情報教育/モラル

教科「情報」実践報告

「社会と情報」でもデータベースの学習に
取り組もう

長谷川 友彦(近江兄弟社高等学校 教諭)

西澤廣人

【要旨】

本校の「情報C」で取り組んでいるデータベースに関する実践を紹介しつつ、「社会と情報」において生徒たちにデータベースの概念を学ばせる意義を考える。データベースは、社会の中ではたらく情報システムの観点や、個人情報の保護と取り扱いの観点など、多面的な展開が考えられると考えている。この発表をきっかけに、「社会と情報」でデータベースに関する授業実践が様々に展開されることを期待したい。

【1】「社会と情報」のしめくくりとしての「社会における情報システム」

2013年度よりいよいよ新学習指導要領が本格的に実施されることとなる。本校では「社会と情報」を1年生で2単位の実施を考えている。

「社会と情報」の目指すところは、「情報社会に参画する態度」を育てることである。学習指導要領解説には、この「情報社会に参画する態度」は、「情報社会に参加し、よりよい情報社会にするための活動に積極的に加わろうとする意欲的な態度のこと」であると書かれている。

「社会と情報」の内容の(4)、つまり最後に取り扱う単元として、「ア 社会における情報システム」「イ 情報システムと人間」を取り扱うことになっている。「社会と情報」の学習のしめくくりとして、望ましい情報社会を構築していく上で、情報システムのあり方を生徒たちに考えさせる活動を取り入れているのである。

【2】データベースを学習させる意義

2.1 情報システムの成り立ちを考える上でデータベースの存在を意識させる

情報システムのあり方を考える上で、生徒たちにぜひ考えさせたいのは、そこではどのような情報が活用されているのかということである。

情報システムは、蓄積された情報を取り出すことによって、あるいはそれらの情報を情報通信ネットワークを用いて通信することによってはたらいている。情報システムを考えさせる上で、情報の蓄積の方法としてのデータベースと情報通信ネットワークがはたらいていることを意識させることが大切であると考えている。

情報通信ネットワークの仕組みや成り立ちに関しては、既に「社会と情報」の内容の(2)において取り扱っており、生徒たちはすでに学習を終えている。

ここでは、データベースがはたらいていることを意識させ、データベースの概念について触れておくことが情報システムの成り立ちを理解させる上で大切なことであろうと思われる。

2.2 データベースは私たちの身近な存在になってきている

近年ではほとんどのWebサービスはデータベースからデータを取り出すことによって私たちに情報を提供してくれている。また、コンピュータ内でも、電子メールやスケジュールなど、ファイルではなくデータベースとしてデータを利用しているアプリケーションも増えてきている。

このように考えると、どのようにデータベースを構築し、どのような情報を蓄積するかということを考えることが、私たちのくらしを支える情報システムをより充実したものに変え、より望ましい情報社会の建設につながっていくものと考える。

そのため、生徒たちにデータベースの概念を知ってもらうことが社会の情報化を促進していく上で有意義なことであると考える。

【3】取り扱いたいデータベースの概念

データベースの取り扱いというと、データベース管理システム(DBMS)やデータベース設計、SQLといったことを思い浮かべがちであるが、私自身は必ずしもそれらを学習する必要はないと考えている。もちろん、可能であればこれらの学習に取り組むことも有意義であることは間違いない。

データベースは、多くのデータを整理し、必要に応じて検索・再利用できるようにしたもので、ほかのデータと関連付けをすることによって多面的な利用ができるようなものである。少なくともこのような概念を学ぶことができればよいのではないかと考えている。

【4】「社会と情報」で考えられるデータベースに関する学習の例

本校では「情報C」2単位を2年生において実施しており、その最後の単元として「情報社会を創造する」と題してデータベースに関する授業を展開している。この取り組みは2010年度、2011年度と2年間にわたって試行的に取り組んできたものである。

その実践を踏まえつつ、「社会と情報」で考えられるデータベースに関する学習の例を考えてみる。

4.1 情報システムを構成するデータベースに蓄積すべき情報は何かを考えさせる

学習指導要領解説では、「交通、防災、産業、行政、教育などの各分野で構築されている情報システム」を取り上げ、その目的や特徴などについて理解させるとしている。

これらの情報システムが、実際にどのようなデータをやり取りしているかということを考えさせることも、データベースの概念を理解させることになる。

このようなデータベースの概念は、内容の(3)の「ウ 情報社会における法と個人の責任」において、個人情報がデータベースに蓄積されていることを意識し、他の情報と関連付けることでさまざまな活用の可能性があることを知ることが、個人情報を自分でコントロールする意識を育てることになると考える。

4.2 関係演算を通してデータから情報を取り出す実習

関係データベースモデルを用意し、そこから関係演算による問い合わせによって情報をとり出す体験をすることによって、他のデータとの関連付けの概念やデータの再利用性の概念について理解させることができる。

このような実習を通して、データから情報を作り出すプロセスを体験することができる。このことは「社会と情報」の目標のひとつである情報の特徴の理解につながる。

これらの学習に関連付けて表計算ソフトウェア等でグラフを作成させると、内容の(1)の「ウ 情報の表現と伝達」で学習する内容とも関連付けることもできる。(第4回全高情研拙稿参照)

4.3 関係データベースの正規化の実習

4.1に関連し、情報システムの中でどのようなデータをやりとりしているかという点を、実際に関係データベースモデルを設計させる実習を行う。その際、データに重複や矛盾が起きないように格納するには、関係データベースの正規化が必要であることを学ばせる。

同時にDBMSの役割についても取り扱えば、情報セキュリティを確保する考え方も身に付けさせることができる。

【5】「社会と情報」でもデータベースの学習に取り組もう

5.1 失敗した1年目から得たこと

2010年度に初めてデータベースに関する授業に取り組んだ。このときは、いわゆる“教科書通り”の順序で、データベースの設計、正規化からはじめ、作成したデータベースから関係演算をしてデータを取り出すという順序で授業を行った。

多くの生徒たちにとっては、たいへん難解な正規化に苦しむだけで、その先に何が待っているのかという見通しが見えないまま、学習に対する動機が薄れていくばかりであった。

2年目は、その失敗から、関係演算を通して大量のデータから情報を取り出す実習を先に取り組むようにした。それにより、情報を整理して蓄積しておくこと、他のデータと関連付けをすることによって多角的な分析が可能なことなどを理解することができ、多くの生徒たちがデータベースを学習することの意義を見出してくれたように思う。

5.2 本校での今後の方向性

しかしながら、まだまだこちらの用意した手順をなぞる学習の枠を超えなかった。

今後は、社会の中でどのような情報を蓄積するべきかを考えさせるなどの活動をもっと充実させられたらと考えている。

5.3 知恵を出し合って実践を構築しよう

データベースの学習について、特に「社会と情報」で取り組むことについてはまだまだ実践が少ないように思われる。

これから「社会と情報」が本格的に実施される中で、多くの学校でデータベースに関する授業が様々に展開され、結果として全国的に「社会と情報」の授業がより充実したものに作り上げられることを期待している。

参考文献

  1. (1)文部科学省(2010)『学習指導要領解説情報編』
  2. (2)文部省(2003)『学習指導要領』
  3. (3)長谷川友彦(2011)「教科『情報』で生徒たちに具体的にどのような力を身に付けさせたいか」、第4回全国高等学校情報教育研究会

※第5回全国高等学校情報教育研究会(千葉大会)要項から転載
(2013年5月掲載)