ICT活用教育のヒント

主体的・対話的で深い学びと学習活動ソフトウェアの可能性

新学習指導要領のめざす主体的・対話的で深い学びの実現や情報活用能力の育成に向けて、さまざまな学習活動でICTを有効に活用することが期待されています。児童生徒の学習活動の充実をサポートする機能をより一層強化した学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class 2017』について、研究開発協力者である中川 一史 放送大学教授にそのコンセプトをお伺いするとともに、授業で活用された岩ア 有朋 鳥取県岩美町立岩美中学校教諭に活用効果や活用のポイントを伺いました。(2017年3月取材)

児童生徒1人ひとりが学習活動で使うツールがより重要になる

学校には、電子黒板やプロジェクタなどの「主に教師が提示用に使う機器環境」とコンピュータ教室やタブレット端末などのように「主に児童生徒が学習活動で使う機器環境」の大きく2種類の機器環境があります。これからの「主体的・対話的で深い学びの実現」に向けては、主に後者のツールの活用が重要になります。

また、新しい小学校学習指導要領の総則では「各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする」と書かれています。情報活用能力や問題発見・解決能力等の資質・能力の育成のために、ICTをさまざまな学習活動でより一層活用することが期待されます。

学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』は、児童生徒の学習活動をサポートするツールとして、学校の先生方の意見を取り入れながらSky株式会社と協力して研究開発を行っています。最新のバージョンである『SKYMENU Class 2017』では、新たに[画像合成]機能、[マッピング・文章アシスト]機能を搭載しました。

複数の子どもの意見を一つに統合できる[画像合成]

[画像合成]機能は、タブレット端末上で、透明なシートを何枚も重ねるようにして学習者の画面を1枚の画像に合成できる機能です。かつてのOHP(オーバー・ヘッド・プロジェクタ)のような仕組みといえば、ベテランの先生方はイメージしやすいかもしれません。例えば、児童生徒1人ひとりにタブレット端末上で文章にマーキングさせ、それらを合成して比較してみたり、モデルとなる例と重ねて表示して比較したりできます。紙では実現しにくいことが簡単に実現できます。【図1】

これまでにも『SKYMENU Class』には、画面を並べて表示する[比較表示]機能や[画面一覧表示]機能がありましたが、重ねて表示できるようになったことで児童生徒1人ひとりの考えの微妙なズレに着目でき、より深く話し合ったりできると考えています。

図1

子どもたちがそれぞれに書き込んだ内容を合成して、1つのページに表示できます。個々の考えや結果を集約することで全体の考え方の傾向が見え、全員参加で解を導き出すことができます。

中学1年・理科「重さ・体積と物質の区別」の学習で[画像合成]機能を活用しました。物質名を伏せた複数のサンプルを用意し、生徒がペアで一つのサンプルの実験を行いました。密度の測定結果を[発表ノート]上のグラフにプロットさせ、それを[画像合成]機能で重ね合わせて集約し、全体の傾向や規則性を考えさせました【図2】。

全員の正しい測定値が集まることが学習のねらいである「規則性を見出し、物質を特定する」ことにつながるので、そのような状況に置かれた生徒たちは自分事として課題を捉えて、主体的に取り組むようになります。学級全体で協力することで、限られた授業時間ですべてのデータを揃え、規則性を見出すところまで辿り着けました。これはアナログでは実現できないことだと思います。

タブレット端末は、生徒同士で画面を見せながら話し合えるメリットがあるので、[画像合成]機能で合成した結果(全員のプロット)を全学習者機に[配付]し、生徒たちに規則性を考えさせました。教員が、合成した結果を電子黒板やプロジェクタに投影して一斉指導で授業を進めることもできるのですが、それでは発言力の強い子や、頭の回転が速い子が答えを言ってしまい、それで学習が終わりになってしまう場合があります。

[画像合成]機能は、「個→全体→個」という、今私たちが授業を考える上で理想としている流れを簡単に実現できるように作られているので、「自分たちで作ったデータから、自分たちで答えに辿り着く」という経験につなげることができました。このような授業を積み重ねることで「学び続ける人を作る」という次の学習指導要領のめざす姿に近づけると考えています。

図2

密度の測定結果を[発表ノート]上のグラフにプロットさせ、[画像合成]で集約(左図)
集約した結果(全員のプロット)を全学習者機に配布し、規則性を話し合った(右図)

思考を拡散・可視化に役立つ[マッピング]

国立教育政策研究所がまとめている2014年度の全国学力・学習状況調査の結果では、小学校では、算数・理科において全国的に根拠をもとに説明する力が不足している実態が明らかになっています。中学校でも同様の傾向があります。

そこで、児童生徒が自分の考えや思いを広げたり、根拠を持って考えたり伝えたりする力を育むツールとしてマッピングに着目し、昨年度[マッピング]機能を開発しました。マッピングとは「語句を線で結んで、蜘蛛の巣状に張りめぐらせていくことで、知識や考えを拡充したり整理したりする方法」(塚田.2005)で、教科書の表記としても見られるようになってきており、思考ツールの一つとして学習活動への活用も広まってきています。

昨年度から[マッピング]機能を使った実践を行っています。[マッピング]機能で作成したマップは、まさに「頭の中の地図」です。言葉と言葉がどのようにつながり、どのように自分が理解しているのかが可視化されます。自分自身を知るという意味で、非常に有効なツールだと思います。

一方で、マッピングをしただけでは思考が拡散したままになりますから、これを収束へと向かわせることに難しさがあります。

拡散した思考を収束へとサポートする[文章アシスト]

[文章アシスト]機能は、[マッピング]機能で拡散した思考を、整理して考えやすくし、文章などにまとめることをサポートするツールとして開発しました【図3】。放射状に並べられたカードを、ボタン一つでツリー状に並べ替えたり、カードの間に接続詞や助詞を追加したりできるので論理的に考えられます。自分のマップを俯瞰し、より深く考える機会にもなります。

マップから文章を考えることが苦手な子もいますから、[文章アシスト]は、まさに「自転車の補助輪」のようにマッピングの活用を支える機能だと考えています。

図3

[マッピング]機能で作成したカードを、ボタン一つで自動的にツリー状に並べ替えられる。
つなぎ言葉を付け加えられるので、思考を整理しながら考えをまとめられる。

中学3年理科「地球と宇宙」の単元で、[マッピング]機能と[文章アシスト]機能を活用しました。以前は[マッピング]機能で作成した自分のマップを使って、友だちと考えを伝え合わせていましたが、今回の実践では、「自分の考えを文章にまとめ、文章だけで相手を説得すること」を学習課題としました。図や身振りを使わず、文章だけで論理的に説明するということは、非常に難易度が高く、ここで [文章アシスト]機能の「ツリー表示」が役立ちました。言葉と言葉がツリー状に整理して表示されるので、つなぎ言葉で言葉をつないでいくだけである程度の文章になります。また、その中で自分のマップの中に言葉が不足していたり、上手く散りばめられていないことに気づき、修正を加えたりしていました【図4】。

図4

マップから文章を直接考えさせるのではなく、「ツリー表示」で考えるというステップを一つ挟んだことで、生徒たちは考えやすいと感じていたようです【図5】。課題に向かう姿勢がこれまでと異なっていました。生徒たちが書いた説明文を見ると、より多くの生徒が文脈を意識して書けていました。授業後のアンケートでは、「今までは文章を書くのをあきらめていたけれど、長い文章を書けるようになった」「筋道立てて文章を書くように意識できた」といった感想もあり、生徒たち自身も手ごたえを感じているようです。

[文章アシスト]は、論理的に考えやすくし、文章にまとめたりするアシストをする機能ですから、これまでマップから何かを見出すことが難しいと感じていた生徒たちに有効に働いたと思います。ただし、一度授業で使えば身に付くということではありません。例えば、小学校のころからさまざまな教科で活動し、積み重ねていくことで、論理的に考えて文章にしたりする力が鍛えられます。中学校なら3年間を通してポイントとなる単元で活用していくだけでも、文章を作る力が高まると考えられます。長期スパンで鍛えてほしいと思います。

図5

一度だけでなく、教科・単元を変えて何度も継続して取り組むことが大切です。そして、さまざまな学習活動で活用することで思考の方法として慣れていくので、やがては自分の手足、道具として使えるようになると思います。

一度だけでなく、教科・単元を変えて何度も継続して取り組むことが大切です。

学習活動をオールインワンでサポートする[発表ノート]

授業で利用するソフトウェアは、今回利用した『SKYMENU Class』の[発表ノート]のように、一つのツールにさまざまな機能がまとまっていると、データの互換性を気にすることなく活用できるので実践しやすくなります。

また、[マッピング]機能や[画像合成]機能などのさまざまな機能の画面において、[マーキング]や[カメラ]、[画面保存]などの利用頻度の高い機能のボタンや操作が共通していました。機能ごとに使い方を覚える必要がないため、教員も生徒も扱いやすくなります。特にICTについては、教員側が敷居の高さを感じやすいですから、このようなソフトウェアの作りは安心感があると思います。

これまで[発表ノート]は、【図6】のようなコンセプトを基に開発してきました。児童生徒の思考を支援するツールとして、思考をひろげる[マッピング]機能と、広がった思考をふかめる[文章アシスト]機能。そして、協働を支援するツールとして、児童生徒の思考をつなげることができる[画面合体]機能や思考をかさねて可視化できる[画像合成]機能を備えています。これらの4つの機能を[発表ノート]一つで行えますから、データの保存や互換性、操作性を気にすることなく学習活動に取り組めます。それぞれの機能を連動させながらさまざまな学習活動で活用してほしいと思います。

また、『SKYMENU Class』には児童生徒が作成した[発表ノート]をボタン一つで大型テレビやプロジェクタに投影したり、教材を配付したりするといった授業支援の仕組みも整っています。このようなオールインワンの学習活動ソフトウェアはほかにはないと思います。これから主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、積極的に活用していただきたいと思います。

図6

(2017年06月掲載)

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