ICT活用教育のヒント

「教育の情報化とIT活用教育」コラム 原克彦

心の情報を伝えるメディア

私たちが利用しているメディアの多くが利用しているデジタル技術。この技術は、情報を遠くへ速く正確にそして大量に伝えることで支えられ、現在もこの技術は日々進歩しています。例えば、携帯電話では、音声だけでなく写真の画像を送るようになり、情報量が増えました。さらに最近では、携帯電話でビデオ動画などを送るようになり、飛躍的に情報量が増大し、大量の情報を速く正確に通信するデジタル化の技術が必要になってきています。

一昔前、コンピュータ間で扱われる情報の多くは、数値や文字情報であり、これらの情報を早く正確に伝えることがデジタル技術の目標でした。例えば、銀行のオンラインシステムでは、通信で扱われる情報の多くは金銭に関するもので、途中でデータが変化することや脱落することは許されません。送り手と受けての間で、その情報が異なってはいけないのです。1万円という情報は、正しく1万円として相手の機器に送られ、キャッシュコーナーから現金が引き出されなくてはならないのです。また、軍事目的で利用されているコンピュータネットワークでも、速く正確に情報を伝える必要があります。

このように、コンピュータを中心としたデジタル技術、特に通信技術は、情報を不変のものとして扱い、速く正確に大量に相手に送ることが必要だったのです。もちろん、今も同じことが言えます。

この、デジタル技術の上で、私たちは本来の利用とは異なった種類の情報をやり取りし始めるようになりました。それは、自分の気持ちや考えを文字などで表現し、相手に伝えるということです。音声や映像であれば、音声の強弱や声色、映像に映し出される顔の表情などでその雰囲気や感情を察知できます。

しかし、文字を利用したメールや掲示板では、その文章表現が貧弱な場合や互いの理解が異なっていると、心の情報は正しく相手に伝わりません。手紙やはがきを使う場合は、文章を推敲して書くことや、送られてきた相手の文章を丁寧に読み、行間を読み取るなどの時間的な余裕がありました。ところが、メールやチャット、掲示板では、多くの場合それほど時間をかけて文章を読み書きすることは少なく、時にはリアルタイムで文章だけで情報のやり取りをすることになります。

考えていることを文字だけで正しく表現するには、十分な訓練が必要です。速く正確に相手に情報が届いてしまう技術の上で、心の情報のやり取りを始めている人(特に子ども)たちは、文字だけで心の情報をうまく伝える手段が分かっていないかもしれません。相互に文字表現の共通理解がなければ、書いた内容が誤って相手に伝わる可能性もあります。

今一度、正しい文章表現を身につけることや、デジタル技術を利用したメディアによるコミュニケーションの方法について、十分に時間をかけた教育が必要だと考えています。

(2005年6月掲載)

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