ICT活用教育のヒント

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発 高橋 純

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発(2)

校内ネットワークの構築・運用モデル

これまで安定運用できる校内ネットワーク構築するために、学校で利用されるソフトウェアの分類や校内ネットワークの構築手順モデルを開発し、F小において実際に構築を行ってきた。まず、これら構築時の研究成果を概観する。そして、その後の約1年半の運用実績から、教師にとって望ましい校内ネットワークの運用モデルを検討する。

1.学校で利用されるソフトウェアの分類

図1 学校で利用されるソフトウェアの分類、図2 学習用ソフトウェアの分類F小において校内ネットワークを構築する際に、適切なジャンルのソフトウェアを導入できるように分類を行った。その結果を図1に示す(高橋2004)。井上(1999)を参考にしつつ、実際の校内ネットワークの構築事例及び商品カタログ等を元に検討した。一般的に導入の際には、教師にとって最も興味深く学習活動に直結した「学習用ソフト」の検討ばかりが焦点となることが多い。図1は基本的なセキュリティソフトのみならず、校内のコンピュータや校内ネットワークを一括して管理するソフト、校務の情報化ソフトの導入も重要であることを示している。

また、学習用ソフトの分類を図2に示す。学習用ソフトでは、複数の統合ソフトが同時に採用され、それ以上のソフトが予算不足で購入が難しくなっている地域も散見される。しかし、統合学習ソフトや交流ソフトなどは1種類の導入のみで大抵のニーズは満たされる。その他に、資料やドリル、デジタルコンテンツにも適切に配分する必要もあり、これらのジャンルのソフトは複数必要となるケースが多いことを示している。

2.校内ネットワークの構築手順モデル

安定運用可能な校内ネットワークを構築するために、構築手順モデルを開発した(高橋と堀田2006)。図3に示す。本モデルは、「2005年の学校」の校内ネットワークを取り巻く数多くの問題を検討し、実際にF小において構築を行った上で、この成功事例の手順のモデル化を試みたものである。

図3 校内ネットワークの構築手順のモデル本モデルの特徴は、設計原案を教師の要望を聞く前の段階に作成することである。安定運用を確保し、様々な問題に対応した校内ネットワークの設計のためには、先進地域や、専門的な知識と豊富な経験を持つ企業等からの設計段階からの支援が欠かせない。そこで、設計をする際に、導入する学校や地域の要望を考慮する段階より前に、先進地域や企業の実例を元に設計原案を作る段階を組み入れる。この設計原案の段階を最初に踏むことで、最新のノウハウを含んだ校内ネットワークを構築できる。その後、導入する地域や学校の要望を汲み取り、設計原案に組み込んで設計を完成させていく。その際には、必要に応じて、要望の実現の可否等について、地域や学校に設計案を示して修正を繰り返す。以上により、セキュリティ対策や管理運用の容易さ等を実現しつつ、導入する地域や学校の要望も満たした設計ができる。構築後のF小では利用率も高く安定運用されていることから、本モデルは概ね適切であったと考えられる。

3.教師にとって安心感のある校内ネットワーク運用の三層モデル

F小において実際に校内ネットワークの利用が始まり、1年以上が経過した。その実績から運用モデルを検討する。

F小における構築後の利用状況を、メンテナンス作業や教師らへのインタビュー結果から下記に示す。

  1. 教室前のワークスペースに設置したパソコンは子どもが日常的に活用するようになり、コンピュータ室の授業での活用度も上がった。これによりパソコンが足りなくなり、さらに15台が導入された。
  2. デスクトップ等の個人環境の実現、作品等のファイル共有や配布、お気に入りの一括管理、デジタルカメラとの連携などが簡単に可能となり、教師が授業で行いたいことに柔軟に対応できるようになった。
  3. 校内全域に分散配置されているパソコンの利用状況や電源等の一括管理・確認を、職員室から1日に何度も行うようになった。例えば、休み時間や放課後に子どもが何のソフトで何に利用しているか、リアルタイムに把握している。
  4. 学期に1回の予防的なメンテナンスで、トラブルを防止できるようになった。
  5. メンテナンス作業は、導入時の機能を回復する意味よりも、より使い勝手を上げるために多くの時間が費やされている。例えば、図書検索をどの子ども用パソコンからもできるようにする、特別教室の利用状況を把握するWebカメラの設置などの作業がその都度行われた。

以上から、安定運用はもちろんのこと、それだけではなく利用状況のリアルタイム確認といった教師に対する安心感も提供することが重要であると言える。さらにF小はトラブルも無くなるだけではなく、ほとんど定期メンテナンスも必要なくなった。つまり、導入当初の機能を回復するための「消極的な定期メンテナンス」の時間が最小であるために、さらに使い勝手を向上させるための「積極的なメンテナンス」が行えるようになった。そしてメンテナンスの回数が増すにつれて使い勝手が上がっていった。これらから教師にとって安心感のある校内ネットワーク運用を三層モデルにまとめた(図4)

図4 教師にとって安心感のある校内ネットワーク運用の三層モデル

1.基本レベル 「トラブルやセキュリティ問題が起こらない」安心感

まず、電気や水道のように、当たり前にトラブル無く動き続ける安心感である。実現には、どんなに子どもが設定を変更しても再起動をすると元に戻るクライアント復元、トラブルが多いプリンタを監視・復旧、校内ネットワークのトラブルを予測したり軽いうちの警告、基本的なセキュリティ対策が行われていることなどが大切である。

2.管理レベル 「楽・繰り返し・リアルタイムに確認できる」安心感

2005年の学校では、教室や廊下への分散配置が当然となる。その時、従来から行われてきたパソコン室に鍵をかけて保護する考え方は通用しなくなる。分散配置されたパソコンは、児童生徒が自由に使い、それらはパソコン室に置いてあるパソコンのように簡単に監視・管理することができない。それでも、教師は安心して、子どもに自由に使わせられる必要がある。そこで、校内に分散配置されたパソコンがどのように利用されているか、各教師の注意力のみに頼るのではなく、職員室等から、楽に、繰り返し、リアルタイムに確認できることが重要となる。また、校内に分散配置されると、電源の管理や設定変更だけでも一苦労である。これらの実現には、分散配置のパソコンの画面を転送し一覧表示する、遠隔からパソコンを操作できる、不適切な利用をしているパソコンの画面にメッセージを送る、各パソコンや各人の利用状況を記録・確認する機能が助けとなる。ウイルス対策ソフトも単に導入するだけではなく、正しく機能しているか一覧で確認できる機能が安心感につながる。

3.活用レベル 「思った通りの授業ができる」安心感

校内ネットワークを活用した授業を行うために、教師が長年改良に改良を重ねてきた自分自身の授業スタイルの変更が必要な場合がある。しかし、教師がすぐに授業が良くなると予想できなければ、その実施は心理的な抵抗感がある。むしろ、これまでの授業スタイルを変えずに、その延長上に校内ネットワークの活用がある方が楽である。つまり、思った通りの授業ができる安心感である。例えば、教師用パソコンの設置場所や操作に縛られずに普通教室と同じ感覚で授業ができたり、好きな時に好きなように机間巡視ができたり、普段教室で紙プリントを配布したり集めたりするように電子ファイルが扱えるようになることである。実現には、教室のどの場所でも教師機が操作できるリモコン機能、子どもの画面をワイヤレスプロジェクタに転送してどこからでも簡単に発表ができる画面転送機能、スムーズに授業を行うためにひな形や作品ファイルを簡単に配布・収集するといった機能が助けとなる。

(2007年2月掲載)

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