研究会・セミナー

セミナーレポート タブレット端末活用セミナー

授業を支えるICT環境・仕組みとは ~タブレット端末を整備する前に

電気容量の不足、火災の原因に

タブレット端末を学校に数台から数十台、さらに児童生徒1人1台の整備を検討されている自治体が増えてきました。タブレット端末の整備にあたり、事前に確認しておきたいことをご紹介します。

タブレット端末の台数に比例して、充電時の消費電力は大きくなります。今、多くの公立学校の教室にあるコンセントの電気容量は、それほど大きくありません。40台のタブレット端末を一斉に充電すると、ブレーカーが落ちる可能性があります。一般的に、電気は、外部から電気を受け入れている受電設備から配電盤、そして分電盤を経由して各教室のコンセントに供給されています。そのコンセントが繋がっている電線の太さ、分電盤のブレーカー、その先の電線の太さと分電盤の容量、そして受電設備の容量がすべて許容範囲内でなければなりません。この点を確認せずに電気を利用すると火災になる恐れがあります。

整備にあたっては、既設設備の系統図や電気配線の図面の確認と、電線の新設を行う場合に備えて、管路や接地端子の空きの確認などが必要です。これらに空きがない場合、新しく電線を引き込む経路確保の確認も必要です。

また、タブレット端末だけではなく、電子黒板やプロジェクタ、テレビ、照明などの消費電力の総合計の確認も必要です。さらに、大容量の電気が使えるようになると、基本電力量が見直されます。毎月の電気料金の支払いが増えることも考えておくとよいでしょう。

1校1校、丁寧な無線LAN環境構築を

繋がってるかな?学校は住宅地や商業施設に隣接していることが多いです。無線LANは、周辺の電波状況にも影響を受けるため、一旦接続トラブルが発生すると、有線LANに比べて原因と解決手段を見つけることが困難です。さらに、学校は建物の構造、配置が学校ごとに異なっており、1校1校、丁寧な無線LAN環境の構築が求められます。

アクセスポイントは、教室や廊下の天井に設置されるケースが多くありますが、学校によっては、教室や廊下の天井付近は、夏期や冬期に、機器の動作保証範囲外の気温や湿度になることがあります。気温や湿度によって機器が故障する恐れがあります。

さらに多数のタブレット端末が学校に整備されると、学校のインターネット回線が混み合います。既設のコンピュータ教室で授業をされていて、インターネット回線が遅いと感じる場合は、回線の増速も検討されるとよいでしょう。

端末の修理や再設定の作業費用も

タブレット端末のバッテリーは、経年劣化により、数年で導入当初の性能が発揮できなくなります。バッテリーだけを新品に交換できない場合は、本体ごと新品に交換される場合もあります。その場合、タブレット端末にインストールされていたソフトウェアやさまざまな設定を最初から設定し直す必要があります。また、落下や水濡れで故障する可能性も高いです。そのような場合の設定作業や修理の費用も考えておくとよいでしょう。

学校外に持ち出して写真を撮影する場合など、タブレット端末本体にデータを保存する場合があります。その場合、年度更新や端末を廃棄の際に、情報をどのように取り扱うのか。個人情報の取り扱いなどを定めたルールに沿った対応が必要です。

さらに、タブレット端末の中には、OSを自動的にバージョンアップするものがあります。その場合、利用していたソフトウェアが急に動作しなくなる可能性があります。OSの選定の際に考慮しておくとよいでしょう。

誰が、どの端末を、いつ使ったのか

複数の児童生徒が複数のタブレット端末を共用して利用する場合、「誰が」「どの端末を」「いつ」「どのように使ったのか」を把握しておくことが望まれます。

そのために、児童生徒1人ひとりのユーザ情報を登録し、その活用履歴を把握するといった、これまで学校になかった新たな仕事が先生方の負担になる可能性があります。児童生徒1人ひとりのユーザ情報の登録、管理を簡潔に行える仕組み、入学、進級、卒業などに伴う年度更新の作業を簡潔に行える仕組みがあると便利でしょう。

データを確実に保存し、素早く閲覧

児童生徒の1人ひとりがタブレット端末で作成したデータは確実に保存、蓄積していかなければなりません。それに伴い、教員は多くの児童生徒のデータを確認したり、評価したりする場面が多くなります。児童生徒1人ひとりのデータをサーバ上に手間なく蓄積でき、また教員が素早く確認、閲覧できる仕組みがあると効率的です。

クラウド技術を利用して児童生徒のデータを校外に保存する場合は、各地方自治体の個人情報保護条例や同条例の規則などの法規を予め確認しておく必要があると思います。

児童生徒1人ひとりのデータをサーバに蓄積

(Sky株式会社 ICTソリューション事業部 山本 和人)

一覧へ戻る

(2013年月8月掲載)