ICT活用教育のヒント

堀田龍也

IT活用はここから始めよう(1)

IT活用の主役は誰か

2005年度中を目処として、全ての普通教室にコンピュータを導入するための整備が進められてきた。これまでのように、特別にパソコンの得意な先生が、特別な時間に子どもたちをパソコン室に連れて行って使わせるだけという時代はまもなく終わる。普通の先生が教室で、普通の授業でITを使い、子どもたちにわかる授業をする時代になる。これを全国的に実現するのが、教育の情報化の目標である。

圧倒的多数の「ITに詳しくない教員」が、教室で授業の導入の5分間やまとめの3分間等、必要と思われる場面にだけITを活用し、あとは従来通り黒板で授業を展開する。その結果、子どもたちは、黒板だけの授業よりも勉強がわかるようになる。こういう姿こそが現実的であり、理想的だと筆者は考えている。

本当に必要な機器とは

ところがこれまでのIT整備では、新しい機器や高性能な機器ばかりが注目される傾向があった。本当に整備すべきなのは、スイッチを入れればすぐに映るプロジェクタや、ボタン1つで教科書を映し出せる実物投影機である。教室で、普通の教員がITを簡単に使って、これまでの教え方がさらに引き立つような授業環境。それが「めざす2005年の教室」の姿だったはずである。しかし、整備されたものは、使い勝手が悪いぐらいセキュリティでガチガチにされ、ろくに検索結果も見ることすらできないようなパソコンとネットワークが中心で、ほんとうに必要な部分に十分に予算が割り当てられているとは言い難い状況だった。

経験が教える本当のIT活用

世間では、教育の情報化が遅れている理由に、教員のITスキルが足りないことを指摘することが多い。しかし、ほんとうにそうだろうか?

プロジェクタのスイッチを入れて、パソコンの画面を映し出す程度のスキルは、すでに多くの教員にあるはずだ。もしもまだないとしたら、それは能力がないのではなく、まだ経験していないだけのことだ。一度経験すれば、すぐにできるようになる。

それができれば、例えばノートの書き方が上手な子どもからちょっと借りて実物投影機で映すくらいのことは簡単にできる。「ここがいいね」と言いながら、みんなの前で花丸をつけてあげればいい。そのうち、実物を映すだけでなく、たまには動く映像があったらいいなという段階になる。そう思ったら、ディジタルコンテンツを使えばいい。はじめからすごいディジタルコンテンツを使おうとしたり、はじめからすごく効果のあるIT活用をしようとするから、実践に活かせないのだ。最初は誰でも素人。割り切って使い始めれば、そのうちIT活用も上手になっていくはずだ。

コンテンツを上手に抱き込み豊かな授業を

これまでは、ITを使ったすばらしい実践ばかりが発信され共有されてきた。これらはいわば創作料理やフルコースのようなものだ。そんなものを見せられても、普通の教員は「すごいけど、私にはできない」と思ってしまう。準備にも特別な時間がかかり現実的ではない。

日常的に必要なのは、こういう料理ではなく、むしろスーパーに売っているお惣菜のようなものである。「肉じゃが」は自分で作るけど、時間がないから「ほうれん草のおひたし」は惣菜屋で買ってくる。「肉じゃが」は自分で作った教材や授業、「おひたし」はディジタルコンテンツにあたる。そういった「おひたし」みたいなものを、上手に活用して、トータルとして食事が豊かになればいい。すべてを自前で考える必要はない。

小・中学校は極めて多忙である。教員の年齢構成の中心を占めている40代の女性教員は、ベテランとはいえ家庭との両立で大変だ。だからこそ、明日の授業に役立つワンポイントIT活用、すなわち「ITお惣菜」に目を向けやすい。短い時間でサッと食事の用意をするように、コンテンツを上手に抱き込んだ自前の豊かな授業を作ることができるのだ。

教育の情報化のニーズはどこにあるか。本当のユーザーは誰か。今一度、この点を見直したい。

(2006年11月掲載)

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