして研究開発した[シンプルプレゼン]の活用を勧めたい【図2】。児童生徒が要点を整理し、自分の考えを簡潔にまとめて伝える力、ひいては情報活用能力の育成につながる。

そして、児童生徒が自分の考えを形成し、表現したものは、教師が[比較表示]や[画面一覧]で提示するとよいだろう【図3】。多様な考えを理解し、あらためて自分の考えを整理することができる。加えて、グループでスライドを共有し、協働編集できる[グループワーク]や自分の考えや立ち位置を表明し、学級で視覚的に共有できる[ポジショニング]を使えば、全体の議論場面で「集団としての考え」を形成することに大いに活用できるだろう【図4】。

児童生徒の思考力・判断力・表現力の育成、そして集団として考えを形成する過程までを踏まえて開発されている「学習活動ソフトウェア」を、ぜひ有効に活用してほしい。

児童生徒が自ら判断して、鉛筆やノートのように端末を使う

今後、「児童生徒一人1台環境整備・運用・活用」がますます加速していくだろう。その際に、いつまでも教師のコントロール下でしか使えないのであれば、それは宝の持ち腐れになる。「児童生徒が使いたい時に使いたいように、自ら判断して鉛筆やノートのように使っていく」ことこそ、望まれる姿だと筆者は考える。その際に、研修は単なる操作習得研修に終わることなく、児童生徒が自らの判断で最大限活用できるような情報活用能力の育成について再考していく機会を設けることも急務である。

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(2020年6月掲載)