情報教育/プログラミング/情報モラル

教科「情報」実践報告

普通科高校での専門教科「情報」授業実践

小学校との異校種間連携事業に向けた準備と実践

田中 健(愛知県立安城南高等学校 教諭)

田中健教諭

愛知県立安城南高等学校では、普通科でありながら専門教科「情報」を3年間で12単位履修する、情報活用コースというコースを展開している。大学進学を主な進路先として見据える生徒に対し、どのようにして専門教科「情報」と向き合わせれば良いか日々腐心を重ねている。今回は、コースが主催する行事として毎年実施している、近隣の小学校を訪問してのタイピング指導授業について、授業内での準備活動の内容と高校生主動での実践例、そこで涵養できる能力について紹介する。

【1】はじめに

本校愛知県立安城南高等学校では、普通科でありながらも専門教科情報を3年間で12単位履修し、文系大学を主な進路先と位置付ける情報活用コースを学年で1クラス(40名)展開している。今回は、情報活用コースの学校行事として平成21年度より実践している「小学校との異校種間連携事業」に焦点を当て、入学時から習得を目指す能力と、連携事業実施に向けた準備、また、その実践について活動内容を紹介したい。

【2】異校種間連携事業の概要

図1 タイピング指導授業の様子2年次12月と3年次7月の計2回、近隣の小学校を訪問し、タイピングレベルが即座に表示される「毎日パソコン入力コンクール」の練習用ソフトウェアを利用して、高校生主動のタッチタイピング指導授業を行うというものである。司会者による高校の紹介の後、小学生一人に対して高校生が一人ついての自己紹介、高校生による実演、小学生の練習とその途中での高校生の指導、小学生の挑戦、認定証の授与、の順で進行される。

指導授業を行うにあたっての企画・構成から教材作成に至るまで全て、それまでに得た知識や技能を活用して高校生が制作している。実践の約2ヶ月前より、指導する小学生の組数分、高校生をグループに分け、各グループで司会用原稿・学校紹介のスライド・ローマ字表・キー配列表・名札・認定証・各教材に載せるイラストなどをお互いに進捗状況を確かめ合いながら準備する。

【3】本校の教育課程

以下が実施に向けた本校情報活用コースで履修する普通教科情報・専門教科情報の科目と配当年次であり、主に太字の科目で小学校との異校種間連携事業実施に向けた授業を実施している。

1年次 情報一般」(専門・学校設定科目)
2年次 「情報B」(普通)
図形と画像の処理」(専門)
「情報産業と社会」(専門)
3年次 「課題研究」(専門)
マルチメディア表現」(専門)
「モデル化とシミュレーション」(専門)
*全て2単位での実施

次に、太字で示した各授業で行う内容を概観したい。

3.1 情報一般

1年次で実施するこの学校設定科目の評価基準の一つは、クラスの全員がキーを見ることなくキーボードを素早く正確に打つ『タッチタイピング』をマスターすることである。4月の入学当初より実際の指導授業で使用する「毎日パソコン入力コンクール」を毎時間の授業の冒頭で練習し、自己の成長度合いを確かめるための日々の記録をつけていく。このときキーを打つ両手の上に置くタオルの持参を必須とし、ローマ字の位置を指に覚えこませるようにしている。

1年かけて行うこの練習の成果として、4月には5分間で50文字を打ち、変換するのがやっとの生徒が、年度末には90%以上の生徒が300文字を正確に打ち込めるまでになっている。

3.2 図形と画像の処理

図2 名札と認定証教科書会社が発行する副教材の副題にもなっており、2年次2時間連続で実施しているこの科目では、画像編集ソフトPhotoshopの基本的な利用方法、特にレイヤーの概念を理解し、意図する画像を制作する技能の習得を目標としている。右図の名札や認定証はPhotoshopで制作されたものである。

12月に小学校訪問を実施する学年であり、件のソフトウェアを学ぶ時間は十分にある。しかし、少々扱いが難しいソフトウェアのため、途中で挫折してしまう生徒も少なくない。実際に児童に手渡し、指導授業での使用に堪える成果物とするためにも、情報科教員のT.Tによるフォローアップや、画像処理ソフトウェアの扱いを得手とする生徒の協力を仰ぐことで全生徒の目標到達を支援している。

3.3 マルチメディア表現

3年次の7月に2校目の小学校訪問を行う。それまでの20時間程度の授業時間内で、前年度の実践の反省を活かした準備に取りかかる。この頃になると、指導授業の概要が掴めていることで、各個人の特性に応じた準備活動が自らできるようになっていることが見受けられる。例えば、司会担当者は司会原稿の構成を見直し児童の興味を引くようにする、画像処理ソフトの扱いが得意な者はIllustratorを利用して秀麗な認定証を制作する、などである。なお、この科目名は、前述の副教材のメインタイトルになっている。教材1冊で2年間4単位かけて画像の種類や効果、色彩について学び、並行して小学校訪問の準備を行うことができる。

また、小学校訪問を終えてからは、卒業制作として、これまでのコースの活動や学校行事で撮りためた写真を活用し、各自が好きな音楽を取り入れ、MovieMakerを利用した3年間の思い出ビデオを制作している。ラベル面のデザインも含め、最終的にはこの授業内での成果やこれまでの歩みを卒業記念品としてDVDに収め、情報活用コースで学んだことが形に残るようにしている。

 

【4】実践の結果

どの学年、どの小学校での指導授業も概ね好評を博している。この実践の成果として次の能力2点の涵養が挙げられる。

4.1 情報リテラシー

1年次より小学校訪問を中心に3年間のコース行事を紹介することで、実演するタッチタイピングの習得はもちろんのこと、披露するスライド・指を置く位置を図示するキー配列表・手渡しする認定証など、どの時期にどんなコンピュータ活用能力が必要か意識しながら、意欲的に日々の学習に臨むことができている。成果物を見せる相手がどのように感じるかを考えて制作することにより、教科書通りの単なる情報処理にとどまらない主体的な活動がなされることがわかる。

4.2 コミュニケーション能力

ローマ字を習って間もない小学生にタイピングを手取り足取り教える目上の存在である、ということを意識することにより、日常ではともすれば限られた友人としか会話をしないという高校生も、初対面の児童に進んで話しかける雰囲気作りができている。また、自身の持つ技能・知識を、それを知らない相手に伝えることが如何に難しいかを知った、という感想も多く、社会に出てからも有用であろう経験ができている。

【5】おわりに

ITという用語にコミュニケーション要素を入れたICTが叫ばれて数年、本校情報活用コースもその奔流に乗り、ディスプレイとにらみ合うだけでなく、コンピュータを学びながら意識を外に向ける教育活動を行うことをコース活動の基柱としている。中でも、これまでに述べた、コンピュータを操作しながら他の生徒と協同で教材を作り上げ、高校生主動で実施する小学校との異校種間連携事業が孕むコミュニケーション能力鞠育の有効性は非常に大きい。

とはいえ、実施方法については未だ改善の余地はあり、諸先生方のご慧眼によるご指摘賜れば幸甚である。

参考文献

  1. (1)西之園晴夫・岡本敏雄『情報科教育の方法と技術』ミネルヴァ書房(2007年)
  2. (2)文部科学省『高等学校学習指導要領解説』開隆堂出版株式会社(2010年)
  3. (3)金子絵美『情報活用コースにおける異校種間連携と情報活用能力の育成』愛知県立安城南高等学校紀要(2012年)

※第5回全国高等学校情報教育研究会(千葉大会)要項から転載
(2013年7月掲載)