研究会・セミナー

高森町小中学校研究発表会 全小中学校4校で連携し研究発表 ICT活用で、思考力・表現力を育成

オシロスコープソフトで太鼓の音の波形を計測熊本県の最東端に位置する高森町は、町内全小中学校4校がそれぞれの地域の特長を生かしつつ、「高森町新教育プラン」のもと、連携、協力しながらコミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育や、ふるさと教育を展開されています。

このほど、平成25年度 熊本県教育委員会指定『ICTを活用した「未来の学校」創造プロジェクト推進事業研究推進校』として、4校合同で「高森町小中学校研究発表会」を開催(会場:高森町立高森中学校)。タブレット端末を活用した授業公開やポスターセッションなどが催され、研究成果を報告されました。

町内全小中学校にタブレット端末を整備

熊本県高森町の政策「高森町新教育プラン」の一環に「ICT環境の整備」が挙げられており、平成24年度よりタブレット端末や電子黒板、実物投影機などのICT機器の配備や無線LAN回線、光ファイバー回線の敷設、デジタル教科書をはじめとしたデジタルコンテンツの導入などを積極的に進められている。

研究の構想タブレット端末は、高森東小学校では高学年で、高森東中学校では全学年で1人1台の環境。高森中央小学校や高森中学校では学校で40台所有され、必要な授業で必要な台数だけ活用されている。

このような充実した環境のなか「児童生徒の思考力・表現力の育成を図る学習指導の工夫・改善~小中連携を基盤とした学力向上に直結するICT活用」をテーマに、熊本県教育庁教育政策課の指導のもと、町内4つの小中学校が連携・協力しながら研究を推進。研究主題の実現に向け、「基礎基本の確実な習得」「言語活動の充実」「交流・連携の推進」の3つの視点、さらに授業改善、ICT活用の視点で実践されてきた。(右図)

公開授業では、町内全小中学校4校の児童生徒が集まり、5つの実践を実施。中学校の理科、数学では、1人1台のタブレット端末とタブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』を活用した授業が展開された。

公開授業 理科、数学で、タブレット端末1人1台で実践

一人ひとりが予想し実験、結果を共有 中学1年 理科 「身近な物理現象 音の性質」 有働ほずみ 高森町立高森東中学校 教諭

タブレット1人1台で「全員」実験する

理科第1分野「身近な物理現象 音の性質」は、音についての観察、実験を通して、音は物体の振動によって生じ、その振動が空気中などを伝わることや、音の大小や高低は発音体の振動の振幅と振動数に関係することを学ぶ。

有働教諭は、音の高低によって波形の違いがあることを、タブレット端末にインストールされた「オシロスコープソフト」を使って読み取らせ、その理由を説明できることを目標に本時を展開された。教員が実験をして見せるのではなく、生徒自身に実験データの収集を主体的に行わせたいと考えられ、場面によって1人1台、1班に4台のタブレット端末を活用されていた。

デジタルワークシートで仮説を検討し、比較、共有

導入では、「音の高低によって、オシロスコープソフトの波形図はどう変わるか」と本日の課題を確認され、計測実験の前に仮説を立てさせた。

有働教諭は、『SKYMENU Class』の「デジタルワークシート」で予め作成された教材ファイルを教員機から学習者機に一斉配付。音の高い、低いで波形がどのように違うのか、生徒たちにマーキングで仮説を書き込ませた。

教員機のタブレット端末では、生徒たちの画面を一覧表示されており、仮説がまとまってきたことを確認すると、[比較表示]機能で生徒の考えを電子黒板に瞬時に提示。多様な考え方を共有された。

オシロスコープソフトで太鼓の音の波形を計測[比較表示]機能で2つの考え方を並べて提示

タブレットで生徒画面を確認しながら机間指導

仮説をクラスで共有した後、生徒たちは「ギター」「太鼓」など5つの楽器の中から各グループで2つ選び、音の大きさを揃える条件制御に注意しながら、タブレット端末で音の高低による波形図の違いを調べた。

計測後、グループごとで机にタブレット端末4台を並べて、計測結果の波形図を比較。生徒たちは顔を寄せ合って話し合いながら考察し、わかったことや根拠となる部分には[マーキング]機能で印を付けていった。

その間、有働教諭は教員機タブレット端末に表示されている「学習者機画面の一覧」で進捗状況を確認しながら、机間指導に回られた。

「全体の様子がひと目でわかる。座席順に生徒の画面が表示されるので、つまずいているグループの支援にも入りやすい」とご評価いただいた。

4台の画面を同時に提示し、考察を発表

考察を発表する際は、[比較表示]機能でタブレット端末4台の画面を電子黒板上に並べて提示。発表する生徒は、表示された4つの波形図を指しながら発表した。

「『SKYMENU Class』を使えば、仮説や考察を電子黒板上に提示し、素早く共有できる。また、画面を並べて提示できるので波形図を比較し、根拠を示しながら説明させられた。一人ひとりが実験したことで、言語活動が充実し、教科の学びも深まりが見られた」と感想を述べられた。

4台の画面を同時に提示し、考察を発表

タブレット端末で試行錯誤、思考力を育む 中学2年 数学「平面図形と平行」野村優資 高森町立高森中学校 教諭

自作教材で四角形の等積変形を何度も試行

「平面図形と平行」は、平行線を活用し、多角形を三角形に等積変形する過程で、「変形を行う三角形を見つけること」「辺の延長、図形の伸縮」など図形の見方や考え方を学ぶ。

野村教諭は、1人1台のタブレット端末と自作のデジタル教材で、図形を「伸ばす」「縮める」「移動する」などの操作を行わせることで、図形の動きを視覚的にとらえさせたいと考えられた。

また、試行錯誤しやすいデジタルのメリットを生かし、生徒の思考の深まりを期待して授業を計画した。

Microsoft PowerPointで自作された教材冒頭、三角形の「高さと底辺」が変わらなければ、形が違っても面積が等しいことを確認され、『四角形を面積を変えずに三角形にしてみよう』と本時の課題を示された。課題で利用するデジタル教材は、予め[教材配付]機能で学習者機に一斉配付されている。

生徒たちは、四角形の中の三角形を探し、補助線や平行線を引いて何度も変形。試行錯誤しながら問題を解いていった。

班で話し合い、多様な考え方を共有する

お互いに教え合う続いて、「1つだけでなくほかに等積変形をする方法がないだろうか」と班で話し合うように指示。生徒たちは相談しながら新しい等積変形の方法を探していった。

野村教諭は、タブレット端末を片手に机間指導に回られ、支援が必要なグループにアドバイスされた。紹介したい解答があれば、教員機に表示されている画面一覧の中から該当する生徒の画面をタップ。電子黒板上に生徒の画面を表示させ、さまざまな考え方をクラスで共有された。簡単な操作で瞬時に考え方や意見を共有できるのが『SKYMENU Class』のメリットだ。

タブレット端末で画面を確認しながら机間指導まとめでは、紙のワークシートに三角定規を使って練習問題に取り組ませた。生徒たちに補助線や平行線を実際に引かせることで、等積変形の定着を図られた。

野村教諭は、「タブレット端末を使うことで、試行錯誤する時間を十分に確保できた。生徒が自分で動かして思考できたことで、練習問題にも積極的に取り組んでいた。今後は、学習者用デジタル教科書やドリル教材などの開発に期待したい」と授業を振り返られた。

全大会で議論 つながる「高森町」、高めあう「高森町」

左から中川一史・放送大学教授、佐藤幸江・金沢星稜大学教授、薮田挙美・高森町立高森中学校教諭 山本朋弘・熊本県教育庁教育政策課指導主事全体会では、山本朋弘・熊本県教育庁教育政策課指導主事がコーディネータを務められ、中川一史・放送大学教授、佐藤幸江・金沢星稜大学教授、薮田挙美・高森町立高森中学校教諭が登壇。研究発表会を振り返り、議論が交わされた。

山本指導主事、薮田教諭は高森町の取り組みを解説。「高森町新教育プラン」のもと、熊本県内屈指の充実したICT環境のなかで、授業改善を基本としたICT活用、英語教育、NIE、ふるさと教育などを推進されてきた。小中一貫教育にも注力され、テレビ会議システムなどを生かして町内全小中学校4校がつながり、研究テーマを共有しながら取り組まれている。さらに、町内で9年間を見通したICT操作スキルの系統化や共通実践により、スキルの確実な定着を図られてきたという。

山本指導主事は「町内の学校間の距離が離れている中で、テレビ会議システムなどを活用して学校、地域、行政、教員がつながり、高め合っている。全国的に貴重なケース」と評された。

中川教授、佐藤教授は、公開授業を振り返り、タブレット端末活用のポイントを解説。佐藤教授は、生徒がタブレット端末上で何度も書いたり消したり試行錯誤して思考を深めている姿を挙げ、タブレット端末が思考ツールとして有効に活用されていたと評価。また、「どの単元で、どの教材を使うと、よりタブレット端末を効果的に使えるか。さらなる教材研究が必要」と話された。

中川教授は、「タブレット端末やICTだけで授業をするのではなく、あくまでアナログな授業を大事にした授業デザインが前提にあり、その中『キラリ』と光るICT活用を考えることが大切。さらに、ねらいと手だての整合性や板書の検討、児童生徒の実態を把握、教材の厳選、教科特性の理解など、当たり前のことを当たり前に行うことがICTの効果的な活用につながる。不易、流行を両方見据えながら、授業研究を地道に進めてほしい」とまとめられた。

(2014年4月掲載)