情報教育/プログラミング/情報モラル

教科「情報」実践報告

結果を共有することで学習の
深化を図るシミュレーションの授業

―― 情報の科学での授業展開につなげるために

三井 栄慶(神奈川県立茅ヶ崎北陵高等学校 教諭)

三井栄慶

【要旨】

普通教科情報の情報Bではモデル化とシミュレーションの学習を行うが、シミュレーションの作業は個人作業になってしまい、出来不出来が表れ、学習者の理解達成度に差が生じてしまう。
そこで、シミュレーションをグループで行い、その結果を発表し、クラス全体で共有することにより学習者の理解達成度に差が出ないようにすることを試みた。授業を行った結果、学習内容の深化が見られ、対象に対する興味関心が強くなることを見出すことができた。

【1】はじめに

普通教科情報の情報Bではモデル化とシミュレーションの単元を扱う。シミュレーションの作業は授業実践においては個人作業になってしまうことが少なくなく、学習者のコンピュータリテラシによっては出来不出来の差が生じてしまう。特にシミュレーションにおいては完成しておかなければ考察することができず、本来の単元の目標を達成することができない。

そこで、シミュレーションの結果を発表し、クラス内で共有することにより、学習者の理解達成度に差が出ないようにすることを試みた。

【2】神奈川県立茅ヶ崎北陵高等学校

私の勤務校である神奈川県立茅ヶ崎北陵高等学校は進学校でありながら、部活動や学校行事の積極的な参加を勧めており、これを3本の柱とし、バランスの良い人間形成を行うことを目標としている。

2.1 情報の授業

コンピュータ教室勤務校は1学年280人、7クラスの生徒が在籍している。情報は普通教科情報の情報Bを1学年時に履修する。単位数は2、授業時間は45分であり、2コマ連続ではなく、1コマずつ独立して授業を行っている。授業に際しては教科外の教員がアシスタントとして補助に入っていただいている。使用している教科書は実教出版の「最新情報B」である。

コンピュータ教室はWindows端末が生徒用41台、アンプなどの放送機器、プロジェクタなどが完備されている。

【3】授業単元について

今回紹介する授業の単元はモデル化とシミュレーションの部分である。単元ごとの授業の内容を以下の表1に記してある。

表1 モデル化とシュミレーション 単元計画
授業内容 授業時間
モデル化を理解する 3時間
シミュレーションを理解する 2時間
数式モデルを構築する 4時間
確率モデルを構築する 3時間
シミュレーション演習 4時間
確率シミュレーション演習 3時間
待ち行列練習 2時間

今回紹介させていただく授業は「シミュレーション演習」の内容となっている。

3.1 授業概要

数式モデルを用意し、パラメータを変化させることによって変化する様子を確認し、どのような理由から変化するかを考察し、発表するという流れで行っている。

学習者の前提知識としてはモデル化の概念を理解していることと、Excelの基本操作(計算・絶対参照・相対参照・グラフ表示)である。

授業の内容は以下のようになっている。

  1. 1. 数式モデルの解説(5分)
  2. 2. シミュレーション(15分)
  3. 3. 発表(15分)
  4. 4. 考察(10分)

3.1.1 数式モデルの解説

本時の授業で取り扱う数式モデルの概説を行う。本時より前の授業で数式モデルそのものの解説は十分に行われている為、確認程度にとどめる。

3.1.2 シミュレーション

シミュレーションを行うさいには4人1グループ単位で行う。数式モデルを Excel を使って数値の計算およびグラフの表示を行う。グラフの表示が終わった後は「あるパラメータを変えることによってグラフが大きく変化する。その理由を考察せよ」といったような問題を取り上げているので、グループで考察し、後の発表をどのようにするかもこの時間で考える。

3.1.3 発表

発表はグループ代表が1名クラスに対して発表を行う。この発表ではプレゼンテーションソフトは利用せず、グラフの結果を表示し、考察結果を説明する。

また、発表を聞いている側はあとの考察に備えて各グループが発表している内容のメモを取るように指導する。

3.1.4 振り返り

発表を終えたら各グループで考察内容をまとめ、各個人シートに記入し、授業終了時に授業担当に提出する。

その際、本時の授業の自己評価も記入させる。

【4】学習者の反応

  • ・ 理解達成度に差がでないことがみられた
  • ・ 学習者の新たな発見を促すことができた
  • ・ モデル化に対する興味関心の増加
  • ・ プレゼンテーションスキルの増加
  • ・ 聞く姿勢の態度が良好になっていった

当初の目標は学習者の理解達成度に差が出ないことであったが、シミュレーションを発表させることにより学習者に次の反応が得られた。

4.1 理解達成度の差

グループでシミュレーションに取り組むことにより、コンピュータリテラシによって差が出ることが少なくないシミュレーションの分野においても理解達成度の差が少なくなっていることが授業後のアンケートから見出すことができた。

4.2 新たな発見の増加

発表で出てきた結果を他のグループが追操作することにより、結果を再認識するだけでなく、新たなパラメータを設定することにより新しい発見を促していることが見出せた。

4.3 モデル化に対する興味関心の増加

グループで協力してシミュレーションを行うことによってコンピュータリテラシの面での不安を払拭することができ、シミュレーションの敷居を下げることができた。前向きに取り組めたという学習者の声を数多くアンケートから見出すことが出来た。

4.4 プレゼンテーションスキルの増加

実験結果を論理的に発表する機会が多くないなか、シミュレーションの結果を発表することにより、論理的な説明ができるようになったことが見出せた。

4.5 聞く姿勢の態度が良好に

自分の操作だけでとどまるよりも、他人の結果を聞いて考察をまとめるほうがよい結果を導けることを理解させることができたと同時に、授業の回数を進めることで発表時の緊張感を高めることができた。

【5】おわりに

新課程の共通教科情報の情報の科学ではモデル化とシミュレーションの学習で問題解決を行うことを鮮明に打ち出している。

シミュレーションの授業で発表を織り交ぜ、結果を共有することは学習者の理解だけに留まらず、意欲関心も高めることが出来たように見出せる。

来年からはより問題解決という視点に立って、単元の目標を設定し、単元の終わりは発表、結果を共有したあと振り返るというものにしていきたい。

参考文献

  1. (1)文部科学省検定済教科書 最新情報B 実教出版(平成22年)

※第5回全国高等学校情報教育研究会全国大会(千葉大会)要項から転載
(2012年11月掲載)