ICT活用教育のヒント

新学習指導要領における小学校の情報教育 中川 一史

「情報教育のねらい」をカリキュラムに

基本的な操作の習得と情報モラル指導がより明確に

新学習指導要領が告示され、9年ぶりの全面改訂となった。新学習指導要領を情報教育の視点でみると、何に着目できるのだろうか。

情報教育は、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」で構成されている。新学習指導要領では、第1章総則「第4指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の2の(9)に、「各教科等の指導に当たっては、児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け、適切に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに、これらの情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と、記されるに至った。

各教科や総合的な学習の時間で活用できるように、これら学習活動のベースとしての基本的な操作の習得と、子どもをとりまく状況をふまえて情報モラルが強調されている。これまでの文言にも含まれていたと言えなくないが、より明確に示すことで、各学校での着実な取り組みを促していると言える。

日常的なコンピュータの活用へ

小学校でも機器整備が進み、地域によっては、すべての学校の各教室にもコンピュータが数台ずつ設置されることになり、その活用の可能性は広がっている。小学校では、コンピュータルームの整備はほぼ落ち着き、教員1人1台のコンピュータとともに、特別教室や普通教室への設置が焦点になりつつある。

小学校は、学級担任制である場合がほとんどなので、教室に1、2台しかなくても、日常的なちょっとした活用にはそれで十分な場合が多い。そうなると、なおさらのこと、基本的な操作を身につけていれば、使いたい子が使いたい場面でコンピュータや情報通信ネットワークを日常的に活用できるようになる。

市町村単位で情報モラル指導のカリキュラムを

また、情報モラルについては、昨今の社会状況を反映して、都道府県市町村の教育委員会も学校での指導に本腰を入れ始めている。特に、メールや掲示板等での情報通信ネットワークへの関わりや携帯電話の取り扱いなどについて、独自にカリキュラムや指導例を提示したり研修で行ったりするケースが増えてきた。

しかし、基本的な操作の習得にしても情報モラルにしても、小学校では共通の課題が存在する。それは、高等学校での教科「情報」のように、どこの学校でも共通に指導できるような教科や時間枠が存在しない、ということだ。ある小学校では、3年生以上で操作の習得として総合的な学習の時間から年間数時間ずつをあてこんだり、他の学校では、情報モラルを道徳として特定のテーマを扱ったりしているケースもあるが、学校や地域でかなりのばらつきが見られる。最終的には、学年や教師個人にまかされているのが実情だ。今後、市町村単位のカリキュラム検討において、さらに踏み込んで推進していく必要があるだろう。

「情報モラルの時間」として確保するだけでなく、各教科横断的に埋め込みながら、年間を通して、理解させていくような工夫も検討する余地がある。

小学校では「情報活用の実践力」に重点

ただ、小学校では、情報教育の3つの柱のうち、やはり「情報活用の実践力」に重点が置かれている。

国語においては、伝統的な言語文化に関する事項が盛り込まれていたことが話題となる場合が多いが、これまでの「連続型テキスト」中心の学習活動から、さらに「非連続型テキスト」を意識した内容に踏み込んでいる。

例えば、第3学年及び第4学年の「B 書くこと」では、「収集した資料を効果的に使い、説明する文章などを書くこと」が求められている。そのため、教科書では、説明書作りや新聞の読み取りなど、資料と文章との連動を意識させるような題材を載せることになる。

さらに、第5学年及び第6学年では、「A 話すこと・聞くこと」で「考えたことや伝えたいことなどから話題を決め、収集した知識や情報を関係付けること」、「B 書くこと」で、「引用したり、図表やグラフなどを用いたりして、自分の考えが伝わるように書くこと」「表現の効果などについて確かめたり工夫したりすること」「書いたものを発表し合い、表現の仕方に着目して助言し合うこと」など、情報活用の実践力を総合的に発揮しながら言葉の力をつけていく、1つの国語の方向性がみてとれる。

事例:「見ること」「見せること」の視点をもたせる

具体的な授業場面でみていこう。

佐藤幸江教諭(横浜市立高田小学校)は「指導書通りに授業を流す教師が多いが、子どももちがえば教師の思いもちがう。同じ単元、同じ教材でも、アプローチは変わる。自分は毎年、子どもに合わせて学習活動を大きく変える」と指摘する。

子どもたちが夢中になる「しかけ」を

小学校1年生国語の題材において、絵本からイメージを広げ、音読劇にするという授業である。まずは導入で子どもたちが夢中になる「しかけ」が必要だ。佐藤教諭は、絵本選びに力を注いだ。教科書を活用することもできたが、一人ひとりの子どもたちが自己を投影できる登場人物がたくさんいるという点、ストーリーが単純であるが「比較する」場面があるという点、また何より子どもたちが絵にのめり込めるような情感あるものをという点から「お日さまパン」(金の星社)を選んだ。

相手意識・目的意識をもたせる

さらに、子どもたちが意欲をもって取り組めるように、「今度の授業参観で、1年生になったことをおうちの人に見せようね」と提案したのである。

相手意識・目的意識をもつことで、子どもたちは電子情報ボードに大映しにされた絵本の中の動物の表情や動きに注目し、自分なりのセリフや動きを創造していったのである。

そのプロセスで、「大きな声ではっきり話すこと」や「身ぶりや手ぶりで表現すること」が課題となった。家で何回も練習してくる子やグループで練習方法を工夫する姿も見られるようになり、教師はそのような個のがんばりや工夫をみとり、全体に紹介し、他の子どもたちへの意欲付けや評価の基準としていったのである。

教科の枠を越えて広がるゴール

入学してまだ1か月の子どもたちは、授業参観で大きな拍手と「幼稚園のときより、にこにこしていて自信をもってできていたね」という賞賛の言葉をいただき、大きな満足感を得た。それにより、「お日さまパン」が大好きになり、図工の砂遊びで「お日さまパン」を作ったり、生活科であさがおの水やりが問題になったときに、「お日さま」の力のすごさが話題にのぼったり、さらには家で「お日さまパンクッキー」を作る子どもたちまで出現するというように、ゴールが果てしなく広がっているという。

いずれにしても、情報教育の視点で考えるならば、従来の国語の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」に、「見ること」「見せること」をどのように絡ませていくかがポイントだ。

このように、各教科や総合的な学習の時間などの学習活動の中で、情報教育のねらいをどのように解釈し、授業レベルに落とし込んでいくかが重要なポイントとなる。地域や学校単位で全体のカリキュラムにいかに埋め込んでいくかが問われることになりそうだ。

(2009年2月掲載)

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