ICT活用教育のヒント

学校の情報化を支える教育情報化コーディネータ 中川斉史

教育情報化コーディネータ

徳島県三好郡のITCEの例

郡という単位でITCE(Information Technology Coordinator forEducation)をおいている例は、ほとんどないと思われるが、徳島県の三好郡では、平成11年度からITCE的立場の教員(三好郡では、ICTコーディネータ:Information Communication Technology Coordinaterと呼んでいる)を配置し、特色ある活動をしてきたので紹介する。

学校インターネット事業の研究指定にあたり、小規模校の多い郡部での研究推進を目的に、コーディネータが配置された。所属校に属しているが担任をせず、TTの空いた時間を郡内の学校の支援にあてている。

ITCコーディネーター制度の成果と問題点

現在の加配教員の成果を大きく分けると、技術支援、授業支援、研修支援の3つに分けられる。

技術支援

各学校に設置されているコンピュータなどの機器は、校内の管理者(情報主任)によって運用されているが、授業に応じて変化する機器のセッティングや、子どもたちによる各種の設定変更など、些細な部分での技術的な対応を迫られている。

大きなトラブルについては業者が対応するが、そうでない部分についてはちょっとしたアドバイスをすることで解決し、「授業で使えない」という状況を回避してきた。

授業支援

コンピュータを使う授業において、「どのように授業で利用していくか」について経験のない教員に対して、TTを組み、実際の授業においてどのように授業を計画し、進めていくかについて、実際の授業をやりながら、イメージをつかんでもらうことで、各学校での積極的なコンピュータ利用を図ってきた。

また、担任によって「使う・使わない」という状況を起こさないためにも、さまざまな交流などのきっかけを持ちかけ、学校間、担任間の利用格差の解消につとめてきた。

研修支援

校内研修において、現場教員のさまざまな要望がある。単なるアプリケーションの使い方ではなく、情報教育がなぜ重要なのか、ホームページを作ることはどうして必要なのか、そして、どのような実践が情報教育の視点を生かした授業といえるのかなどについての研修を行ってきた。

情報化社会を生きる子どもたちを育てるために必要な技能や考え方について、授業者という立場から研修をすすめてきた。

出動回数(現場訪問のべ回数)

平成14年度 約220回

現場の教員の声から

・困ったときにすぐに電話で答えてくれるので、心強い。

・パソコンなどを使った授業の時、TTを組んでくれてとてもありがたい。

・専門的な知識や技能を持っている方がいるというのはとても心強い。

・校内研修の講師として指導していただいて助かっている。

・その学校の機器の配置の具合などを診断し、適切なアドバイスをしてくれたおかげでずいぶん使いやすくなった。

・各学校の機器類の整備と点検、トラブルの解消、教員への指導などがあるので助かっている。

このように数多くの成果を見い出すことができる。他の地域でもこのような制度があれば良いのにという声をよく聞く。しかしながら、教員は授業中心であるべきだという考えが主流を占め、(定数法や、補助金などの関係が難しい)教員をこのような立場におくことは、現実的には難しい。

そのために、他の地域では、技術を持っているSEなどを「緊急雇用対策」などを利用して雇っているケースが多く見られる。

現場で困っているのは、見かけ的には技術的なものかもしれないが、実はその奥にある教育実践での生かし方で困っているのである。これらの解決は、教員でないと対応できないのではないだろうか。

中には、ITCEを単なるSEと思っている行政担当者もいるくらいである。現時点では、本当の意味でのITCEの立場で仕事ができる場所はほとんどないのが残念である。

2005年を間近に控え、これらITCEもしくは、校内情報リーダー的な立場を、単なる形式的校務分掌ではなく、専門職としておくことは、とても大切なことだと思う。

教育の情報化で必要なこと

日本の社会は、情報化が進んでいると思われている。しかし、そこで生きる子どもたちを教育する現場で、それらに対応する教育が行われていないとなると、これは大きな問題である。

社会に適応する力は、確かに子どもたちは持っているが、社会を構成する人間に必要な「社会力」とはなっていない。情報化によって何が得られて、何が必要で、どのように振る舞うべきかという訓練や思考体験を行わずして、教育の責任は果たせない。

未だに、たくさん並んだ立派なコンピュータ室を自慢する教育委員会があるようでは困る。本当の意味での情報化を進めるためには、関係者すべてが単なる方法論で話を進めるのではなく、「なぜ情報化が必要なのか」という概念論を理解することから始めなければならない。

このあたりの意思統一を図るのは、大変な努力がいる。しかし、今回取り上げたようなITCEが実はその多くの仕事を担っているのである。

(2004年3月掲載)

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