情報教育/モラル

教科「情報」実践報告

「グループで行う問題解決」実践報告

小原 格(東京都立町田高等学校 主幹教諭)

小原格 東京都立町田高等学校 教諭

新学習指導要領「情報の科学」において「情報通信ネットワークと問題解決」とし、年度末に15時間の総合的な実習を行った。ここでは、従来の情報Aと比較しながら、どのように問題解決実習を進めてきたかを簡単に報告するとともに、そこから見えてきた問題解決学習への取り組みの変化について述べる。

【1】はじめに

筆者の勤務校である東京都立町田高等学校(以下「本校」という)では、旧課程時の1学年に「情報A」を、新課程の現在では「情報の科学」を2単位設置している。この稿では、旧課程時「情報A」と現在の「情報の科学」それぞれで実施した問題解決学習を比較することを通して、特に学年末に行う「グループで行う問題解決学習」がどのように変化したのか、ということを簡単に述べる。

【2】「情報A」における問題解決

2.1 年間の構成

情報A実施時における問題解決学習の年間構成を図1に示す。

図1 「情報A」における問題解決学習構成

情報A自体が、日常的な学習課題を題材とし、情報活用の実践力を切り口に学習を進めていく科目であったため、問題解決学習に関しても、身近な問題を中心に配置した。具体的には「問題の発見」「問題の分析」「解明・解決法の考案」「プロジェクト形式Ⅰ」「プロジェクト形式Ⅱ」という形式で、順序性を意識しステップアップしつつスパイラル方式となるように構成した。

2.2 情報Aでの「総合実習」

情報Aでの問題解決学習は、情報機器を積極的に用いるということが中心の1つであったため、「問題の発見」「分析」「解決方法の考案」や、実際の「プロジェクト学習」の過程で積極的に情報機器を活用できるように配慮し、年度末の総合実習時には、ほとんどの生徒が大きな不自由なく情報機器を活用できるようになっていた。また、問題解決に必要なそれぞれの場面について、あえて意識しながら行うことを通じて、「事実(現象)」「想像(原因)」「解決策」「実践」という流れをイメージできたのは、論理的思考力を養う上で大きかったと考える。また、プロジェクト形式の実習を2回行うことで1回目の失敗を2回目の実習に生かすことができ、PDCAの実践にもつなげられたのでは、とも考えている。

特に、年度末の「総合実習」では、グループでテーマを自由に決め、それについて情報機器を活用しながら研究するスタイルであり、生徒は「身近な疑問」を「解明」するために、アンケートやインタビュー、実験、実地踏査などを積極的に行い、非常に楽しそうに実習を行っていた。テーマ自体に制限がなかったため、「総合的な学習」のような位置づけにもとらえられがちであったが、「情報機器を意識的に使い」「必ず最後にスライドを用いて、全体にプレゼンテーションを行う」という「縛り」をつけることで、情報の授業としてとらえていた形であった。

【3】「情報の科学」における問題解決

3.1 年間の構成

情報の科学における問題解決学習の年間構成を図2に示す。

図2 「情報の科学」における問題解決学習構成

「情報の科学」になると、その学習内容からもわかるように、「問題解決」や「問題解決の進め方」そのものについて多くの時間が配当されるようになる。そのため、授業も、「問題」そのもののとらえ方や、「解決する」ということ、問題を明確化する重要性や、そのための手法などについても学習する。グラフ、図解なども、情報Aでは「情報伝達の工夫」という切り口であったが、情報の科学では「問題解決のための情報分析」という切り口のもと、再構成されている。

特に本校では、問題解決そのものを学習する「意義」「発想法」「アイデア整理」などに4時間を配当しているところが特徴的であり、それは、本校の生徒に、「思考力・判断力・表現力」を養うためのより本質的な力を身につけて欲しい、という期待があるからである。

3.2 グループで行う問題解決学習

3.1に示したような背景があるため、年度末に行ったプロジェクト学習についても、情報Aのそのものとはかなり違った展開となった。各場面における生徒の様子やその指導内容について、簡単に触れていきたい。

3.2.1 テーマと予備調査

情報の科学では、「情報技術を社会に役立てる」というメインテーマを設定し、これに対応するサブテーマを各グループで決める設定とした。情報Aのような「身近な疑問」の場合は、それを解明することがテーマそのものになるので、テーマ決めにそれほど時間をかけなくてもよかったが、今回のようなサブテーマ方式の場合、まずどのように手をつけていって良いかがわからない、というグループがいくつか出てきた。ましてや、「情報技術」や「社会」に関する知識も十分でない状況があるため、結果的に生徒は、テーマ決めの際「予備調査」が不可欠な状況となった。

情報の科学では「問題解決」を前面に出しているため、そこに「問題」、即ち「理想と現実とのギャップ」が必要になる。そのため、サブテーマ決定に際しては、まずは「理想」と「現実」をとらえ、それを明確化させる所からスタートさせた。行き詰まっているグループには、今現在困っていることをブレーンストーミングで挙げさせ、情報技術を用いて何とか解決できないか、といった切り口を与えて考えさせた。理想と現実の対比を作らせながら、明確化させていく、というここの部分に一番時間がかかり、またこれが実習の成否に大きく関わることであることを指摘しておきたい。

3.2.2 本調査と情報収集

予備調査でテーマの設定や実現可能性を下調べしたあと、本調査として、本格的なネットでの調査やアンケート、インタビューや、実地調査が行われた。調査については情報Aの時と同様、生徒に「単に調べただけ」ではなく、自分たち自身しか得られない、オリジナルな意見を十分取り入れるように指導した。そのためには、自分たちで一次情報を得られるように、アンケート実習などの学習が不可欠であることも触れておきたい。

3.2.3 解決策の「提案」と「根拠」

「情報技術を社会に役立てる」というメインテーマから派生したサブテーマでは、自分たちが考えた「理想」と「現実」を埋める手立ては、スケールが大きすぎて、まず実行できないであろうことが推測できる。そのため、そのようなグループに関しては、積極的に自分たちの「提案」をさせるようにした。そのため、今までは「オリジナリティ」や「フィールドワーク」が評価の大きな要素の1つであったが、情報の科学に移行してからは、「問題点の明確化」や「解決策の合理性」「説得力のある根拠」「論理性」などが大きな要素となった。

【3】まとめと課題

このように、年度末の大きなプロジェクト学習として見ると、時間数もほぼ同じ、単に「メインテーマがついただけ」のように見え、それほど大きな変化があったようには見えにくいが、「問題解決学習」を前面から捕らえて年間を構成し、その集大成としての大きな実習であるために、自ずとそこに求められるものが変わってきている様子がおわかりいただけるかと思う。

また、情報の科学もまだ1年間を終えたばかりであり、メインテーマについても、さらに効果的なものも考えていく必要があるとも考えている。

参考文献

  1. (1)高等学校学習指導要領解説 情報編(平成12年3月 文部省)
  2. (2)高等学校学習指導要領解説 情報編(平成22年3月 文部科学省)

引用・参考サイト

  1. (3)情報科準備室 ~小原研究室
    http://www.johoka.info/(2014.6.29閲覧)

※第7回全国高等学校情報教育研究会 全国大会 (埼玉大会)要項から転載
(2015年5月掲載)