情報教育/プログラミング/情報モラル

教科「情報」実践報告

高等学校におけるブログを利用した実践

―― アクセス権制御の有効性について

山室 公司(大阪府立摂津高等学校 教諭)

山室公司

大阪の府立高校ではSky株式会社のSKY EDUCATION SERVERが導入されているが、2010年秋より新たな機能としてブログ機能が加わった。この新機能に不可欠なアクセス権制御を効果的に活用すれば、学校情報化が前進する。1.多くの教職員が記事の投稿が可能になり、学校Webサイトの活性化が進展する、2.ブログを利用した教科指導が有効であることが明らかになり、学校の情報化を進めるうえで大きな意義があることがわかった。

【1】システムと実践の概要

1.1 府立高校の校内ネットワーク

大阪府立高校ではSky株式会社のICT活用教育支援ソフトウェアのSKYMENU Proと、サーバー管理用のSKY EDUCATION SERVERが導入されている。2010年秋、SKY EDUCATION SERVERがバージョンアップされ、ブログとアンケート機能が追加された。このバージョンアップで大きく変わったのが、ユーザー管理の方法である。従来のユーザー管理ツールでは、学校内においてアクセスできるフォルダを制御したり、メールアドレスによるメーリングリストや掲示版の管理ができる程度にとどまっていた。しかし、バージョンアップの結果、校内ネットワークのユーザー管理ツールで作成したアカウントが、Web上でも使用できるアカウントとして自動的に同期して作成されるようになった(図1)。

図1 変更点のポイント

この改善によって、校内ネットワークへのログインから、ブログやアンケートなどの活用に及ぶすべての機能が同一アカウントで利用可能になり利便性が格段に向上した。

1.2 学校Webとブログの統合

従来、学校Webページの管理は、ホームページ作成ソフトを使用するかhtmlを直接編集する必要があった。そのため、Webページの更新は情報科の教員など少数の管理者のみが行うのが一般的であった。しかしブログ導入によりコンテンツ更新が従来よりも簡便に行えるようになったので、学校Webサイトとブログを統合して運用する試みを2010年度末からはじめた。

1.3 ブログにおけるアクセス権制御

ブログには公開ブログと非公開ブログがある。公開ブログは誰でも閲覧可能なブログなので、学校広報のために主として使用する。非公開ブログはログイン操作が必要であり、生徒、保護者、教職員といった学校関係者を対象として活用する。

ブログでは、ユーザを管理者、記事投稿者、閲覧者としてアクセス権を細かく制御する必要がある。生徒の場合は、記事投稿者の権限を与え、管理者の教師は生徒の記事を事前にチェックしたあと公開する。教師の場合は、顧問として部活動ブログの管理者権限を付与し、学年や分掌のブログはそれぞれの部署でブログ管理者を選ぶ。保護者の場合は、個別にアカウントを発行し、閲覧者として内部用の非公開ブログを閲覧できる。このような細かいアクセス権制御のためには、ユーザのグループ化による管理が必須である。

【2】実践の結果

2.1 ブログ記事と投稿者数

ブログ機能を使って学校の情報化をすすめた結果、2011.4~2012.2に投稿された記事数は2158件であった。その内訳は、情報科の科目を受講する生徒が投稿した記事が1860件(86%)で全体の大部分をしめ、PTA関係者の記事が90件(4%)、教師が授業で活用した記事が71件(3%)、部活動を報告する記事が71件(3%)とつづいている。

ブログの投稿者数については、3年生の情報B、情報Cの受講生徒259名(全319名)、授業以外のブログでは、教師25名、保護者8名、部活動マネージャー生徒1名であった。

2.2 情報教育でのブログ活用

情報科の授業でブログの活用を始めた。授業活用は、4種類に分類できる。①プリント・データ配布、②演習問題、③アンケート、④記事投稿練習である。まず、プリント・データ配布では、従来授業中に配布していた紙のプリントをWeb上に置いたり、校内ネットワークの共有フォルダに置いていたデータをブログ上においた。演習問題としては、問題の回答を求めるためにアンケート機能やWeb教材作成ツール(HotPotatoes6)を活用して双方向性を確保した。アンケート機能では、授業アンケートや300字程度の感想文や小論文を提出させた。記事投稿練習では、1学期は「前回の授業の振り返りと感想」、2学期は「画像の投稿」、3学期は「htmlのソース編集」を課題として、年間を通じて徐々に難度をあげて情報活用能力の向上をはかった。

【3】考察

3.1 学校Webの活性化

S高校ではブログ導入以前は、学校Webページを2名で維持管理していた。他の教師から記事掲載の依頼があった場合は、データを受け取ってそれをWeb上に掲載できるように加工してアップロードしていた。しかし、ブログ導入後は、教師、保護者、生徒の記事投稿者が34名(授業以外のブログ)に増えている。特定の個人が支えるページから大勢で支えるページへと変化したのである。

3.2 教科指導の情報化進展

プリント・データ配布、演習問題、アンケート、記事投稿練習という4つの授業活用法は、自宅での学習や宿題としても取り組ませることができる。このことは、初歩的な水準ではあるがeラーニングを実現しているといえるだろう。

記事投稿練習の課題で、ネット上のデータを安易にコピー&貼り付けをしないように管理者が注意したところ、生徒Aは自ら描いた画像を投稿してきた。この事例は情報モラル教育にブログが活用できることを示している。

ブログについて生徒の自由記述アンケートを実施し(2011年7月実施、n=258)、収集したテキストを分析したところ、「ブログの良さ」・「ブログの注意点」・「記事への感想」の3つの大カテゴリに分類できた。そのうちの「ブログの注意点」ではさらに「誹謗中傷の禁止」・「個人情報記載への注意」・「匿名禁止」・「記事内容への注意点」のサブカテゴリに分けられた。このデータより、生徒らは、ブログ投稿の経験を通じてネット上に情報を掲載する場合の注意点に気がつき「情報社会に参画する態度」が育っていることが明らかになった。ブログ活用が情報活用能力の向上・育成に寄与したといえるだろう。

【4】課題

実践を行う中で3つの課題が明らかになった。

まず、第一に校長決裁の問題である。従来型学校Webページは、学校からの情報発信、広報活動ととらえられているので、紙の文書と同様に「事前に校長決済を必要」と規定している。その場合に、更新頻度が小さいという前提があるので、担当者が原案(紙で印刷)を提出後、校長が決済し、担当者がアップするという方法がとられることになる。ところが、ブログ型学校Webページは、毎日のように更新があるので従来の校長決済方法は現実的でない。決済方法の簡略化が必要であろう。第二に、著作権の問題である。著作権法第35条に「授業の過程」の例外規定があるが、著作権法第35条ガイドライン(2004)では「校内LANサーバに蓄積すること」や「学校ホームページへの掲載」は「授業の過程」にあたらないとしている。自宅学習や宿題にブログでのWeb教材を使用する場合に問題になってくるであろう。第3に、教師の意識である。「毎日登校する生徒にはWeb活用は必要ない」、「携帯電話を使わせるなんてとんでもない」(S高校教師の言)といった意識の問題である。S高校ではブログを活用した1年間の実践を通して、台風による臨時休校の連絡などでブログが活躍した。教師のブログ記事投稿者(25名)が教職員数(85名)の3割に達しているので理解が深まってきていると思われるが、よりいっそう教職員の理解者を増やすことが必要だろう。

参考文献

  1. (1)著作権法第35条ガイドライン協議会(2004)学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン(2012.03.10)

※第5回全国高等学校情報教育研究会(千葉大会)要項から転載
(2012年12月掲載)