ICT活用教育のヒント

堀田龍也

教員1人1台PC導入による学校へのインパクト

「教員1人1台PC」は教育の情報化政策の大きな転換

平成18年7月26日、政府「IT戦略本部」は、2006年度のIT行政の重点を示す「重点計画2006」を発出した。

そこには、教育の情報化に関してもいくつかの重要な施策が盛り込まれている。たとえば、教員のIT活用指導力の評価基準を2006年度中に作成することになっている。情報システム担当外部専門家(学校CIO)等のサポート体制の在り方についても2006年度中に検討し、今後、実施に移していくことになる。

教員1人1台PCについては、以下のような記述がある。

【教員のIT活用環境の整備(文部科学省)】
2010年度までに、公立小中高等学校等の全ての教員に対しコンピュータを配備し、校務の情報化を促進するため、2006年度中に校務処理における効果的なITの活用方策等、校務の情報化の在り方等について調査研究を実施し、その推進方策を検討する。

つまり、教員1人1台のPC配布は、これから5年かけて行われることであり、それは公立小中高等学校等の「全ての教員」を対象としたものであること、2006年度中には教員1人1台PCを活かすための校務処理における効果的なITの活用方策等について検討を進めることとなっている。

現に文部科学省では、校務情報化に関する調査研究会を発足させ、学校現場等の先進的な事例を収集し始めている。

これまで、教育の情報化に関する政策は、すべて子どもたちの学習のための整備を中心に行われてきた。教員1人1台のPCは、その意味で初めて教員の、あるいは学校の業務の効率化に注目したものである。

教員が仕事を整理するチャンスが到来しているのである。

教員1人1台PC整備の「目的」を見失わない

当然のことながら、教員1人1台を導入すること自体が目的なのではない。校務を情報化し、効率化することが目的である。

今や、どこの行政体でも、企業でも、1人1台PCは常識である。公的な費用で工面されたPCを用いて業務をこなすことを前提に、業務改善を行っている。導入期だけ見ると、覚えなければならない仕事は増えるように見えるが、その後、業務が効率化し、時間や手間の削減、データの再利用が促進され、最終的にはサービスの高度化に結びつくことになる。

この考え方の学校版が校務の情報化である。

当然ながら、学校は組織であり、学校長によって経営されている。数多くの経営業務を、教頭(副校長)・教務主任を始めとする役割を持った役職や、さまざまな校務分掌を持った教職員に振り分け、円滑かつ合理的に学校長の意思決定が行われるようにしているはずである。

ならば学校のIT化は、これらの経営業務の効率化をさらに促進し、受益者(=児童生徒や保護者等)に対する教育サービスの高度化という観点でアウトプットされるべきであるという発想が必要となる。

校務の情報化を積極的に進めている学校では、すべての教員がPCを校務で活用し、学校グループウェアによって校務を効率化している。たとえば日々の児童生徒の出欠状況は、即時に保健室や給食室から参照できたり、長期欠席の傾向のある児童生徒への働きかけにも活用される。これらのデータは月末に自動的に出席簿として印字され、教師の手間を軽減している。さらには、学期末には通知票のフォームに自動的にデータが挿入される。

このようなIT化によって生まれた時間は、教材研究や教員研修など、教師自身の力量向上に振り向けられ、最終的には児童生徒の学力向上に向けて発揮されることになる。

学校ホームページは、学校経営の課題

学校ホームページの充実も学校経営の大きな課題である。学校に対する信頼は、派手なイベントではなく、日々の粛々とした学習活動のていねいさのアピールから得られるものだ。

児童生徒が毎日学校が楽しいといい、力がついている様子が保護者や地域の方々に伝わるような情報発信のためにITを活用する。経営的才覚を持っていれば、学校長の経営方針を具体的な教育活動として展開していることを学校ホームページで日々アピールできるはずだ。

学校に対する保護者やマスコミ等のバッシングは、そもそも学校の情報が外部に伝わっていないことに起因した誤解が原点にあることを理解しなければならない。現在の大人が通っていた頃の学校と何が同じで何が違っているのかを、学校自身が積極的にアピールしないまま協力を要請したところで、行き違いが生じることは当然である。

マスコミは特異なことを報道するものであるが、学校ホームページはむしろ普段のことを発信すべきであり、それらの発信の積み重ねが保護者や地域の信頼となって学校に跳ね返ってくることを経営陣は把握していく必要がある。

現実にするかどうかは、各自治体のビジョン次第

学校現場から見れば、全員にPC配布など、まだ先のことのように思えるかも知れない。しかし、「重点計画2006」は政府が発出した政策文書であるから、ここに記されることが決定した段階で、すでに予算等の措置についての見通しはほぼ立っていると考えてよい。

日本の行政は、すでに地方分権が進んでいるから、教育の情報化への整備等の意思決定も、それは都道府県や市町村の判断に委ねられる。もちろん、国からは各地方自治体に、総計で約1,500億円の地方交付税として配布されている。現在の日本の行政の仕組みでは、国ができることはここまでであり、あとはこれまで同様、モデルを示したり、先進的な地区や団体により厚く条件配備をすることが国の役割となる。

つまり、今後、1人1台PCを積極的に導入していくかどうか、それによって校務の形をどのように変えていくのかは、各地方公共団体がしっかりと進めていくべきことである。

(2007年4月掲載)

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