ICT活用教育のヒント

知っておきたい!無線LANの基礎知識

【vol.9】家庭などでタブレットを使用させる際の注意点

学校のタブレット端末を児童生徒に持ち帰らせる場合にも、無線LANやデータの保護についての注意点があります。より幅広い場面でタブレット端末をご活用いただくために、安全に使用できる配慮をお願いします。

校外に持ち出し、家庭でネットワークに接続する

最近は、学校のタブレット端末を児童生徒に持ち帰らせているという話を耳にします。持ち帰らせて、各家庭の無線LAN環境からインターネットに接続させ、家庭学習として課題に取り組んでもらうという場合です。

各家庭に、タブレット端末を持ち帰らせる必要があると判断された上での取り組みですから、やってはいけないというわけではありません。ただし、情報セキュリティ対策の観点から考えると、相応の対策が必要になることを知っておいてください。

例えば、持ち帰ったタブレット端末を各家庭の無線アクセスポイント(以下、無線AP)に接続させると、タブレット端末内に、各家庭の無線APの情報が残る場合があります。こうした情報が残っているタブレット端末を使い回していると、各家庭の無線LANの暗号化キーが出回ってしまうリスクがあるため、各家庭の無線LANに関する情報を一括消去する仕組みが必要になります。

また、持ち帰ったタブレット端末を不用意にファストフード店などの公衆無線LANに接続してしまうことがないとは言い切れません。公衆無線LANは、十分な情報セキュリティ対策が施されているものばかりではありません。学校で利用しているタブレット端末には、カメラで撮影した写真など児童生徒の個人情報が記録されている可能性もあり、情報セキュリティ対策だけを考えるなら、校外のホテルや駅、コーヒーショップなどの公衆無線LANへの接続は避けてもらいたいところです。

タブレット端末を持ち出すだけなら大丈夫?

「インターネットを使わないので、校外の無線LANには接続させません」という場合にも考えておくべきことがあります。

一つは、校外の無線LANには接続できないように設定しておくことです。もう一つは、タブレット端末そのものの取り扱いに十分な注意が必要だということです。タブレット端末を校外に持ち出す機会が増えるということは、紛失や、盗難にあったりする可能性が高まることを意味します。

「タブレット端末内に、個人情報は保存していないから大丈夫」という声もよく耳にしますが、例えば、児童生徒がタブレット端末のカメラで友人を撮影した動画や写真はありませんか?校外に持ち出した後、先生方の目の届かない場所で、タブレット端末がどう使われるかはわかりません。児童生徒には悪気はなくても、想定していないデータが端末内に保存されてしまうこともあり得ます。

児童生徒はもちろん、保護者に対して「情報セキュリティ対策のお願い」を徹底しないまま、タブレット端末を持ち帰らせる運用を行わないような準備が大切です。

また、タブレット端末の運用管理が簡便に行えるシステムの導入を検討したり、それらが導入済みであれば現在のシステムの設定を変更することもお勧めします。

一般的に、こうした運用上のルールは当初はしっかり守れたとしても、時間の経過とともにおざなりになってしまう傾向があります。自宅へのタブレット端末の持ち帰りを行う場合は、児童生徒に対しても、保護者に対しても、年に一度は無線LANの情報セキュリティ対策の仕組みを理解いただく機会を設ける必要があるでしょう。

《最後に》利便性とセキュリティの関係

本連載の中で、「学校の敷地外まで無線LANの電波が届いてしまうと、第三者が簡単に校内のデータを閲覧・取得したり、悪用したりできるものでしょうか?その答えは、無線LANの設置時に、どれだけの対策を施したかによります」と書きました。無線LANのセキュリティ対策は、幾重にも行うことができます。しかし、無線LANに限らず「情報セキュリティ対策」というものは、対策を重ねるほど利便性が悪くなるのが一般的です。逆に、利便性や自由度を高めるほど、セキュリティレベルは下がってしまいます。

強固な情報セキュリティ対策を施しつつ、利便性も向上させようとすれば費用がかさみます。また、費用を掛けた分だけ利用者のストレスは減少しますが、システムは複雑になっていきます。

費用は用意できるという場合なら、利便性と情報セキュリティを両立させながら、適切な着地点を探すことができるでしょう。しかし、学校や自治体では、多額の費用を掛けることができない場合が多いのが実情だと思います。利用者が適切な知識を持ち、注意しながら利用することで費用を抑えることも可能です。

今よりもう少し、正しい知識を身につけていただいた上で運用を考えてくださっていれば、「こんな事態にはならなかった」という事例も見聞きします。無線LANやLTEなどの無線通信を用いて学習活動を行われる場合は、少しでもその特性をご理解の上で、便利に、そして有効に、ご活用いただければ幸いです。

無線LANやLTEなどの無線通信の特性をご理解いただき、学習活動に取り入れていただくことで、これからの学習活動が先生方と児童生徒にとってよりよいものになることを願います。

(山本 和人:Sky株式会社 ICTソリューション事業部)

(2017年9月掲載)