学習指導要領/教育の情報化

次期学習指導要領を見据えて これからの情報活用能力

はじめに

未来がどうなるかは、実のところ誰にもわからない。しかし、目の前の子供たちが未来を創っていくということは間違いない。これからの子供たちに必要な力を1つだけあげるとすれば、「未来を創る力」ということになるのではないだろうか。こう考えると学習指導要領改訂に係る様々な議論をすっきり見渡すことができる。

平成28年8月26日にとりまとめられた「次期学習指導要領等に向けた審議のまとめ」(以下、「審議のまとめ」という)には、学習指導要領改訂の基本的方向性と各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性が述べられており、「未来を創る力」は「未来の創り手となるために必要な資質・能力」と表現されている。

「審議のまとめ」では、「教科等を越えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力」として、言語能力とともに情報活用能力があげられている。「未来を創る」ためには、現状を把握し、問題を見いだし、解決に向けて思考し、結果を振り返って改善することが必要である。これは情報活用能力そのものであり、その学習活動は言語によって行われる。

現状を把握するためには、「物事を多面的・多角的に吟味し見定めていく力」、「統計的な分析に基づき判断する力」が必要である。また、「問題を見いだし解決に向けて思考するための知識やスキル」も欠かせない。全体の「見通し」や「振り返り」も重要である。このサイクルを繰り返す過程が「学び方」として「未来を創る」ことにつながるのではないだろうか。

資質・能力の「三つの柱」と情報教育の目標の「3観点」

現行学習指導要領では、情報活用能力は「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3観点に整理されている。これは内容・学習活動からの整理である。

次期学習指導要領では、情報活用能力を「世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉えて把握し、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり、自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力」と定義し、「プログラミング的思考や、情報モラル、情報セキュリティ、統計等に関する資質・能力も含まれる」としている。これらは互いに矛盾するものではなく、相補うものである。

情報の科学的な理解

「審議のまとめ」では、「急速な情報化や技術革新は人間生活を質的にも変化させつつある」と述べている。また、我が国の子供たちが抱える課題として、「判断の根拠や理由を明確に示しながら自分の考えを述べる」、「実験結果を分析して解釈・考察し説明したりする」などを指摘している。さらに、「今後の高度情報社会を支えるIT人材の裾野を広げていくことの重要性が,各種政府方針等により指摘されている」と述べている。これらに対応するためには、プログラミング的思考の育成を含めた「情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善したりするための基礎的な理論や方法」である「情報の科学的な理解」の充実が必要になる。

小・中・高等学校の情報活用能力の方向性

小・中・高等学校ともに情報を活用して問題を発見・解決したり、自らの考えを形成したりする学習活動を行う。小学校では「情報や情報手段に良さや課題があることに気付く」、「情報手段の基本的な操作ができる」ことが重視されており、中学校では、「抽象的な分析も行えるようにする」など、小学校より高いレベルが求められる。高等学校では、「科学的な知として体系化していく」といった総合的なことが目標となろう。

プログラミングについては、小学校は「体験」、中学校は従来の「計測・制御に関するプログラミング」に加えて「コンテンツに関するプログラミング」が追加されることとなろう。高等学校は必履修科目の「情報I(仮称)」で実際の問題解決に即した形で全員が取り組むことになり、選択科目の「情報II(仮称)」ではより高度なものに取り組むといったことが検討されている。

小学校段階におけるプログラミング教育の在り方

小学校段階におけるプログラミング教育は、コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えさせることが目的ではなく、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するものである。

プログラミング的思考については、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した動きに近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と述べられている。

小学校段階におけるプログラミング教育については、下記のように背景・実施例・条件整備も含めて整理されている。

高等学校の情報科新科目

高等学校の情報科新科目のイメージを下記に示す。情報科については、情報の科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を育むとともに、情報と情報技術を問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方等を育むことが求められている。

小学校、中学校で身に付けた情報活用能力などを前提とすれば、高等学校の情報科の内容は一歩も二歩も進む必要がある。「情報I(仮称)」では情報の科学的な理解に関する内容を充実し、全員がプログラミングを行う。「情報II(仮称)」ではデータサイエンスなどの新しい内容も学習することが検討されている。

これらを生徒に学ばせるためには、現職教員の資質・向上を目指した研修、教員の計画的採用、教材の準備、ICT環境整備など取り組むべき課題は多い。大学側にも、高等学校までに身に付けるべき情報活用能力について改めて確認していただくとともに、大学入学者選抜等においてしっかりチェックしていただきたい。

次期学習指導要領の改訂及び実施にあたっては、小学校、中学校、高等学校がそれぞれに身に付けさせるべき資質・能力について責任を持ち、これを社会及び大学につなげていく必要がある。これからの情報活用能力については、各学校の適切なカリキュラム・マネジメントを通して、各教科等で体系的に育むとともに学校段階ごとの成果を積み上げていく必要がある。必要な部分については次期学習指導要領を見据えた授業の改善を行っていただきたい。

(2017年1月掲載)

トップページ戻る
ページの先頭へ