ICT活用教育のヒント

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発 高橋 純

校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発(1)

本研究は、以下の研究発表(2006年3月11日)を再掲したものである。

高橋純(富山大学人間発達科学部)・堀田龍也(メディア教育開発センター研究開発部)・竹内勉(Sky株式会社)・山本和人(Sky株式会社):「校内ネットワークの安定運用のためのチェックリストの開発」,日本教育工学会研究報告集 JSET06-2,pp.1-8

授業や校務での校内ネットワークの活用が進んでいる。今後、ますますその役割が大きくなると予想され、より一層の安定運用が重要となる。しかし、多数のパソコンが、コンピュータ室、普通教室や職員室など校内に分散して設置され、さらに情報セキュリティ対策も複雑化している現状では、安定運用を確保するのは簡単ではない。そこで、本研究では、構築事例や調査を元に、安定した運用のできる校内ネットワーク設計時の配慮や、運用後の評価などを行うためのチェックリストの開発を行った。

はじめに

1.校内ネットワークを取り巻く変化

2005年度までに概ねすべての公立小中高等学校等に、高速インターネットに常時接続したLAN回線が張り巡らされ、多くの接続されたコンピュータを含んだ校内ネットワークが整備される(IT戦略本部 2003)。事務・教育用をあわせて学校に設置してあるパソコン台数の平均は、小学校37台、中学校54台、高校139台である(文部科学省 2005)。これらには、いわゆる教員の持ち込みパソコンは含まれておらず、実際に学校に設置してあるパソコンは、この数を上回ると予想される。さらに、学校の情報機器にはパソコンのみならずプリンタやプロジェクタなどもある。普及期以前よりも、台数の増加のみならず、セキュリティ問題の複雑化、児童生徒・教職員といった多くの人たちの利用、日常的に高頻度で使うようになるなど状況が変わってきている。さらに、政府(2006)から2010年までに教員一人に一台のパソコン及びネットワーク環境の整備が示されたように、今後ますます学校に欠かせないインフラになるのは確実であり、校内ネットワークの安定運用が欠かせない。

2.校内ネットワークを構築・運用する際の問題点

校内ネットワークの管理は、大抵の場合、一人或いは少人数の情報担当教員に任されている。しかし、台数・規模が大きくなり、他にも多くの仕事を抱えた専門家ではない教師が管理できるレベルを越えつつあるのが現状である。

また、個人情報漏洩やウイルス感染事故の頻発などが社会問題にもなっている。学校でのセキュリティ対策は、主に学校外からの不正アクセス防止、不適切サイトへのアクセス制御、ウイルス感染防止、個人情報保護とされる(文部科学省 2002, 2003)。このセキュリティ対策は場当たり的には対応できない高度なレベルに達しており、これも情報担当教員だけでは適切な対処が困難になっている。

さらに、セキュリティ対策を含む管理運用の対応にかかる費用は、例えば最先端の学習用システムを導入する事に比べ、華々しさや目に見える効果がわかりにくいため軽視されがちである。管理運用の手間を低減するための適切な導入費用が配分されないケースも多い。そして、障害やウイルス感染が高い確率で起こっている。

一方で、これまでにも、校内ネットワークの構築・運用には問題点が指摘され、多くの研究がなされてきた(例えば、小関ら 1996, 土田ら1998)。ところが、これらの研究は、普及期以前の結果であり、現在のように校内ネットワークが、様々な問題を抱えつつも、教育活動や校務に重要な役割を果たしている状況で研究がなされたものではない。現状の問題に対応し切れていない部分も多い。そこで、パソコンの普通教室への設置や教員一人一台の整備に対応した新しい校内ネットワークの構築や運用手順が望まれている。

目的

本研究では、校内ネットワーク設計時の配慮や、運用後の評価を行うためのチェックリストの開発を行うことを目的とする。まず、校内ネットワークの安定運用のための構築モデル等を示し、それを補うためにチェックリストが必要であることを示す。その上でチェックリストとその開発手順を報告する。

(2007年2月掲載)

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