情報教育/モラル

教科「情報」実践報告

教科「情報」における
言語活動を取り入れた授業実践報告

阿南 統久(茨城県立東海高等学校 教諭)

茨城県立東海高等学校

平成24年度国立教育政策研究所教育課程研究センターの「学習指導実践研究協力校事業」の指定を受け、教科「情報」の授業の中で、どのように言語活動を取り入れるべきか研究を行った。月1回のペースで言語活動を意図して取り入れた授業を行い、「互いに考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる」プロセスを生徒に経験させた。その結果、指定された文字数以上を書く習慣と、論理的な文章のスタイルを理解させることができた。なお、立場や考え方の違いによる多角的な視点の必要性について気づかせることが今後の課題である。

【1】教科「情報」における言語活動の意義

「言語活動の充実と情報教育の充実は表裏一体の関係にある。」この言葉は、言語活動と情報教育が密接に関係していることを示し、他教科における言語活動の捉え方と異にする部分で、今後の情報教育を考える上で、もっと強調されるべきであると考えている。

「情報活用の実践力(課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力)」と「発表,記録,要約,報告といった知識と技能を活用して行う言語活動」が重なりあう部分であり、他教科と違い、言語活動を手段としてだけで捉えるのではなく、言語活動自体を目的として教科「情報」の授業で扱う根拠にもなるはずである。

特に、言語活動を導入する上で、注意しなければならないのは、「生徒の思考力,判断力,表現力等をはぐくむ観点から,言語に対する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え,生徒の言語活動を充実すること。」であるのは言うまでもない。

1.1 言語活動を行う上で意識した点

共通教科情報科においては、「生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う学習活動を取り入れ,言語などを活用して,新たな情報を創り出したり,分かりやすく情報を表現したり,正しく伝達したり,他者と共同して問題を適切に解決したりするなどの学習活動を重視している。」とある。

内容の取扱いについても、配慮事項(2)に取り上げられているように、体験的な学習を重視し、実践的な能力と態度の育成を図ること。そして、「情報手段の操作体験を十分に取り入れたり,生徒にとって身近な生活場面と関連付けたりしながら指導することが極めて重要である。」とある。

そこで、本校生徒の実態に沿いつつ、言語活動を取り入れながら、「⑥互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる」学習活動を通して、生徒の思考力、判断力、表現力をはぐくむことができたらと考えるようになった。

<自らの考えを発展させるためのプロセス>

  1. ①まず自分の考えを根拠に基づいてまとめること。
  2. ②講義やグループ活動の中で、他人の考えを聞くことで、最初に自分が考えたものの問題点に気づき、改善すべき点を見つけだせること。
  3. ③不備な点を修正することで、自分のものの見方や考え方が深化し、発展させられること。
  4. ④ものの見方・考え方の視点を学び合いながら、立場や考え方の違いによる多角的な視点の必要性について自ら気づくこと。

※本校の生徒には、授業に意欲的に参加し、一度考えたことを、よりよく改善していこうとする姿勢が大切で、その点を評価すると伝えている。

【2】言語活動を取り入れた授業実践

平成24年度の1年間、国立教育政策研究所教育課程研究センターの「学習指導実践研究協力校事業」の指定を受け、研究を行った。研究テーマを「言語活動の導入とコミュニケーション能力の育成」とし、教科「情報」において、生徒にどのようなコミュニケーション能力を身につけさせるか、そのために必要な言語活動とは何かということを意識しながら研究をすすめた。

実際には、言語活動を意図して取り入れた授業を月1回のペースで行った。2時限連続(2コマ)で終了し、教科「情報」専任の先生以外でも扱える授業内容になるように工夫した。

2.1 授業実践の内容

2.1.1 1日10分の言語活動!(1)(通年)

時間的な余裕があるときに、約10分間で中学生向けの「話す・聞く・書く・資料を読み取る」等の力を鍛えるワークシートを行った。理由を付けて書くなど、論理的な文章のスタイルを理解させるのに大いに役に立った。

2.1.2 3つのホント・1つのウソ(4月)

4月の最初の授業で行い、自己紹介と言語活動の体験を兼ねている。自分の好きなものを3つと好きでないものを1つあげ、それぞれ好きなものとして理由を書く。7人1班で、班員が1人ずつ順番に発表者の好きなものを1つずつ当てていく。

当たったらみんなで拍手をし、最後に好きではないものを残す。

2.1.3 映画「イーグル・アイ」の鑑賞(6月)

映画「イーグル・アイ」および出演者のインタビューを鑑賞後、監視社会の問題点について自分の意見をワークシートに書く。

2.1.4 Googleマップ上での道順説明(2)(7月)

4人1班になり、Googleマップを利用して最寄り駅から自宅までの道順を説明し、班員が自宅にたどりつけるかで自分の説明力を確認する。

2.1.5 夏休みの宿題(課題文付き小論文)(9月)

『検証 東日本大震災の流言・デマ,荻上チキ,光文社新書(2011)』P.30-P.39の東日本大震災に関して広まった流言のうち「コスモ石油の黒い雨」についての分析を読み、その分析を踏まえて『他人に正確な情報を伝える際に、注意しなければならないこと』を400字で述べる。

2.1.6 二軸法図解を用いた分析(10月)

副教材「見てわかる情報モラル」(日本文教出版)の事例を、4人1班にして、二軸法図解を用いてマッピングさせる。ポートフォリオ図のように各領域の特徴を表す表題を相談しながら決定させ、その命名理由と共に発表する。

2.1.7 気になるニュースの調べ方(11月)

安倍晋三自民党総裁の発言録「キラキラネーム」を導入に使い、気になる記事をどのように調べ、どのように深く掘り下げればいいのかを学ぶ。特に、クリティカルシンキングという考え方を知り、そのような考え方をするために必要なことは何かを考える。

2.1.8 スライド作成演習-プレゼン基礎-(12 月)

携帯電話のメールで恋人同士が別れを告げることについて、賛成か反対か、自分の立場を明確にさせ、根拠に基づいて意見を述べるためのスライドを作成させる。

2.1.9 ロールプレイディスカッション(3)(12月)

親と子ども、観察者の3人1班になり、子どもの「○○だから、あれ買って」の要求を親が1分半、理由をつけて拒否し続ける。どういう受け答えが子どもの反感を買ったか、どうすれば説得力が増したか、などについて話し合う。また、アサーティブな主張の仕方についても考える。

2.1.10 冬休みの宿題(人物紹介文)(1月)

ある人物(漫画や本の登場人物、偉人やスポーツ選手、家族や友人、誰でもよい)を選び、520字以内で、その人のすごいところを理由や根拠をつけて上手に褒める文章を書く。

2.1.11 1分間スピーチ(1月)

冬休みの宿題で考えた原稿をもとに、人の興味を惹く1分間スピーチを考える。4人1組の班で発表および相互評価を行ったのち、各班の代表者はクラス全体に向けて発表する。

2.1.12 ネットワークのしくみ(4)(2月)

生徒にインストラクターになってもらい、他の生徒に指示をあたえ、指示する側の意図通りに動くかどうか体験してもらう。その活動の中で、班員にスムーズに動いてもらうためには、どのようにわかりやすく伝えるべきかを考える。

2.1.13 TV 会議を使った学校間交流(3月)

1月に作成した1分間スピーチを、テレビ会議システムを用いて、他校生に対して同様に行った。

【3】まとめ

本研究で、永井克昇先生の訪問を受けた際、言語活動が、思考・判断・表現と個々の活動として取り扱われていないかとの指摘を受けた。言語活動を授業で行う際は、思考・判断・表現を一体化して育成することに留意し、まずは問題解決の授業から始めるとよいことを改めて感じた。

参考文献

  1. (1)1日10分の言語活動!伝え合う力を育むコミュニケーション・トレーニング,監修 遠藤瑛子,編著 紀美野町立美里中学校,東洋館出版社(2012)
  2. (2)Google マップ上で自宅までの道順を説明する -言語活動を行う上で意識したこと-,阿南統久,開隆堂出版CHANNEL Vol.12-3(通巻36号)P.6-P.7(2012)
  3. (3)教室ファシリテーション10のアイテム100のステップ,堀裕嗣,学事出版(2012)
  4. (4)言語活動の導入とコミュニケーション能力の育成 ~言語活動を取り入れた「ネットワークのしくみ」の実践事例~,阿南統久,実教出版情報教育資料36号P.18-P.21(2013)

※第6回全国高等学校情報教育研究会全国大会(京都大会)要項から転載
(2014年5月掲載)