情報教育/モラル

教科「情報」実践報告

オープンソースを活用したインターネットコミュニティの授業について

―― 授業環境の構築の提案とその実践

能城 茂雄(東京都立上野高等学校 教諭)

能城茂雄

【あらまし】

平成25年度に新学習指導要領「情報」が実施される。改訂後に新設される「社会と情報」の内容と取り扱いの解説で、特に「情報通信ネットワークの活用とコミュニケーション」では、実習を中心に扱い、情報の信憑性や著作権への配慮について自己評価させる活動を取り入れることを推奨している。しかし、現実には授業の中でインターネットコミュニケーションサイト(以下、コミュニケーションサイト)を利用し、体験させることはコミュニケーションサイトを運営する企業や、実在するユーザとの関係性などを考えると非常に困難である。そこで、オープンソースソフトウェアを活用して、学校内に限定したコミュニケーションサイトを構築することを考えた。本稿では、サイトを構築し実践した内容を報告し、その有効性を述べる。

【1】はじめに

平成25年度から実施される新学習指導要領の「2 改訂の趣旨」において、情報及び情報機器等の活用が社会生活に必要不可欠な基盤として発展する昨今の状況を踏まえ、情報通信ネットワークやメディアの特性・役割を十分に理解し、安全に配慮し、情報を適切に活用できる能力をはぐくむ指導を一層重要視している。

これまでにも、様々な高等学校の授業で実践された情報の指導内容を確認すると、校内のWebサーバを活用した掲示板(1)や、Wikiを利用したコミュニケーションサイトによる報告(2)が多くされてきている。

しかし、2008年に大手ソーシャルネットワーキングサービス運営会社「mixi」が、年齢制限を緩和したのをきっかけにして、高校生のコミュニケーションの方法がソーシャルネットワーキングサービス(以下、SNS)へと大きく移行した。著者の授業でも、このような変化を踏まえて、サービスの特色について取り上げてはいるが、説明のみに留まっていた。

そこで、多くの生徒がSNSのようなコミュニケーションについて実際に体験し、理解を深めるために、授業で実習する環境を構築することを考えた。本稿では、その授業環境を構築する方法を提案し、実践に際しての注意事項を述べる。

【2】インターネットコミュニケーションの現状

Webサービスを活用した双方向のコミュニケーション方法には、次のような種類がある。

[1]Weblog(ブログ)
 [2]SNS(ソーシャルネットワークサービス)
 [3]BBS(掲示板)

上記の方法は、携帯電話やスマートフォンの普及とともに一般化し、生徒たちの日常生活の中で気軽にコミュニケーションがとれる情報基盤として浸透し、進化し続けている。

これまでに、小中学校で受けたICT教育の内容や家庭の環境によって、このようなコミュニケーションサイトとの関わり方に慣れている生徒も存在するが、まったく関わったことのない者も存在する。後述のような生徒は、メディアリテラシーに無防備な状態で情報発信を行う傾向があるため、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなる。そのため、授業内でこれらのコミュニケーションサイトを実際に利用し、メディアリテラシーを習得させたいが、以下のような問題点があるため、実在するサービスを利用することは非常に難しい。

一般ユーザとのトラブルに対する責任問題
 (運営する企業側との詳細な調整が難しい)
外部ネットワークとの接続性
 (ファイヤウォールの設定やNAT問題)
生徒の行動を管理者側の視点で把握できない

そこで、これらの懸念を払拭し、より安全性に配慮したコミュニケーションサイトの構築を試みることについて考えた。

【3】オープンソースソフトウェアを活用コミュニケーションサイトの構築について

3.1 Webサービスを行うサーバについて

各高等学校によって情報科をとりまく環境は異なる。その一方、ほとんどの場合において、パソコン教室やPCLL教室には、マイクロソフト社の販売するWindowsサーバが導入されている。しかし、Windowsサーバは保守契約等の関係より大幅に設定を変更することは困難な現状がある。

そこで、著者の提案では、Windowsサーバに変更を加えずに、まったく別のサーバを準備する。この方法 では万が一システム上でトラブルが発生した場合でも、他のネットワークへの影響がない。

また現在では、価格を抑えるために、オペレーティングシステム(以下、OS)をインストールせずに販 売しているサーバ用コンピュータが安価で購入できるため、手軽にコミュニケーションサイトの構築に着 手できる。

3.2 サーバ用のOSについて

サーバ用のOSには、オープンソースソフトウェアの中でも多くの導入実績のあるLinuxを採用した。ソフ トウェアを購入する費用を抑えることを念頭に置きつつも、動作の安定性やソフトウェア上に発生したバ グを確実に修正する信頼性の高さ等を考慮した結果、Linuxのディストリビューションの一つであるDebian GNU/Linuxをサーバ用のOSとして選択した。

3.3 サイトの構築で導入したソフトウェア

Debian GNU/Linuxには、サーバとして必要な基本となるソフトウェアは標準で用意されている。そのため、Webサービスに必要なApacheやミドルウェアとなるMySQL、PHPといった関連のソフトウェアを簡単に導入することが可能である。

また、これらソフトウェアの導入について、詳細な手順は、別添資料(著者のWebサイト(3))を参照されたい。

【4】おわりに

図1 コミュニケーションサイトを利用する生徒今回は、オープンソースソフトウェアを活用したコミュニケーションサイトの構築で、LinuxをサーバOS として、実際に授業で使用するSNSサービスとして、OpenPNEを導入した授業実践を行った。他にも、オー プンソースソフトウェアとしては、NetCommonsやMovableTypeといったものがあり、構築したいコミュニケーションサイトの種類によって、自由にソフトウェアを選択し、実践を行うことができる。これは、リアリティのある教材で授業を行いたい教員にとっては非常に大きなメリットである。

図2 SNSの画面実際に授業で、構築した環境を利用して授業を行ったところ生徒たちは、SNSを疑似体験することで、コ ミュニケーション能力・情報の創造力・発信力等の倫理的な態度を身に付けるための経験ができた。

以上のように、制限のある環境においても、柔軟に授業に必要な環境を用意し、情報通信ネットワーク やメディアの特性・役割を十分に理解させ、安全に配慮した上で、情報を適切に活用できる能力をはぐく むことが重要だと考える。

参考文献

  1. 小松一智:掲示板を利用したネットワーク基礎の導入、エデュカーレ情報実践報告セレクション、p42-p43、第一学習者(2008年)
  2. 福原利信:「情報科」授業実践を振り返って、情報教育資料28号、p5-p8、実教出版社(2010年)
  3. LennyでOpenPNEをセットアップ:http://noshiro.shigeo.jp/d/2009/11/lennyopenpne.html

※第4回全国高等学校情報教育研究大会大阪大会要項から転載
(2012年3月掲載)