情報教育/モラル

コンピュータ教室で取り組むアクティブ・ラーニング

小原格 東京都立町田高等学校主幹教諭東京都立町田高等学校の教科「情報」を担当される小原 格 先生は、生徒たちが主体的に課題に取り組み、協働して教え合いながら解決を図る「アクティブ・ラーニング」を取り入れて授業を展開されています。コンピュータ教室で取り組むアクティブ・ラーニングとは何か。また今後の教科「情報」におけるコンピュータ教室の必要性やその在り方についてお話を伺いました。

教科「情報」で育む「問題解決能力」

本校の生徒たちは、決められたルールに従ってまじめに取り組むことは得意ですが、与えられた課題に対して獲得した知識をもとに自ら考えたり、判断したりすることは決して得意とは言えません。

今後、ロボット技術が発展すれば、人間の就く仕事は変わると言われています。これまでの社会では「言われたこときちんと遂行できる能力」が重要視されていましたが、彼らが仕事に就くころには、ロボットにはない「思考力」「判断力」「表現力」が重要になります。自分の考えを発信できる能力や、物事を科学的に理解して根拠を持って説明できる能力、そしてさまざまな知識を活用して問題を解決できる能力が、今以上に求められるようになっていくのではないでしょうか。

教科「情報」の授業は、直接的に「問題解決」を扱う教科です。情報を切り口に生徒たちに「問題解決能力」や「思考力」「判断力」「表現力」を身につけさせたいと考えており、科目は問題解決や情報の科学的な理解を中心に学ぶ「情報の科学」を選択しています。

今後さまざまな課題について探究していく彼らは、自ら課題を発見して解決するために情報や情報技術を効果的に活用する必要があります。そのバックグラウンドとして「科学的な考え方や知識」は、身につけさせるべき重要な力だと考えています。

動画や資料をもとに生徒1人ひとりが思考し、学び合う

本年度は「アクティブ・ラーニング」の実現をめざして、2学期から生徒たちが主体的・協働的に取り組むスタイルで授業を展開しています。具体的には、授業の冒頭で示した課題に対し、与えられた資料をもとに生徒自ら調べて、周りの生徒と教え合い、協働しながら解を導き出すという流れです。

生徒が課題を解くために必要な資料は、昨年度まで授業で提示していたパワーポイント資料や私が自身で撮影した短編の解説動画を用意しています。これらを、予め中身を編集できないように設定された共有フォルダ上に配付しています。彼らはYouTubeやニコニコ動画を日常的に使いこなす世代だからか、映像から情報を得ることにほとんど抵抗がありません。自分に必要な部分だけを視聴し、不要な部分は飛ばすといったように、うまく動画を扱って能率的に情報を集めています。

このようにアクティブ・ラーニングでは、学習者が主体となって情報を集めて理解することが重要です。どうしてもわからない場合だけは、先生に質問してもよいことにして、まずは用意された教材を見て自分で考えるように指導しています。そして、1人で考えるだけではなく、周りの友だちにも積極的に相談したり教え合ったりするように伝えています。

実際に授業を行ってみて感じたのは、生徒に個別で取り組ませる場面と、生徒たちが教え合って力を合わせて考える場面を、教員がきちんとコントロールすることが必要であるということです。1人ひとりが自分の意見を持っているかどうかで、その後のグループ議論の深まりが変わります。

「能力」や「態度」が備わっていなければ、
主体的・協働的な学びは成立しない

教科「情報」の年間指導計画の策定にはとても気を配っています。特にアクティブ・ラーニングを取り入れた授業は、1学期から成立するものではありません。主体的・協働的に学習を進めるために必要な「能力」や「態度」が下地として備わっていなければ成立しないと感じています。

例えば、2学期に行われることが多い「モデル化とシミュレーション」の授業を前倒しして、1学期中に行っています。この章では、身の回りのさまざまな現象を生徒たちに分析させ、モデル化して考えさせることで、問題解決のための考え方や段取り、役割分担などを理解させることができます。2学期以降に、生徒たちがグループで協働作業に取り組む際に必要な、これらの能力や態度を1学期中に身につけさせることを意図しています。

また、コンピュータや授業で利用するソフトウェアの基本的操作の習得も1学期に行います。例えば、キーボード入力スキルの向上のために、デジタルのワークシートを使い、授業のメモはキーボードで入力させています。このとき、板書や資料を丸写しするのではなく、自分で見たり、聞いたりして理解したことをまとめるように指示しています。

スマホ世代の生徒たちにとって、コンピュータはすでに「特別なツール」に

「私はコンピュータが苦手です」

「スマホ世代」の彼らにとって、もっとも身近なコンピュータはスマホです。そして、彼らはスマホを片手に「私はコンピュータが苦手です」と言うのです。彼らにとってコンピュータ教室のコンピュータも家庭にあるコンピュータも、恐らく「特別なツール」として認識されているのではないかと感じています。

とはいえ、彼らが社会に出る数年後になっても会社などで利用されているコンピュータが、スマホやタブレット端末に変わっていることはないと思います。スマートデバイスが仕事の主要なツールになるのは、もう少し先の話だと考えています。

彼らが社会に出てから困ることがないように、彼らにとって、もはや「特別なツール」となっているコンピュータに触れる機会を、われわれ教員が意識的に作ってあげなければならないと思います。本校では、昼休みや放課後などの時間にコンピュータ教室を開放して課題の続きや自主学習などで気軽に利用できるように配慮しています。

これからの教科「情報」とプログラミング教育

教育課程企画特別部会では、次の学習指導要領改訂にむけた議論が始まっています。私が参加する情報ワーキンググループでは、これからの教科「情報」の在り方が話し合われています。

現在の国際社会におけるわが国の立ち位置を考えれば「プログラミング」が必要な学習内容であることは明らかです。IoTという言葉のとおり、近未来ではあらゆるものがインターネットにつながり、コンピュータにより制御されることになると言われています。また、数十年後には、人工知能が人類の知能を超えるとも言われています。コンピュータのしくみを理解する上でも、プログラミングを学習する重要性は高いと感じています。

平成28年1月に行われた第4回の会議では、新科目案のたたき台として、共通必履修科目「情報Ⅰ(仮称)」と選択科目の「情報Ⅱ(仮称)」がおおまかな内容とともに提案されました。これらの案をもとに、より効果的な科目内容にすることが、今後の大きな議論になろうかと思います。

コンピュータを使う場面を意識的に作らなければならない。

プログラミング教育には、PC教室環境やキーボード入力が必要

プログラミング自体は、タブレット端末などでも体験できるアプリなどがありますが、高校生レベルのプログラミング教育においては、キーボードによる文字入力は必須だと考えています。

今後、教科「情報」にプログラミング教育の内容が加わるなら、生徒たちはこれまで以上にコンピュータに慣れ親しみ、その特性を知らなければならないでしょう。そして、プログラミングには1人1台のコンピュータが設置され、集中して思考できるコンピュータ教育の環境が必要だと考えています。ある程度の大きさのディスプレイも確保する必要があると思います。

一方で、全国各地でタブレット端末の導入が進んでいます。本校にも昨年9月にタブレット端末43台と授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』が整備されました。現在は、体育や家庭科など実技系の教科を中心に各教科でのタブレット端末の活用が広がっています。まだまだ手探りですが、各教科の指導において、生徒たちの思考を広げるツールとして、そして、生徒の学力向上の一助となるツールとしての効果にも期待しています。

(2016年1月取材 / 2016年4月掲載)