ICT活用教育のヒント

環境の工夫と授業の発想 中川 一史

普通教室・教科でのICT活用 成功のポイント(2)

ICTの活用を、今後さらに、普通教室や各教科の授業にも広げていくためには、どのような取り組みが必要なのか、中川一史先生(独立行政法人メディア教育開発センター 教授)に、お話を伺いました。

効果と手間とはシーソーの関係

【Q】先生方のICT活用を促進するために必要なことは何でしょうか?

いくらICT活用の効果の話をしても、手間が軽減されなければ活用は進みません。効果と手間とはシーソーの関係にあります。限られた予算や機材の中で、どのようにすれば手間が軽減できるのか、知恵や工夫を凝らすことが必要です。

実際に、学校現場で取り組まれた事例を紹介すると、プロジェクタは配線するのが大変なので、配線したプロジェクタを移動できるようにカートを自作した事例や、高学年になると、パソコンが得意な子どももいるので、クラスの中にパソコン係を設け準備に当たらせている事例もあります。

このほかにも、ICTの活用が進んでいる学校では、さまざまな工夫がなされています。活用を促進するためには、敷居を低くし、使えるものは何でも使うという発想が大切です。準備のために、10分も20分も時間がかかる、この教室ではできるけど、この教室ではできないといった、敷居が高くなる原因があると、そこでつまずいてしまいます。

そういうことを1つひとつ潰していくことを、大きなところは教育委員会が、小さなところは学校レベルで考えていかないと、使わない先生はいつまでたっても使わないと思います。

また、敷居を低くするためには、透明性と効果の両面から、うまく攻めていくことが必要です。どっちも攻めていくうちに、先生方に慣れがでてきます。最初、抵抗があっても、何度も使っていくと慣れてくるということがあります。

さらに、ICTの活用が苦手な先生方には、こうしたいと思ったことが、ストレートにできることが大事です。そんな先生方には、手間が軽減できる、活用をサポートしてくれるものがあれば、非常に役立ちます。

例えば、「SKYMENU Pro Ver.9」に、「プロジェクタ運用支援機能」がありますが、ハードウェアと連携したこのようなソフトウェアが、さまざまなバリエーションでたくさん開発されれば、先生方はすごく助かると思います。

中心となる『ヒト』がどのように種をまくかが大事

【Q】ICT活用を促進するための特効薬は何かありますか?

残念ながら特効薬というものはありません。前回、『コト』というお話をしましたが、例えば、来年、全員がICTを使った公開授業を必ず行わないといけないことになれば、すべての先生が何かを考えないといけません。それは特効薬的な『コト』になります。

でも、それが、いつまでも薬として効くかは別です。もしかしたら、公開授業の1ヵ月後にはみんな使っていないかもしれません。でも1ヵ月後に半分くらいの先生方が使っていたら、それはICTの活用が定着しつつあります。初めは、いやいやながら使っていたかもしれない。でも、使っていくうちに、子どもたちが一生懸命学習する、理解が深まると思うと、それが継続の力になります。

また、活用を定着させるためには、中心となる『ヒト』がどのように種をまいていくかも大事です。今ある環境の中で、ICT活用を促進するために、誰から攻めるか、どのようにこの学校を良くしていこうかといったことを考える戦略家も必要です。

でも、学校間の格差がつかないように、二極化にならないようにするためには、まずは、校内LANが各学校に同じように整備されていて、少しでも使いやすい環境を用意することが大事です。戦略家の情報担当リーダがいなくても、そうすれば、ある程度使ってもらえるクオリティが確保できます。

『モノ・ヒト・コト』といったのは、『ヒト』がいなければ『モノ』で攻めるということです。

新しい発想がICTの効果的な活用につながる

【Q】ICTを各教科で効果的に活用するための方法が何かありますか?

教科担任制の場合、先生方が各教室間を移動します。そのため、プロジェクタを持って動くのが面倒だといわれる先生もいます。そこで、ある中学校では、英語の授業で利用する英語学習室を設け、そこにプロジェクタを常設しています。そして、その教室にみんなが集まるという形態をとっています。

つまり先生だけが動くのではなく、生徒も動く。そういう新しい発想をすることも、各教科でICTを効果的に活用する1つの答えになると思います。

学校の環境において、いつでもどこでも同じように使えるという部分がまだまだ弱いと感じます。学校の中でも、できることは結構あります。例えば、英語学習室にするための空き教室をどう作るのか、またどう利用するのかなど、子どもたちの学習環境の整備として、どのように考えていくのかが大事です。

(2007年9月掲載)

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