ICT活用教育のヒント

堀田龍也

校内ネットワークが学習や校務の安全で安心なインフラになるために

教育の情報化のイメージを鮮やかに持ちたい

文部科学省は、2005年度を目標年度として、「教育の情報化」を推進してきました。毎年2,000億円以上の地方交付税が投入され、その推進が図られてきましたが、自治体によっては十分に整備が整いきれなかった例があります。

2005年の学校のイメージは、全ての教室にコンピュータが入り、高速インターネットがつながり、プロジェクタなど大画面で表示する機器が整備されるというものです。普段の授業が、ITによって「わかる授業」になります。授業中に提示されるさまざまな学習情報は、インターネット上から校内ネットワークを経由して、教室で子どもたちの眼前に示されます。子どもたちは、普段からがんばって教えてくれる教員が、さらに写真や動画を提示して教えてくれることに喜び、学習への理解を深めていきます。また、教員の校務は校内ネットワーク上で情報が共有され、お互いの仕事が可視化され、スムーズに進行していきます。校内での情報流通速度が速くなるだけでなく、安全情報のような子どもたちへの大切な連絡事項の漏れが無くなります。各教員は、校内のあらゆるところで仕事をしていますが、それらの作業経過が常に最新のものに更新され、学校Webサイトを通じて、保護者に向けて発信されていきます。

冒頭に「自治体によっては十分に整備が整いきれなかった例があります」と書きました。その理由に「予算がない」ということが多く挙げられます。 しかし、考えてみてください。今どき、予算に余裕があるという自治体など、あるはずはないのです。IT化が進んでいる企業だって、予算が余っているからIT化を促進したわけではないのです。むしろ、IT化への投資が、職務の効率化・高度化につながり、コスト削減につながっていくことがわかっているのです。

2005年度までに十分に情報化の整備が完了しなかった自治体では、このような学習環境・校務環境がイメージできていないのです。そのため、従来の業務に対してさらに新規業務が発生するように見えています。個人情報の保護やセキュリティ面の不安、児童生徒への情報モラル教育などの課題がすべてバラバラに見えるため、対処療法的に対応されています。

校内ネットワークが整備された学校での、わかる授業の実現、校務の効率化・高度化、さらには安全な学習環境の整備、その上での安心できる学習指導。これらは、情報化によって学習指導や校務がリッチになることを意味します。

「校内ネットワーク活用プロジェクト」とは

学校に校内ネットワークが整備されることによって、校内のどこからでもインターネットでの調べ学習などができるようになったり、校内のどこからでも同じ教材やデータが活用できるようになります。子どもたちが作成した学習成果を校内サーバーに保存しておき、教室やオープンスペースなどからそれを呼び出して使うこともできます。教員は職員室よりも教室にいる時間の方が長いため、教員用の電子掲示板を使えば、分散して働く教員間の情報の漏れがなくなります。児童生徒の欠席の電話連絡や、保健室からの早退などの情報を共有することによって、その日の出欠状況が、 職員室、教室、保健室などすべての場所でリアルタイムで正確に把握できるようになります。

一方、校内ネットワークをこのように有効に活用するためには、共有フォルダの設計や、ファイル管理の運用ルールを決めたり、十分なセキュリティを確保する必要があります。

このように、校内ネットワークを活用した学習指導や校務の効率化には、どのような利点や課題があり、また、どのような工夫が必要かについて実践を分類し研究を進めてきたのが「校内ネットワーク活用プロジェクト」です。

「校内ネットワーク活用プロジェクト」は、すでに開始から3年が経過しています。毎年、プロジェクトメンバーによる実践をセミナーを通じて公開してきました。また、報告集にして全国の学校等に配布してきました。

1年目は主に校内ネットワークの有効な活用事例を広く集め、紹介してきました。2年目は校内ネットワークを有効に活用するために必要な教員側の工夫、学校体制、システムなどについて議論してきました。

そして今年度が3年目。校内ネットワークが学習や校務の安全で安心なインフラと考え、セキュリティを確保しながら、いかに日常の中での気軽な活用ができるかについて検討してきました。特に、各地での現実的な実践、先進的な実践を報告しながら、校内ネットワークを有効に活用する方策について議論を進めています。セミナーでは、学習指導が充実し、教員の校務が効率化・高度化するために必要となるソフトウェア----私たちはこれを「ベースウェア」という用語で語っています----について、実例をもとに紹介しています。

「教育は人が行う」ということを大切にしたい

今さらですが、教育は人が行うものです。人と人のふれあいの中から子どもの成長が生まれます。教員の仕事は、子どもたちを育て上げることです。それが本務です。

校内ネットワークは、人が行う教育のためのリッチなインフラです。校内ネットワークがあることで、いつでも楽しくわかる学習が展開されます。子どもたちのための体制や準備が教員組織の中で効率的に創られます。電源管理やセキュリティ管理などはシステムが自動的に支援します。そして、人が、人にしかできないことを進めていくことを、システムが支えていきます。

新しい時代を支える子どもたちの教育環境を、縁の下で支えるのが校内ネットワーク。校内ネットワークは目立つべきものではありません。だからこそ、みんなの知恵を集め、きちんと設計し、環境に埋め込みたい。それが私たちのポリシーです。

(2005年11月掲載)

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