教育情報セキュリティ

保護者と取り組む情報セキュリティ対策

古いままの情報セキュリティ対策では、対応できない

学校を取り巻く環境が変化し続けています。外国籍の児童生徒の増加や、障がいをもつ児童生徒への対応に伴い、言語通訳や手話など、ボランティアの方々に協力をいただくことが増えてきました。また、部活動の指導や土曜日の学校開放など、今までの学校にはいなかった立場の人に協力していただくことが増加すると想定されます。そのとき、情報セキュリティ対策が古いままでは、対応できない場面が増えてしまいます。

学校が必要とする、こうした方々や新しい技術が、学校の情報セキュリティ対策の中で、どのように位置づけられているのが適切なのか、多くの方の知恵やアイデアをもって検討するからこそ、適切な運用が可能になります。

懇談会で学校のセキュリティ対策を説明し、協力を仰ぐ

保護者の協力を得ることも必要になります。例えば、学校ではWebサイトに児童生徒の学習活動の様子を記載することが増えましたが、保護者および児童生徒に対して同意文書を用意したり、児童生徒が個別に特定されないように、画像を工夫したりされていると思います。

しかし、保護者が参加する学校行事、例えば授業参観日に、保護者が授業中の様子をスマートフォンなどで撮影し、個人のブログなどに加工もなく画像を公開してしまう行為が見受けられます。

保護者に学校の方針を伝え、情報セキュリティ対策への協力を仰ぐ学校は保護者に対し、情報セキュリティ対策を遵守している旨を説明した上で、保護者自身が情報漏えいの元にならないよう、協力をお願いすることが必要です。教員の人事異動と同様、児童生徒も、毎年入学、転入出、卒業などによって入れ替わります。それは同時に、保護者が変わるということでもあります。新年度1回目の保護者懇談会やPTA総会などの機会に、各担任や管理職から学校の情報セキュリティ対策の方針や具体的な施策、保護者にご協力いただきたい内容について説明すると効果的です。

また、学校のWebサイトにどのような対策を行っているのかを記載し、保護者にそのWebサイトを案内するというだけでも良いと思います。

児童生徒に情報セキュリティ対策を身につけさせる

そして、情報モラル指導のなかで取り組まれることになるかもしれませんが、児童生徒にも、情報セキュリティ対策を身につけさせなければなりません。

すでに、インターネットに接続できるスマートフォンやポータブルゲーム機を所有し、日常的にそれらを利用している児童生徒が多数います。これらの機械には、保護者によるインターネットへの接続制限の機能がありますが、利用されていないことも多くあります(表1)。

情報化社会において、自分のユーザIDやパスワードの取り扱いはもちろんのこと、見ず知らずの人に自分のことや家族のこと、友だちのことを伝えてしまうことがないように指導しなければなりません。

これらは、児童生徒の成長に合わせて教えていくことになるかと思います。具体的には、文部科学省から「情報モラル指導モデルカリキュラム(2)」が公開されていますので、参考にしていただければと思います。

「情報セキュリティ」と「情報モラル」は切り離せない

この数年、スマートフォンの普及に伴い、学校や教育委員会では、児童生徒や教職員、保護者に対し、情報モラルやインターネットの危険性についての講習が増えているようです。

近年では、SNSによるメッセージのやりとりから児童生徒間のトラブルが目立つようになり、写真や動画をインターネットに投稿したことによって、投稿した本人だけでなく、投稿した児童生徒が所属する学校や学習塾までもが批判される事案も増えてきました。

学習活動のなかで、情報モラルに関する指導に取り組まれている学校も増えてきましたが、情報モラルと情報セキュリティを分けて考えておられる教職員もおられるようです。しかし、この2つは、切り離すことができないものです。情報セキュリティと情報モラルとは、一連のものとして考えていただきたいと思います。

参考資料

  1. (1)出展:「平成26年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」(内閣府)
    (http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/)
    (2015年2月27日に利用)
  2. (2)文部科学省『情報モラル指導モデルカリキュラム』
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1296900.htm

(山本 和人:Sky株式会社 ICTソリューション事業部)

(2015年5月掲載)