情報教育/プログラミング/情報モラル

教科「情報」実践報告

情報を批判的に読み解き、
自分の考えを再構築する学習の方策を探る

同質と異質との組み合わせで
クリティカルな考えを育成する授業の実践

中林 正樹(鳥取県立鳥取工業高等学校 教諭)

中林正樹教諭

近年、本校の卒業者が活躍する工業界では、技術力とともにコミュニケーション能力が求められている。このコミュニケーション能力を育成するため、「知識構成型ジグソー法」を参考に、情報を批判的に読み解き、自分の考えを再構築する学習展開を考えた。この学習展開は、インターネット等で情報収集した自分の考えを同質の考えの生徒と強化し、その後、異質の考えと出会うことにより、他を尊重しつつ、内省して、自分の考えを再構築するものである。

【1】はじめに

本校は、工業界で中心となって活躍する生徒の育成を目指している。近年、工業系企業から求められるのは、柔軟に多様な考えを持ち、他と協調でき、自分の考えを主張できるコミュニケーション能力である。しかし、このことは、本校生徒の苦手としているところである。この能力を育成するため、情報科の授業では、グループ協議場面を多く設けている。協議は、インターネットなどの情報を活用し、根拠を持って自分の意見を発言するものとしている。しかし、このような場面を多く設けても、協議の内容が深まっているように感じられない。なぜなら、グループ協議を行う際、協力して判断したというより、インターネットの情報源の多さで真偽を決めるなど、安易に判断しているからである。このことから、これまでの方法では、本来のコミュニケーション場面に必要な情報を批判的に読み解き、自分の考えを深めていく力の育成が不足していると考えた。

鳥取県において平成24年度から「知識構成型ジグソー法」研修が実施された。「知識構成型ジグソー法」は主体的に他と関わりながら、自己の考えと知識を構築していくものである。この方法を参考に、同質と異質の組み合わせでクリティカルな考えを育成する授業を考え、実践してみた。本校は、理数工学科と工業学科との2学科があるが、理数工学科における「社会と情報」での実践について報告する。

【2】研究の目的

近年、企業は知識・技能のみではなく、コミュニケーション能力の高い人材を求めている。これは、次の様である。

柔軟に多様な考えを持てること
グループ内で協調、連携が取れること
自分の考えをはっきりと主張できること

このことは、学習指導要領における知識基盤社会を生き抜く人材の育成にも近い。

しかしながら、これらの能力はこれまで本校生徒の苦手とするところであった。このため、授業でグループ協議場面を多く設け、コミュニケーション能力育成を図っている。しかし、協議場面をいくら多くしても、生徒達のコミュニケーション能力の高まりを感じられない。

インターネットでの情報検索において、情報源を一つだけにせず、多数の情報源から判断するよう指導しているが、その後のグループ協議では、次のような特徴が見られる。

情報源が多い場合、真とし、少ない場合は偽とする
どの生徒も同じ様な意見になりがちである

そこで、これら現状と企業のニーズと学習指導要領・情報科の学習目標を踏まえて、研究の目的を次のように設定した。

育てたい生徒像を「情報を批判的に読み解き、
整理しながら自分の考えを構築できる生徒」とし、
その学習の方策を探る

【3】協調学習、知識構成型ジグソー法

協調学習の一方法の「知識構成型ジグソー法」は、埼玉県に続き、鳥取県においても平成24年度から学力向上の取り組みとして始まった。この「知識構成型ジグソー法」を用いると、主体的に多様な考えや知識を構築していくことができる。

「知識構成型ジグソー法」は、目的の生徒像を実現する授業展開ではあるが、次の点で日常的に用いることが難しい。

構想とエキスパート活動に用いる資料作りに、時間がかなりかかってしまう
授業において、生徒のエキスパート活動およびジグソー活動に時間を要する

【4】同質と異質との組み合わせでクリティカルな考えを育成する授業展開

図1 「同質と異質との組み合わせで クリティカルな考えを育成する」授業そこで、「知識構成型ジグソー法」を参考に、同質と異質との組み合わせでクリティカルな考えを育成する授業展開を考えた。(図1)

インターネット等の情報は、多様な情報が存在する。この多様な情報は、単に真か偽かではなく、視点を変えることにより、目的に適する答えとなる。この授業は、他の生徒と協力して、多様な情報を批判的に読み取りながら、自己の考えを再構築させていくものである。

授業の展開は、問いをグループ内で分担して2つの視点で調べ、まずは、グループ外の同質視点の生徒同士で考えを深める。その後、グループに戻り、もう一方の異質視点での考えと出会わせる。他を尊重しつつ、自己を見つめ直させようとするものである。さらに、グループ内で協議しながら、自分の考えを再構築していく。

インターネットの情報をもとにした自己の考えを同質の考えの生徒との協議で強化することにより、自己の考えに自信を持つことができる。その後、自分とは違う異質な考えと出会うことにより、違う視点での考えも尊重し、内省の姿勢を持たせる。単に情報源の多さから判断するのではなく、視点を変えることにより、多様な考えが存在することを理解させる。常に、複数の視点での考えで、情報を収集し、自己の考えを構築していくコミュニケーションをとれるようになって欲しいと考えた。

【5】授業実践

鳥取工業高等学校は、理数工学科と工業科があるが、理数工学科1年「社会と情報」で実践した。

授業目標
「最適な情報の評価ができるようになる」

(1)「自力解決」及び「情報収集」

発問「お昼ご飯、ざるそばともりそば、どっちを食べに行く?そもそも、2つのそばはなぜ違う名前なの?2つのそばの違いを判断しよう。」

グループ内でざるそばともりそばの違いについて、「見た目」原因説と「味」原因説とで分担し、インターネットで検索をさせた。

(2)同質の強化

写真1 同質の強化グループを離れ、「見た目」で情報収集した人、「味」で情報収集した人で集まり、さらに情報を共有し、各自の内容を深めた。(写真1)

(3)異質との出会いと考えの再構築

写真2 考えの再構築もとのグループに戻り、それぞれの目的で調べたことを持ち寄り、ざるそばともりそばの違いについてまとめた。この際、どちらの考えが正しいかという視点ではなく、新しい視点での考えも良いこととした。ほとんどのグループで、双方の意見を取り入れた判断としていたが、最終的な決断をするため、もう一度、インターネットで調べ直そうとする様子がうかがえた。(写真2)

【6】考察

「異質との出会い」と「考えの再構築」の活動の際、ほとんどのグループでインターネットを使って調べ直している様子が見られた。「異質との出会い」で刺激を受け、自己の考えを再検討しているようであった。この様子から、一つの視点の情報での判断ではなく、複数の視点の情報から判断する必要性を理解し、調べ直しているものと思われる。情報を批判的に読み取り、考えの構築を狙った授業展開の目標を果たしているものと評価できる。

しかし、今回一度の授業で、生徒が常に情報を批判的に読み取る姿勢ができるものではない。今後とも、この方策で授業を行い、生徒のコミュニケーション能力を高めていきたい。

参考文献

  1. (1)文部科学省『学習指導要領解説情報編』(2010)
  2. (2)東京大学『協調が生む学びの多様性 第3集』(2013)
  3. (3)鳥取県教育委員会『高等学校学力向上推進員会報告書』(2013)
  4. (4)京都教育大学附属桃山小学校H25年度教育実践発表会資料(2014)

※第7回全国高等学校情報教育研究会 全国大会 (埼玉大会)要項から転載
(2014年10月掲載)