ICT活用教育のヒント

環境の工夫と授業の発想 中川 一史

普通教室・教科でのICT活用 成功のポイント(1)

ICTの活用を、今後さらに、普通教室や各教科の授業にも広げていくためには、どのような取り組みが必要なのか、中川一史先生(独立行政法人メディア教育開発センター 教授)に、お話を伺いました。

ICT活用を促進する3つの要素

【Q】ICTの活用を進めるために、地域、学校では、どのような取り組みが必要ですか?

ICT活用を進めるには、3つの要素があります。1つは『モノ』です。子どもたちや先生方の身近なところに、ICT機器を今よりも数多く導入すれば、それだけで使われる可能性は高くなります。また、光源の暗いプロジェクタよりは、明るいプロジェクタに入れ替えた方が、使われる可能性も高くなります『モノ』を入れ替えたり増やしたりすることが、1つ目のポイントです。

2つ目は『ヒト』です。ICT機器を使わざるを得なくなるように仕向ける情報担当リーダの振る舞いや、校内研修をうまく工夫してやってくれるような『ヒト』の確保が必要です。

3つ目は『コト』です。例えば、情報教育のモデル指定を受けたり、ICT機器を使わざるを得ないような校内研究のテーマを設定するような『コト』が必要です。

『モノ・ヒト・コト』それぞれについて答えがあり、決定打というものはありませんが、どこかが変わると、ICT活用が進み始める可能性があります。

ICT活用と子どもたちの学び

【Q】ICTの活用が、子どもたちの学びにどのような効果をもたらしますか?

まず、なぜ、ICT活用が日常化しないのかを考えてみましょう。大きな要素は2つあります。

1つは効果です。ICTを活用するのは、ディジタルの良さがあるからですが、よくある誤解として、ICTを使うと子どもの学習意欲が上がるといわれます。最初は目新しいからそういう面もありますが、子どもたちはすぐに飽きてしまいます。

学びそのものの中身が面白く、ICTの活用でそれがさらに促進されることに意味があります。そこを勘違いしてはいけません。

教科書や、黒板を使うといったアナログには、アナログの良さがあります。アナログとディジタルの特性や良さを把握し、いかに選択をするのか、組み合わせるのかを考え、日常的に使うことを意識して有効に活用していくことが大事です。

もう1つの要素は透明性です。ICTの機器や環境は、多くの先生方にとって、まだまだ透明性が高いとはいえません。言い換えれば、使うことに集中できる環境になっていないということです。それは、ハードウェアやソフトウェアの使い方の問題だけではなく、置き場所や、距離、使いやすい工夫がしてあるか否か、そういうことも含まれます。

【Q】ICTの活用が、子どもたちの学びにどのような効果をもたらしますか?

●大きいことはいいことだ

ICT機器やコンテンツを授業で効果的に活用することで、子どもたちの学びにどのような効果をもたらすのか紹介します。

まず1つ目は、『大きいことはいいことだ』です。プロジェクタなどを使って、大きく映すことで、子どもたちの目を焦点化し、情報の共有化が効果的に図れます。小学校低学年の場合、教科書を大映しして、『ちょっとここを見て』といった方が子どもの目が集まりやすいです。その結果、授業時間を効果的に利用でき、本来やりたいことに焦点が絞れます。今まで使っていない先生が、なるほどそれはいいねと気づいてくれれば、ICTの活用も広がっていきます。

●動くことはいいことだ

2つ目は、『動くことはいいことだ』です。ディジタルの良さは動くことです。動くことによって何がいいのかというと、知識、理解を補完することができる、『わかる』から『できる』に活かせるということです。

例えば、スポーツをする場合、モデルとなる選手をじっくり見て、イメージをつかみます。ある程度イメージを持つことが、できるためのステップになります。

体育や家庭科など、スキルを習得するような授業では、『わかる』から『できる』へ活かす、さまざまなモデル化が可能です。例えば、家庭科のボタン付けの授業でのモデル化の事例を紹介すると、ボタン付けが1人でできる子どもは、先生やボタン付けの手順を説明したコンテンツをあてにすることなく、どんどん自分で進めていきます。ちょっと不安な子どもは、コンテンツを見て確かめながら進めていきます。できない子どもは、先生が個別に指導していきます。

この事例では、授業時間中に、コンテンツが活きる子どものレベルや人数に限りがあることがミソです。つまり、スキルアップや知識理解にコンテンツが十分使えるということです。今まで使わなかった先生が、それはいいねという話になる可能性は高いと思います。

ただし、誰かが作ったコンテンツは、必ずしも自分がやりたい授業にフィットするわけではありません。ちょっと手を加えることで、授業での効果がより高まることもあります。先生向けに実験や観察などのコンテンツが簡単に作成できるツールもありますので、活用してみるのも1つの方法です。

●併用することはいいことだ

3つ目は、『併用することはいいことだ』です。言い換えれば、ディジタルとアナログの特徴を生かし、いかに効果的に活用するか、そして、それを先生方がいかに理解するかということです。

例えば、黒板とディジタルで見せることは、それぞれに良さがあります。ディジタルは消えてしまいますが、みんなで焦点化して集中できます。黒板には、授業時間中、板書したことが残るという良さがあります。インパクトはないけれど、この時間どういうことが大事で、どういうことを整理しないといけないのか黒板には残ります。

インパクトがあるところと、きっちりと残すところを、ディジタルとアナログで、うまく使い分ける、あるいは組み合わせる。そういうことをきちっと示していくことが大事です。

●先生方の活用の促進につながるためには

また、子どもたち1人ひとりの課題に応じた授業を行う際にも、ICTは活用できます。

先生方が、どのような授業づくり、授業設計を行うのかということと大いに関わってきますが、一斉にみんなで、ICT機器やコンテンツを使いましょうということではなくて、必要な学年、クラス、グループが、必要なときに利用する。そんな使い方も、学校の環境の中で、やろうと思えば可能です。

ただ、そういう授業の設計をしようと思うと、一斉授業の考え方を少し変えることが必要です。変えるためには、『モノ・ヒト・コト』を考えてみることです。

例えば、校内ネットワークのサーバ中などにコンテンツが入っているのか、それが使いやすい状態なのかなど、ICTの環境が整っているのか。また、お手本となる授業を、誰かに見せてもらい、具体的に子どもの動きをイメージすることも必要です。さらに、そういう事例をみんなに提示していくことも大事です。SKYMENU Proには、サポートホームページの中に、さまざまなコンテンツや導入事例がありますが、とても素晴らしいことです。このような情報があることは、先生方の活用の促進につながると思います。

(2007年9月掲載)

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