情報教育/プログラミング/情報モラル

携帯電話と子どもとたちと教育 中川一史(放送大学教授)

子どもたちの携帯電話利用の実態

携帯電話の所有状況文部科学省の「子どもの携帯電話等の利用に関する調査結果(2009)」によると、子どもたちの携帯電話の所有率は、小学6年生24.7%、中学2年生45.9%、高校2年生95.9%となっています。

  • 中学2年生の所有者の約20%が、1日50通以上のメールを送受信している。
  • 携帯電話利用によるトラブルとしては、チェーンメールや迷惑メールの割合が高い。
  • プロフ(自己紹介サイト)の公開経験がある中学2年生は13.9%、高校2年生では44.3%に上る。

などの実態が明らかになっています。

1日の平均メール送受信件数とプロフやブログの閲覧公開のグラフ
注意を要する、問題のある投稿サイト種別と投稿分類(個人情報等の掲載)のグラフ

また、文部科学省が2010年3月にまとめた「青少年が利用するコミュニティサイトに関する実態調査報告書」では、問題のあるサイトの状況が報告されています。

サイトへの投稿者の学校種別を見ると、中学生が約4割、高校生が約5割となっています。注意を要する投稿や問題のある投稿が確認されたサイトの種類は、掲示板型のサイトが9%を占めるにとどまり、プロフィールサイト(プロフ)が53%と顕著になっています。

問題点としては、「個人情報等」が載っているものが最も多くなっています(66%)。直接本人に連絡が取れるメールアドレス、電話番号、またプロフなどで顔写真を掲載しているものも少なくありません。

また、「教育の情報化に関する手引き」の「第5章 学校における情報教育/モラルと家庭・地域との連携」では、情報社会の特性と児童生徒の利用の実態について、次のように記載されています。

「教育の情報化に関する手引き」
(第5章 学校における情報教育/モラルと家庭・地域との連携)より(一部抜粋)

・・・多くの児童生徒はインターネット上の危険に対して無防備な状態で,しかも,自分が危険な目に遭いかねない状態であることも分からずに利用している。何気なくプロフィールサイト(プロフ)に書き込んだ個人情報や悪気のない掲示板への書き込みが世界中に発信されていることや,対面のコミュニケーションとは異なり,それは記録され,削除されない限りいつまでも残る可能性があること,悪質な書き込みが犯罪となったり訴えられたりするケースもあるとの認識も低い。インターネット上のトラブルに関係する被害者,加害者も低年齢化している状況にある。
 中でも,携帯電話は,児童生徒にとって最も身近なインターネット端末となったが,児童生徒は携帯電話の小さな画面が世界中に繋がっていたり,主に文字だけの情報交換となったり,従来のコミュニケーションとは異なることを理解しないまま利用している。したがって,情報教育/モラルには,即座に出遭うかも知れない危険をうまく避ける知恵を与えるとともに,一方では,情報社会の特性の理解を進め,自分自身で的確に判断する力を育成することが求められる。

・・・児童生徒が危険に巻き込まれる可能性がある掲示板やブログ,プロフ,出会い系サイトなどがあるということとその危険性を理解する必要がある。そして,これらのサイトを見ることが良いか悪いか判断できないままに,児童生徒に口コミで広がり,保護者や教員が知らないところで利用が増加している。

・・・また,一見,出会い系サイトや自殺サイトではなくても,チャットやネットゲーム,プロフなどが,使い方によってはそれらのサイトと同様の機能を果たしていたり,画像にアダルト画像を使うなどゲームの内容や構成が不適切であったり,児童生徒の興味を引くプレゼントの送付や占いの条件として個人情報の入力を巧みに誘引するサイトなども増えてきている。

携帯電話の情報モラル指導の必要性

新しい「学習指導要領」では、「総則」において各教科等の指導の中で「情報モラルを身に付ける」ことが記されています。さらに、「学習指導要領解説(道徳)」では、下のように、携帯電話について指導の必要性が明示されました。情報モラル、とりわけ携帯電話については、学校教育において待ったなしの状況なのです。

学習指導要領解説(道徳)より(一部抜粋)

  • 小学校
    児童は,学年があがるにつれて,次第にそれらを日常的に用いる環境の中に入っており、学校や児童の実態に応じた対応が学校教育の中で求められる。
  • 中学校
    生徒は、それらを日常的に用いる環境の中に入っており、学校や生徒の実態に応じた対応が学校教育の中で求められる。

また、学校だけでなく、家庭や地域における取り組みも重要です。まず、保護者が携帯電話の利便性や危険性について十分に理解した上で、必要性を判断するとともに、携帯電話を持たせる場合には、家庭でルールづくりを行うなど、児童生徒の利用の状況を把握し、学校・家庭・地域が連携することも必要です。

先日、ある学校の授業で携帯電話のモラルに関する授業がありました。学校ではちょうど参観日にあてて、多くの保護者の方が参観していました。授業後、ある保護者の方が、「我が家では、子どもが携帯電話で何をやっているかまったく知りません。自主性を重んじていますので」とおっしゃっていました。しかし、筆者は思わず「それは自主性ではなくて放任でしょう?」と思いました。関心を持たない、知らないということと、子どもの自主性を尊重することは違うと思います。

学校でも、携帯電話で何ができるのか、どんな問題があるのか、何に配慮しなくてはならないのか、教師がまったく知らないという例も少なくありません。携帯電話を学校に持って来ないから授業で扱わなくても良いという時代ではないのです。

携帯電話を取り巻く友だち関係

有害情報もさることながら、今、携帯電話にまつわる友だちとのコミュニケーションでもさまざまな懸案が見られます。携帯電話を持つ子どもたちのほとんどがメールを利用しており、トラブルの多くはコミュニケーションに起因しています。

「学習指導要領解説」が例示するように、相手の顔が見えないメールと、顔を合わせての会話との違いを理解し、メールなどが相手に与える影響について考える — といった指導が必要になるでしょう。

また、子どもたちの間には、友だちにメールを返すのに「5分ルール」なるものが存在します。つまり、友だちからメールが来たら5分以内に返さないと、無視していることになるというのです。そのため、夜中になっても、おちおち寝ていられないということも起きています。子どものメール利用やネットいじめについても、学校や家庭で把握しているのは、氷山の一角でしょう。これらの対策も今後の課題となっています。

まずは、学校でもできる限り時間を確保して、携帯電話に関する情報モラルの授業を実施していただきたいと思います。

「学習指導要領解説」では、指導に際して「コンピュータによる疑似体験を授業の一部に取り入れる」といった記述があります。本実践ガイドでは、コンピュータを利用した疑似体験ツールとして「SKYMENU Pro 仮想携帯」を活用した授業案を紹介しています。

コミュニケーションの感覚を育てることは、情報教育/モラルの一つのポイントでしょう。こうした感覚は、繰り返し体験するなかで培われていくものですから、「仮想携帯」のように学校の中で疑似体験する機会を提供できることは、指導の充実につながる大きな要素だと思います。

本実践ガイドでは、「コミュニケーション」「プロフ」「迷惑メール」「パケット料金」「なりすまし」「占いサイト」をテーマにした指導案を紹介しています。

特に子どもたちがトラブルに遭いやすく、問題が指摘されている「コミュニケーション」「プロフ」をテーマにした内容を『モデル授業』としました。先生方に取り組んでいただきやすいように、掲示教材、配付教材なども充実させています。

ご参考いただき、実践につなげていただければと思います。

SKYMENU Pro 仮想携帯メール機能 仮想携帯メール—携帯メールの適切な使い方、問題点を疑似体験— 仮想携帯Web—安易に個人情報を発信しない態度を身につける—

(2009年2月掲載)