授業でのICT活用

教材活用実態レポート

今、学校ではどのような教材が利用されているのか?デジタル化された教材はどのくらいあるのか?

はじめに

電子書籍や新聞の電子化など、これまで印刷物で収集していた情報の電子化が急速に進んでいます。同時に、仕事や生活で活用してきたさまざまな情報も携帯情報端末やネットワークを利用して活用する機会が増えてきています。この流れは、教科書のデジタル化という形で教育の現場にも徐々に押し寄せ始めています。

このような社会の変化に対応して、学校では「教育の情報化」をスローガンに、数年前からさまざまな取り組みが進められてきました。教科指導におけるICT活用をはじめ、校務の情報化、児童生徒の情報活用能力の育成、情報モラル教育などがその主な内容です。先進的な学校では、さまざまな教材をコンピュータなどに蓄積し、他の先生方と共有して教科指導に活用することで、効果的、効率的な教材活用に取り組み始めています。

その一方で、教員のICT活用指導力が問題となり、校内研修をはじめ多くの教育委員会でICT活用指導力向上の研修が行われています。また、教室への大型テレビやコンピュータの配置、ネットワークの敷設、各教員1人に1台のコンピュータの配置など、学校におけるICT環境の整備も着実に進められています。数年後には、教室でデジタル教科書が日常的に使われ、校内に蓄積された電子的な教材を児童生徒の学習の実態に応じて臨機応変に使い、分かりやすい授業の実現にさらに近づくことが期待されています。

教材活用実態調査の実施

このように、さまざまな授業場面でデジタル教科書や電子化された教材を有効に活用するためには、コンピュータを活用した教材の活用状況や教材作成の現状を把握し、将来のICT環境をどのように整備していくことが有効活用につながるか、今一度考えておくことが必要です。そこで、一般的な学校におけるコンピュータを使った教材作成と利用状況の把握のためのアンケート調査、ならびに教材活用と共有に関する学校ヒアリング調査を実施しました。その概要は次のとおりです。

(1)コンピュータを使った教材作成と利用状況調査

  • 実施期間:2010年10月
  • アンケート回答者数:216名
  • アンケートの主な内容
     ・自作教材と市販教材の利用状況
     ・自作教材の種類や利用ツール

「コンピュータを使った教材作成と利用状況調査」は、各学校の情報教育担当者や教育でのICT活用に興味・関心のある教員などが任意にアンケートに答える形式で実施しました。アンケートの目的は、コンピュータを利用した教材では、自作教材と市販教材のどちらが多いのか、自作教材の場合はどのようなツールを用いているのか、また、他者の作成した教材をどの程度利用しているのかを把握するためのものです。

先の調査は一般的な傾向をつかむものでしたが、「教材活用と共有に関する学校ヒアリング調査」では、先進校2校を含む7校でのコンピュータやネットワークなどのICT環境の整備状況とそれらの活用度や共有などの把握を目的としています。また、数年先のデジタル教科書や電子化された教材を活用する場面での課題とそれを解決するためのヒントなどの聞き取り調査も合わせて行いました。

この2つの調査によって、学校での有効かつ効果的な教材活用に向け、教員がどのような教材の活用を望み、今後どのようなICT環境を整備すべきかについてその傾向を整理してみることにします。

(2)教材活用と共有に関する学校ヒアリング調査

  • ヒアリング実施時期:2010年8月~12月
  • ヒアリング実施校:小学校5校、中学校2校(計7校)
  • ヒアリングの内容
    ICT機器の整備状況:教育用PC、校務用PC、サーバ、大型テレビ、プロジェクタなど
    教材活用について:自作教材、市販教材の有無、利用頻度など
    教材の共有について:教材の共有状況、共有の仕組みなど

コンピュータを使った教材作成と利用状況調査の結果

【Q1】自作教材と市販教材の利用状況についてお聞かせください。

自作教材利用派が86%

自作教材と市販教材の利用状況自作教材では、「よく利用する」「時々利用する」を合わせると、86%になります。

一方、市販教材では37%程度で、教員の多くが自作教材を利用していることが分かります。コンピュータを使わない授業でも、クラスの児童生徒の実態に合わせたプリントやワークシートなどの自作教材を用いることが多く、コンピュータを利用した教材でも同じことが考えられます。市販教材を用いる場合でも、授業内容に合わせて、必要な部分を教員が選択して利用していると考えられます。

眠っている市販教材の把握と活用

多くの学校では、コンピュータが導入されると同時に数種類のソフトウェアが揃えられています。その中には、学習用としてドリル型教材や資料、データ集、解説指導型教材、授業(学習)支援用のソフトウェアなどがあります。しかし、アンケートでは、それらの市販教材ソフトウェアを「利用しない」と回答している方が27%、「たまに利用」を含めると半数以上の教員が消極的な回答をされています。今後のデジタル教科書の普及を考えると、教科書に準拠したデジタルコンテンツの普及が増えてくると考えられます。学校にどのような市販の教材ソフトウェアがあるかを把握し、教員がいつでも使えるように工夫し、授業のさまざまな場面で有効に活用することが必要となってきます。

学校に導入されている学習用市販ソフトウェアの例

  • ドリル型教材
  • 資料・データ集
  • 解説指導型教材
  • 問題解決型教材
  • シミュレーション型教材
  • 教材作成用
  • 教科書準拠デジタルコンテンツ
  • プログラミング言語
  • 授業支援システム

【Q2】自作教材の作成状況についてお聞かせください。

多数の教員が三種のツールで教材作成

自作教材の利用ツール次に、自作教材をどのようなツールで作成しているのか、他者の作成した教材をどの程度利用しているか調査しました。

「よく利用する」「時々利用する」と回答したツールで最も多いのがワープロソフトで87%、ついで表計算ソフトが70%、プレゼンテーション用ソフトが65%という結果になりました。学校への導入が少ないFlashで作成した教材を日常的に利用している例は非常に少ないということも判明しました。

平成21年度の文部科学省の「教員のICT活用指導力のチェックリスト」の調査では、「教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力」の4つのチェック項目の平均が72.6%ですが、本調査は、ICT活用にある程度理解のある教員が回答されていると考えられますので、少し高い数値になっています。

いずれにしても、学校には前にあげたような基本的なソフトウェアが導入されていると考えられますので、これらを有効に活用して教材などを作成する力を身につけ、校内で相互に活用することが望まれます。

学校に導入されている基本的なアプリケーションソフトウェアの例

  • 日本語ワードプロセッサ
  • 表計算
  • データベース
  • 図形作成
  • プレゼンテーション
  • インターネット閲覧
  • 電子メール
  • ウェブサイト作成
  • 情報セキュリティ

手軽に活用できる写真やビデオ教材

資料やデータ的な自作教材では、「よく利用する」「時々利用する」と肯定的に回答した方が写真教材で66%と最も多く、デジタルカメラや携帯電話で手軽に撮影できることに起因しているようです。

また、自分で撮影したビデオ教材も31%あり、今後増加することが考えられます。英語の発音や古典や漢文の朗読、音楽鑑賞などの音声教材については19%程度ですが、デジタル教科書等の普及に伴って、英語や国語の教科書の朗読や聞き取り教材などが充実するので、今後、利用が増加すると考えられます。

これらの資料やデータ的な教材は、地域の素材なども多く含まれていることが考えられ、同じ学年に引き継いで活用したり、児童生徒が検索して活用するなどの使い方も必要になってきます。

写真やビデオ教材の利用状況

校内での教材の共有がカギ

一方、Web 上などにあるフリー教材を加工して作成した自作教材の肯定的な活用が30%、校内の他の教員が作成した教材では、43%が「よく利用する」「時々利用する」と回答しています。さらに他校の先生が作成した教材の利用率については、23%の教員が「よく利用する」「時々利用する」としています。逆に、「利用しない」と回答している教員がそれぞれ42%、29%、54%となっており、教材が共有されていない実態も明白になっています。このことは、後述する先進校のようなICT環境が整い、相互利用が話し合われている学校とは対照的であり、ネットワークや教材の共有環境の整備と、校内での相互理解が課題となっていると言えそうです。

フリー教材やその他の先生が作成した教材の利用状況

教材活用と共有に関する学校ヒアリング調査の結果

先進的な学校2校を含む7校でのコンピュータやネットワークなどのICT環境の整備状況とそれらの活用度、教材の共有等に関する調査結果です。こちらは、それぞれの学校を訪問し、担当の教員や教頭に聞き取り調査を実施することで、数年先のデジタル教科書や電子化された教材を活用する場面での課題とそれを解決するためのヒントなどをお聞きしました。詳細については、後述の各校のデータと聞き取り内容を参照していただくことにし、ここでは調査全体を概観します。

教材の共有が必要不可欠

各校ともICT機器の整備は充実しています。中には、大型テレビだけでなくほとんどの教室にプロジェクタが揃っている状況もあります。そこで利用されている教材の多くは、先のアンケート調査でも明らかになったようにワープロで作成したワークシートやプリントなどの自作教材が多く、児童生徒の実態に応じた教材が活用されています。その一方で、各教員が作成した教材が共有できていないために、他の先生が作成した有用な教材がうまく利用できていないという問題点が指摘されています。また、他の教員が作成した教材の存在を知らないために、同じ教材を作成しているというロスも発生しています。最近では、若い教員の増加とともに、ベテランの教員の教材を参考にしたいというニーズも増えてきているようです。

教員の個性に応じた使いやすい共有環境

教員1人に1台のコンピュータが渡されている学校では、それぞれの教員が使いやすい環境をコンピュータに設定することも可能になっているようです。また、コンピュータによる教員同士の簡単な連絡やコミュニケーションなども行われています。これまで、印刷物で受け渡ししていた教材をコンピュータで受け渡しする機会も多くなっていると聞きました。

ところが、教材を共有する仕組みが確立されておらず、個人所有のUSBメモリを利用して教材を共有している学校もありました。また、ファイルサーバが設置されていても、管理やメンテナンスに手間がかかり、結局、共有環境が構築できないという場合も少なくないようです。そこで、使いやすい教材の共有環境の実現が必要だとお聞きしました。

教科や単元に沿った教材の整理

このような問題を解決する方法の1つとして、学年と教科、単元に応じた教材の整理が必要だという声が多くありました。特に小学校では、担当する学年が毎年変わることや、1人の教員で多くの教科を担当することなどから、学校全体で共通理解でき、分かりやすく整理した教材の共有が必要になってきます。整理された教材の有効性などについては、多くの人が利用することで検証し、その結果をフィードバックすることで改善につながるという声もありました。また、教材の中には、実験や観察、フィールド調査、グループ学習、発表の練習などの授業の形態を共有できる簡単なコメントなどが添えられ、検索しやすいような工夫も必要になってきます。

校務文書の共有化

ヒアリングでは、教材だけでなく校務に関する文書の共有の必要性について意見が出ていました。校務の情報化については、教育の情報化の柱の一つにもなっており、その必要性は言うまでもありません。

しかし、便利なツールが存在しても、校務文書をどのように整理して共有するか、またセキュリティに関するルールをどうするかなど、事前に話し合いで共通理解しておくことも必要です。

(2011年6月掲載)