ICT活用教育のヒント

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発 高橋 純

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発(3)

チェックリストの開発

1.チェックリストの必要性

これまでに学校用ソフトウェアの選択、安定運用のための校内ネットワーク構築モデル、教師にとって安心感のある校内ネットワーク運用の三層モデルを示した。これらのモデルから検討を行い、先進地域や企業からのノウハウに基づく設計原案を作ることで安定した校内ネットワークが構築できると考えられる。しかし、地域や学校によっては専門知識や経験が不足しており、設計原案が作ることができない懸念がある。そこで、設計原案そのものを公開することができれば、多くの地域はそれに基づいて教師の要望を付け加えて設計を完成させることができる。ところが設計原案は、そのまま導入に使えるパソコンのスペックや設定、ソフトウェアの指定を含むなど詳細なレベルの記述となっており汎用性は低い。そのままの公開では、1)学校により規模や予算額も異なる、2)すぐに古くなり時代の変化に対応できない、3)機能の実現には複数の手段があるにもかかわらずソフトやスペックなどが指定され手段の選択ができないといった問題が発生する。そこで、これらの問題を解決し、設計原案に相当する役割を確保するために校内ネットワークの設計時に留意すべき事項をまとめたチェックリスト形式が考えられる。例えば「ウイルス対策ソフトを全てのパソコンに導入しているか」などである。その実現方法や取捨選択は学校に任せることができ、時代の変化にも耐えやすい表現形式にする。実際にチェックリストを利用する際は、学校が必要な項目にだけチェックを付けて、業者に実現方法や費用を提案してもらうことも可能となる。一方で、既に運用されている校内ネットワークであっても、このチェックリストに基づいて確認をしていくことで、安定運用のために何が足りないかを把握することができる。

2.チェックリストの開発手順

チェックリストを開発する際には、構築・運用が成功している事例を元に、設計原案作成と同じく先進地域や企業の意見を加え、さらに校内ネットワーク構築・運営の際に大きな役割を果たす指導主事の意見を加えるべきであると考え、下記の手順で開発した。

  1. 校内ネットワークの構築・運用の成功事例と考えられるF小の事例からチェックリストを検討した。F小で構築された校内ネットワークは先進地域や企業の担当者の意見からの設計原案に基づいている。構築時の配慮事項に加えて、運用実績を踏まえてチェックリストを検討した。この際には物品の調達や設定項目に関しての事項に限って検討を行ったが、それらに密接に関係する運用ルールについては記載することにした。その結果、58件がリストアップされた。これらを三層モデル(図4)に基づいて分類し、さらに大項目や小項目といった見出しを付けた。
  2. 40名の全国各地域の小中高等学校出身の情報教育担当指導主事が8班に分かれてワークショップを行い、1)のリストを検討した。これにより地域や校種による問題を盛り込む配慮をした。その結果、不足している項目や表現形式の変更など160件の指摘が得られた。これらには似た指摘も多かったことから、中学や高校における構築運用実績を持つ高校情報科教諭と共に整理を行った。整理の際は、先に述べたチェックリストの取捨選択は学校に任せるとの趣旨から、確実に実施すべき項目だけではなく、実施されると良いと考えられるものまでを含め、多くをリストアップする方針とした。その結果、141件のチェックリストとなった。
  3. 豊富な経験を持つ教育の情報化コーディネータ2級所持者2名と、校内ネットワークの構築に詳しい2つの会社の担当者へ、不足している項目や表現形式の了解性について、それぞれに照会し回答を得た。同様に整理を行い177件のチェックリストとした。

以上のプロセスを経てまとめられた校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストを付録に示す。「トラブルやセキュリティ問題が起こらない」ためのチェックリストとして、ウイルス対策、漏洩改ざん防止、USBメモリ・私物パソコン対策など124件が挙げられた。「楽・繰り返し・リアルタイムに確認できる」ためのチェックリストとして、分散配置された児童・生徒用パソコンの管理やネットワーク管理など16件が挙げられた。「思った通りの授業ができる」ためのチェックリストとして、共有フォルダの設計方法、学習・校務用ソフトの設定方法など37件が挙げられた。

おわりに

開発された校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストは、1)校内ネットワークを新規・更新する際に、予算や規模等に応じて、必要と思われる項目にチェックし、それに基づいて設計を行う、2)既に校内ネットワークが稼働している学校が、安定運用のために何が足りないかを把握するために使うことを想定して開発した。また、その実現方法や取捨選択は学校に任せる事を前提とし、時代の変化にも耐えやすい表現形式にする配慮をした。本チェックリストはExcelファイルでの公開を予定している。各校がそれぞれの視点で並び替えたり、加除することでより活用しやすい形式になると思われる。以上、本稿で示したチェックリストや種々のモデルにより、多くの学校の校内ネットワークが安定運用されることが期待される。

また、チェックリストは必ず実施すべき項目や実施すると良い項目まで多くが並んでいることから校種に応じて重み付け等の記述すること、多くの人にわかりやすいように各チェックリスト項目の背景や理由を記述すること、運用ルールに関して詳しい記述をするといった課題がある。

【謝辞】本研究をまとめるにあたり、中川斉史氏、正來洋氏、渡辺純恵氏、西海裕一氏、協力いただいた全国の指導主事の先生方に感謝申し上げます。

【参考文献】

  • 井上智義(1999) 視聴覚メディアと教育方法,北大路書房
  • IT戦略本部(2003) e-Japan 重点計画- 2003
  • IT戦略本部(2006) IT新改革戦略
  • 文部科学省(2002) 情報教育の実践と学校の情報化
  • 文部科学省(2003) 校内ネットワーク活用ガイド
  • 文部科学省(2005) 学校における情報教育の実態等に関する調査結果
  • 小関元,杉本圭優,黒田卓,堀田龍也,山西潤一(1996) 教育現場におけるネットワーク運用支援の問題に関する事例的研究,日本教育工学会研究報告集
  • 土田幹憲,高橋庸哉(1998) コミュニケーションとコラボレーションの環境としての校内ネットワークの構築と活用,日本教育工学会第14回大会講演論文集
  • 高橋純(2004)「2005年の学校」に対応した校内ネットワークの設計,校内ネットワーク活用推進フォーラム収録集,Sky
  • 高橋純,堀田龍也(2006)「2005年の学校」に対応した校内ネットワーク構築手順の提案,日本教育工学会誌

【付録】校内ネットワーク安定運用のためのチェックリスト

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(2007年2月掲載)

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